FDAが食道扁平上皮がんにニボルマブを承認

2020年6月10日、米国食品医薬品局(FDA)は、フルオロピリミジン系薬剤およびプラチナ系薬剤を含む化学療法による前治療を受けた切除不能な進行、再発または転移食道扁平上皮がん(ESCC)患者の治療薬として、ニボルマブ(販売名:オプジーボ、Bristol-Myers Squibb Co.社)を承認した。

多施設共同無作為化(1:1)、実薬対照比較、非盲検試験であるATTRACTION-3(NCT02569242)試験において、切除不能な進行、再発または転移食道扁平上皮がん患者419人を対象として有効性を検討した。フルオロピリミジン系薬剤およびプラチナ系薬剤を含む1回以上のレジメンに不応または不耐であった患者は、ニボルマブ240 mgの2週間ごと30分以上かけた静脈内投与(210人)、または治験責任医師の選択によりドセタキセル(75mg/m2を3週間ごとに静脈内投与)あるいはパクリタキセル(100mg/m2を週1回、6週間静脈内投与した後1週間休薬)のいずれかのタキサン系化学療法(209人)を受けた。

主要有効性評価項目は全生存期間(OS)であった。その他の有効性評価項目は、RECIST 1.1に基づき治験責任医師が評価した奏効率(ORR)、奏効期間、無増悪生存期間(PFS)であった。

本試験では、全生存期間が統計学的に有意に改善したことが示された。ニボルマブの投与を受けた患者の全生存期間(OS)中央値は10.9カ月(95%信頼区間[CI]:9.2~13.3)であったのに対し、治験責任医師が選択したタキサン系化学療法を受けた患者では8.4カ月(95%CI:7.2~9.9)であった(ハザード比[HR]:0.77、95% CI:0.62~0.96、p=0.0189)。腫瘍のPD-L1発現レベルにかかわらず、OSの有益性が認められた。奏効率(ORR)はニボルマブ群で19.3%(95%CI:13.7~26)、タキサン系化学療法群で21.5%(95%CI:15.4~28.8)で、奏効期間中央値はそれぞれ6.9カ月(95%CI:5.4~11.1)、3.9カ月(95%CI:2.8~4.2)であった。本試験では、無増悪生存期間(PFS)の改善は示されなかった(HR:1.1、95%CI:0.9~1.3)。

ニボルマブの治療を受けた患者の10%で最も多くみられた副作用 は、発疹、食欲減退、下痢、便秘、筋骨格痛、上気道感染症、咳、発熱、肺炎、貧血、疲労、そう痒症、悪心、甲状腺機能低下症であった。

食道扁平上皮がん(ESCC)に対するニボルマブの推奨用量は、2週間ごとの240 mgまたは4週間ごとの480 mgである。

オプジーボの全処方情報はこちらを参照。(*参考:日本語のオプジーボの添付文書はこちらを参照)

本審査には、FDAによる評価を円滑に進めるために、申請者が自発的に申請を行うAssessment Aidが用いられた。

ニボルマブは優先審査およびオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の指定を受けた。FDAの迅速承認プログラムに関する情報は、「企業向けガイダンス:重篤疾患のための迅速承認プログラム−医薬品およびバイオ医薬品(Guidance for Industry: Expedited Programs for Serious Conditions-Drugs and Biologics)」に記載されている。

翻訳担当者 星野恭子

監修 辻村信一(獣医学・農学博士、メディカルライター) 

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