ペムブロリズマブによる初回治療は、進行胃/胃食道接合部がんの標準化学療法の代替として有望

ASCOの見解
「化学療法は長年にわたりわれわれの唯一の選択肢でした。今回の結果から、より副作用の少ないペムブロリズマブが選択肢となる可能性が示され、また重要なことに、一部の患者ではこの薬剤により生存期間を大きく延ばすことが可能です。これにより患者がより長く、より良く生きるための扉が開いたのです」と、FACP(米国内科学会フェロー)、FSCT、FASCO(米国臨床腫瘍学会フェロー)でありASCO副会長および最高医学責任者のRichard L. Schilsky医師は述べた。

KEYNOTE-062第3相ランダム化比較試験において、主要評価項目を達成し、PD-L1陽性、HER2陰性の進行胃がんまたは胃食道接合部(G/GEJ)がん患者に対するペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)を用いた初回治療の結果、全生存期間は標準化学療法と同等(非劣性)であった。さらに、ペムブロリズマブは、高レベルでPD-L1発現のみられる胃がん患者の全生存期間において臨床的に意味のある改善を示した。2年の時点で、ペムブロリズマブ単独投与を受けた患者の39%(全員が高PD-L1レベル)は生存していたが、標準化学療法を受けた患者では22%であった。本試験では、ペムブロリズマブと標準化学療法の併用治療も評価したが、このレジメンは化学療法単独と比較して生存期間を延長しなかった。

「この試験により、ペムブロリズマブによる初回治療は有効であり、進行胃がんまたは胃食道接合部がんと新たに診断された人々に新しい機会を提供できる可能性があると示しています」と、スペイン、バルセロナのバルデブロン大学病院の腫瘍内科部長および腫瘍学研究所所長であり、試験の筆頭著者のJosep Tabernero医学博士は述べた。「これらのがんの治療法に対する大きな未解決のニーズは依然としてあり、そして今回の結果によりこの分野における継続的な研究の重要性が確固たるものとなりました」。

米国では2019年に新たな胃がんの発症が約27,510人および胃がんによる死亡が11,140人と予測されている。これは診断数世界第5位のがんである。胃食道接合部がんは食道と胃が接する場所に発生する。あまり一般的ではない胃食道接合部がんは、この10年間で特に西欧諸国で罹患率が増加しているが、この増加の理由は完全には明らかではない。

ペムブロリズマブは、combined positive score(CPS)1以上のPD-L1発現腫瘍を有する再発局所進行または転移性の胃がんまたは胃食道接合部がん患者に対して、2017年9月に米国食品医薬品局(FDA)により迅速承認を受けた。CPSは生検組織に由来するPD-L1陽性細胞数と生存腫瘍細胞数に基づいて算出される。

試験について

本試験には患者763人を登録し、年齢中央値は62歳であり、26%は以前に胃の腫瘍切除手術を受けていた。Tabernero博士によると、全体で69%が胃がん、30%が胃食道接合部がんであり、それらは隣接部位によらず通常は非常によく似た種類の腫瘍である。試験責任医師らは、治療後に再発する可能性が高いと試験で示されているHER2陰性がんにのみ焦点を当て、転帰に影響を及ぼしうる因子を限定した。

PD-L1発現はCPSにより評価した。胃がんまたは胃食道接合部がんに関するこれまでの研究では、PD-L1 CPSが1以上の患者はペムブロリズマブから利益を受ける可能性がある一方、PD-L1 CPSが10以上の患者では利益の可能性がさらに高いことを示している。今回の試験では、全患者のPD-L1 CPSは1以上であり、そのうち281人(登録者の37%)が10以上であった。

試験責任医師らは、患者を初回治療として3つの治療選択肢(ペムブロリズマブ静脈内投与、ペムブロリズマブ+化学療法、または化学療法+プラセボ)のうちの1つを受ける群に、同数になるように無作為に割り付けた。患者の追跡期間の中央値は11.3カ月であった。

主要な結果

ペムブロリズマブ単独による治療:この試験は主要評価項目を達成し、ペムブロリズマブ群の全生存期間は標準化学療法群に対して非劣性(同等)であることが示された。PD-L1 CPSが10以上の登録患者で良好な生存転帰がみられた。具体的な結果は次のとおり。

• PD-L1 CPS1以上の患者:生存期間は化学療法に対して非劣性(同等)であった(ハザード比=0.91)。全生存期間中央値はペムブロリズマブ群で10.6カ月であり化学療法群で11.1カ月であった。

• PD-L1 CPSが10以上の患者:生存期間はペムブロリズマブ群が化学療法群に対して優越性を示した(ハザード比=0.69)。全生存期間中央値はペムブロリズマブ群で17.4カ月であり化学療法群で10.8カ月だった。2年後の生存率は、ペムブロリズマブ群で39%であったが、化学療法群では22%であった。

ペムブロリズマブ+化学療法による治療:全生存期間および無増悪生存期間(疾患進行までの期間)は、CPSスコアにかかわらず、ペムブロリズマブ+化学療法群と化学療法単独群で同等であった。

安全性:重篤な副作用の発生率は、ペムブロリズマブ単独群で最も低かった。グレード3以上の有害な治療関連有害事象は、ペムブロリズマブ群の17%、ペムブロリズマブ+化学療法群の73%、および化学療法群の69%に認められた。最もよくみられた有害事象は悪心と倦怠感であった。ペムブロリズマブの安全性プロファイルは、過去にこの薬剤で治療を受けた患者のものと一致した。

次の段階

試験責任医師らは現在、最も利益を得た患者を特定するためにデータのサブセットを分析中である。Tabernero博士は、ペムブロリズマブ+化学療法と同様にペムブロリズマブ単独投与の最良のレスポンダーである可能性が高いのはどのような患者なのか正しく判断するために、PD-L1よりも優れたバイオマーカーが必要であると述べた。

本試験では、登録患者の58%は北米、ヨーロッパおよびオーストラリアからであり、25%はアジア、17%はその他の地域からであった。過去の集団ベースの研究から、アジアでは通常、胃がんや胃食道接合部がん患者は生存率が高く、腫瘍の量が少なく、疾患進行が遅いことが示されている。研究者らは現在、事前に指定した地理的地域に基づいて薬剤の有効性を分析している。

本試験はMerck & Co.,Inc.社から資金提供を受けた。

試験の概要

試験の焦点: 進行胃腺がんまたは胃食道接合部腺がん

試験デザイン: 第3相ランダム化比較試験

参加者数: 763人

検証した治療法: ペムブロリズマブ、ペムブロリズマブ+化学療法、化学療法単独

主要な結果: ペムブロリズマブは進行胃腺がんまたは胃食道接合部腺がんの選択患者において標準化学療法と同等

副次的な結果: 初回治療としてペムブロリズマブ投与を受けたPD-L1 combined positive scoreが10以上のHER2陰性、進行胃腺がんまたは胃食道接合部腺がん患者の2年後の生存率は39%だったのに対し、全身化学療法を受けた患者では22%であった

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翻訳担当者 坂下美保子

監修 東光久(総合診療、腫瘍内科、緩和ケア/福島県立医科大学 白河総合診療アカデミー)

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