膵がん患者に対する遺伝子検査の義務化で多くの変異が発見

ダナファーバーがん研究所主導の新しい研究によると、消化器腫瘍専門医らが体系的な遺伝子スクリーニング+カウンセリングを実施したところ、膵臓がん患者で多くの遺伝子変異が発見された。

ダナファーバーがん研究所の消化器腫瘍専門医らが用いたのは、遺伝性膵臓がん遺伝子スクリーニング検査の1つである多重遺伝子生殖細胞系列検査(MGT)+遺伝カウンセリングだった。膵臓がん患者で遺伝子変異が同定された場合、これらの患者とその家族は膵臓がんに対する標的スクリーニングと治療を受けた。

研究者らは、ソルトレイクシティで開催された2019年Collaborative Group of the Americas(CGA)年次総会で調査結果を発表した。

「米国のガイドラインは昨年改訂されたばかりで、全膵臓がん患者に多重遺伝子生殖細胞系列検査と遺伝カウンセリングを推奨していますが、実際には多重遺伝子生殖細胞系列検査を体系的に実施することが課題となっていました」と、ダナファーバーがん研究所Lynch Syndrome Centerのディレクターで、本論文の筆頭著者であるMatthew Yurgelun医師は述べた。

「膵臓がん患者は多くの医療行為が同時に必要なことから、その混乱の中で遺伝子検査が実施されない可能性があります」と、彼は付け加えた。また、ほとんどのプログラムが、腫瘍専門医が検査の紹介を開始してくれることを当てにしているが、腫瘍専門医はそのことについて忘れている、または後で対処すると決めている可能性があり、行われていない。

結論として、患者が遺伝カウンセリングを予定していない、または実施しないことを選択している場合、遺伝子変異が同定されないリスクがある。

「以前は、リスクが高い膵臓がんの特性を有する、または膵臓がんの家族歴がある患者のみを遺伝子検査の対象としていました」とYurgelun医師は述べた。

遺伝的変異がより早期に発見されれば、膵臓がん患者とその家族がより迅速に遺伝的変異とその他の関連するがんに対するスクリーニングと特別な治療を受けることになる。「膵臓がんを引き起こす遺伝子が他のがんも引き起こす可能性があります」とYurgelun医師は述べた。「たとえば、BRCA1とBRCA2は膵臓がん、乳がん、卵巣がん、前立腺がんを引き起こします」。

これまでの研究では、多重遺伝子生殖細胞系列検査により医師ががん感受性遺伝子変異の最大で4〜10パーセントを同定することが可能であることが明らかになっている。多重遺伝子生殖細胞系列検査の重要性を鑑み、ダナファーバーがん研究所(DFCI)の消化器腫瘍専門医らは2016年に、全膵臓がん患者が多重遺伝子生殖細胞系列検査+遺伝カウンセリングを受けるという方針を開始した。2018年10月までに、ダナファーバーがん研究所(DFCI)で治療を受けた全膵臓がん患者が、初診のがん評価と同日に遺伝カウンセリングを受けた。

この研究では、1つのがん研究所の患者のみを対象としており、本研究の弱点である。さらに、一部の患者が検査を受けないことを選択したことも、研究の弱点となっている。

「初診で遺伝カウンセラーに会うことが全患者にとって適切なわけではありません」とYurgelun医師は述べた。「一部の患者は1回限りのセカンドオピニオンを求めている、または新規に診断されてやるべきことがたくさんあるため、再診が困難です」。

将来、Yurgelun医師と彼のチームは、多重遺伝子生殖細胞系列検査+遺伝カウンセリングを提供する新しい方法を見つけたいと考えている。「動画のように、検査前で対面の遺伝カウンセリングに依存しない遺伝子検査を実施する新しい方法が、実現可能性が高いです。GENERATEと呼ばれる全国規模の研究では「カスケード検査」も検討しています。これは、家族内で遺伝子変異が同定された場合に行う,リスクのある親族に対する家系に従った検査です」。

翻訳担当者 会津麻美

監修 畑啓昭(消化器外科/京都医療センター)

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