ペムブロリズマブはMSI-H胃食道がんで化学療法より有効

高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)の進行胃がんまたは胃食道接合部がんに対して、ペムブロリズマブは化学療法よりも有効である可能性があることが、企業が資金提供した臨床試験事後解析によって明らかになった。

「MSI-Hというバイオマーカーは、胃食道接合部がん患者のうちごく少数の割合でしかみられないが、免疫療法を行うことでステージ4でも予後が大幅に改善しているため、このバイオマーカーを調べることは重要である」と、シティー・オブ.ホープ総合がんセンター(カリフォルニア州ドゥアルテ)のJoseph Chao医師はロイター・ヘルスに電子メールで答えた。

先行研究では、治療歴のあるMSI-Hがん患者において、免疫療法が予後の改善につながるとされていた。Chao医師らは、免疫療法が実施された治療ラインに関わらず、ペムブロリズマム治療と化学療法の抗腫瘍活性を比較しようとした。

JAMA Oncology誌に掲載された本研究では、ペムブロリズマブ単剤療法を3次治療以降で評価したKEYNOTE-059第2相試験、ペムブロリズマブ単剤療法と化学療法を2次治療で比較したKEYNOTE-061第3相試験、そしてペムブロリズマブ単剤療法、ペムブロリズマブと化学療法の併用療法、化学療法単独を1次治療で比較したKEYNOTE-062第3相試験のデータを解析した。全対象試験の追跡期間中央値は、5.6カ月から11.3カ月であった。

1,614人の試験参加者のうち84人は高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)が確認された。MSI-H患者において、全生存期間中央値は、KEYNOTE-059試験およびKEYNOTE-061試験のペムブロリズマブ単剤療法群では未達であったが、KEYNOTE-061試験の化学療法単独群では8.1カ月であった。

KEYNOTE-062試験で、全生存期間中央値はペムブロリズマブ単剤療法群またはペムブロリズマブ+化学療法併用療法群では未達であったが、化学療法単独群では8.5カ月であった。

2種類以上の治療歴がある患者、1種類の治療歴がある患者、治療歴のない患者のいずれにおいても、ペムブロリズマブは化学療法単独と比較して、無増悪生存期間を延長し、持続的かつ有益な結果をもたらした。

「今回の解析結果は、進行胃がんまたは胃食道接合部がんの患者におけるペムブロリズマブ治療のバイオマーカーとしてMSI-Hを支持するものであり、現在進行中の1次治療の試験での前向き検証が当然必要となる」と研究者たちは述べている。

「ステージ4の胃食道がん患者の初回治療として免疫療法と化学療法の併用の増加が見込まれる中、本研究は、がんにMSI-Hというバイオマーカーがみられる場合、免疫療法の初回適用はこれらの患者の予後を大幅に改善するとして支持するものである」とChao医師は述べている。

「本研究は切除不能進行再発胃がんまたは胃食道接合部(G/GEJ)がんの患者におけるMSI検査の重要性を強調し、MSI-Hの胃がん/胃食道接合部がん患者の治療での免疫療法を支持する根拠を示している」と、付随論説の共著者であるEfrat Dotan医師はロイター・ヘルスに電子メールで答えた。

フィラデルフィア、フォックスチェイスがんセンターに所属するDotan医師は述べる。「3つの大規模な臨床試験の事後解析を通じて、著者らは、このまれな患者グループのすべての治療ラインにおいて、免疫療法がもたらす有意な利益を示すことができた」。さらに「このデータに基づき、また全米総合がんネットワークのガイドラインで推奨されているように、新たに切除不能進行再発胃がん/胃食道接合部がんと診断された患者にはMSI検査を必ず実施するべきである」とも言う。

ペムブロリズマブをキイトルーダの名称で販売しているMerck Sharp and Dohme社は、本研究に資金を提供し、メディカルライティング費用を支払った。Chao医師は同社と財務提携している。

JAMA Oncology誌2021年4月1日オンライン版: https://bit.ly/3wFMy9e   https://bit.ly/2RleLlt 

翻訳担当者 棗田麻衣子

監修 高濱隆幸(腫瘍内科/近畿大学奈良病院)

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