HER2陽性胃食道腺がんにベバシズマブ併用が有効

ダナファーバーがん研究所

研究概要

HER2陽性転移性胃食道腺がんに対して、分子標的薬および化学療法に加えてベバシズマブ(販売名:アバスチン)を用いることで顕著な活性が生じることが、臨床試験により明らかになった

試験タイトル:CAPOX BETR:治療歴のないHER2陽性転移性胃食道腺がんを対象とした、カペシタビン(capecitabine)、オキサリプラチン(oxaliplatin)、ベバシズマブ、およびトラスツズマブ(販売名:ハーセプチン)の多施設共同第2相試験の長期成績およびctDNA相関解析

公開:AACRポスターセッション、プレゼンテーション番号CT155;ポスターボード番号:17

著者:Harshabad Singh、医学士、医師(ダナファーバーがん研究所)

要約

HER2陽性転移性胃食道腺がん患者を対象とした臨床試験において、化学療法およびHER2標的薬トラスツズマブ(ハーセプチン)にベバシズマブを加えることで顕著な活性が認められた。これは、T細胞上のPD-1タンパクを標的とする免疫療法薬を含む現行の標準療法の効果に匹敵する。この試験では、治療歴のない37人のがん患者が、標準的な化学療法(カペシタビンおよびオキサリプラチン)ならびにトラスツズマブ(HER2標的薬)の投与後に、腫瘍への血管増殖を阻害する血管新生阻害薬ベバシズマブの投与を受けた。参加者の81%でこの療法による奏効が認められた。中央値23.2カ月の追跡期間の時点で全患者が生存しており、無増悪生存期間(PFS)は14カ月であった。これは、化学療法、トラスツズマブ、および免疫療法薬ペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ)からなる現行の標準療法の奏効率74%に匹敵する。6カ月無増悪生存率は、標準療法の70.3%に比較して、ベバシズマブを含むレジメンでは77%であった。臨床試験責任医師は、この結果はベバシズマブを標準療法と併用する臨床試験の基礎となるかもしれないと語っている。

影響

HER2陽性転移性胃食道腺がん患者を対象とした臨床試験において、血管新生阻害薬ベバシズマブ、化学療法、およびHER2標的薬の併用により顕著な臨床効果が得られることが明らかになった。試験から中央値で約2年後に37人の参加者全員が生存していた。この結果は、免疫療法薬を含む標準療法とベバシズマブを併用する試験の基礎となるかもしれない。

助成金

本試験はGenentech社から研究助成を受けた。血中循環腫瘍DNAの解析はPredicine, Inc.社の協力を得て実施した。

  • 監訳 廣田裕(呼吸器外科、腫瘍学/とみます外科 プライマリーケアクリニック)
  • 翻訳担当者 角坂功
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  • 原文掲載日 2023/04/14

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