イレッサは転移性食道癌の無増悪生存期間を延長する

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2012年にウィーンで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2012)で発表された第3相試験の結果によると、イレッサ(ゲフィチニブ)による治療は転移性食道癌患者の疾患進行を遅延し、生活の質を改善させた。

食道は、胃方向に、食物および液体を通過させる筋管である。米国では毎年、17,000人以上の人が、食道癌と診断され、15,000人以上が死亡している。現在では、一次もしくは二次化学療法後に進行する転移性食道癌に対する標準的な全身治療法はない。

人間の上皮増殖因子受容体(EGFR)は、細胞表面で認められ、細胞の成長、広がりおよび複製に関与しているタンパク質である。癌細胞はEGFRを過剰発現、またはEGFR内に突然変異を有することが多いため、癌細胞は抑制されず成長あるいは広がっていく。過剰なEGFR発現は、食道癌の予後不良をもたらす。

イレッサは、EGFRを特に標的とする経口薬剤である。イレッサはEGFRと結合することによって作用し、癌細胞に対する影響を制止、もしくは、減少させる。

COG(食道癌、ゲフィチニブ)試験は、英国51の施設で、一次治療後で、2種類までの化学療法メニューを受けた後、すでに疾患が進行した患者450人に行った。患者の疾患が進行するまで、患者をイレッサ群またはプラセボ群にランダム化し、投与し、治療した。

その結果、イレッサは中等度の改善を示した。無増悪生存期間の中央値は、プラセボ投与患者が35日であったのに対してイレッサ投与患者は49日であった。何よりも多くのイレッサ投与患者の生活の質が改善され、特に嚥下困難(呑み込みが難しい)および、嚥下痛(呑み込むときの痛み)が改善された。この疾患患者において、いずれも重要な生活の質を図る指標である。全生存期間の改善は認められなかった。

研究者らは、イレッサが転移性食道癌の二次治療または三次治療を提供している患者において進行のリスクが21%減少すると結論づけた。追跡試験であるTRANSCOG試験で、イレッサから効果予測バイオマーカーを模索し、同剤から効果を得られる可能性のある患者のサブグループの特定を試みる予定である。

参考文献:
Ferry DR, Dutton SJ, Mansoor W, et al. Phase III multi-centre, randomised, double-blind, placebo-controlled trial of gefitinib versus placebo in esophageal cancer progressing after chemotherapy, COG (Cancer Oesophagus Gefitinib). Presented at the 37th Congress of the European Society for Medical Oncology (ESMO), Vienna, Austria, September 28-October 2, 2012. Abstract LBA20.


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翻訳担当者 有田香名美

監修 畑 啓昭(消化器外科/京都医療センター)

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