膵臓がん術前の化学療法+放射線療法で生存期間が延長

ASCOの見解

「本試験は患者にとって有益な治療がどのように改善されるかを示す一例です。また、治療が非常に難しいとされている膵臓がんの患者にとって、正しい方向への一歩でもあります」と、ASCO専門委員であるAndrew Epstein医師は述べた。

第3相ランダム化比較試験の結果から、膵臓がん手術前に放射線治療とともに術前化学療法(化学放射線治療)を受けた患者は、標準治療のとおり手術から治療を開始した患者と比較して、無病生存期間が長かったことがわかった。また、術前化学放射線治療を受けた患者では2年生存率が高かった(術前化学放射線治療:42%、手術治療から:30%)。本試験の予備的所見では、術前の化学放射線治療が膵臓がん患者にとって有益である可能性が示された。

本試験は本日の記者会見で紹介され、2018年ASCO年次総会で発表される予定である。

「本試験は、手術を受けることができる早期膵臓がん患者において、術前の治療により予後が改善することを示す、最初のランダム化比較試験です」と、本試験の試験責任医師である、オランダのアムステルダム・アカデミック・メディカル・センター放射線腫瘍学部、放射線腫瘍専門医Geertjan Van Tienhoven医学博士は述べた。「本試験によって実臨床が変わる可能性があると確信しています」。

試験について

PREOPANC-1試験には、手術で切除可能な膵臓がんの患者246人を組み入れ、即時に手術を受ける治療群と、10週間の化学放射線療法の後に手術を受ける治療群に無作為に割り付けた。いずれの治療群も術後に化学療法を受けることとし、化学療法の総投与量は同量であった。(化学放射線療法群の化学療法は、術前に一部の投与を受け、残りを術後に受けた。)

主な知見

全生存期間の中央値は、即時手術群で13.7カ月であったのに対し、術前の化学放射線療法群では17.1カ月であった(p=0.74)。膵臓がん再発までの時間についても、術前の化学放射線療法群の方が長かった(術前の化学放射線療法群で9.9カ月、即時手術群で7.9カ月。p=0.023)。2年以上の生存率についても、即時手術群と比較して術前の化学放射線療法群で高かった(術前の化学放射線療法群で42%、即時手術群で30%)。切除手術が成功した患者だけをみると、生存期間の中央値について治療群の間に大きな差が認められた(術前の化学放射線療法群で42.1カ月、即時手術群で16.8カ月)。

膵臓がんは、疾患および患者の病状の悪化が速いため、手術を試みても腫瘍の切除は困難である。また、治療を行っても、診断直後の数カ月における死亡率は依然として高い。

即時手術群患者の72%、術前の化学放射線療法群患者の62%が切除術を受けた。切除術を受けた患者のうち、腫瘍を完全に切除できた(顕微鏡下で確認)患者の割合は、術前の化学放射線療法群の患者の方が高かった(術前の化学放射線療法群で63%、即時手術群で31%)。

次の段階

著者によると、本試験の最終解析および公表の後には次の段階として、より効果的な術前化学療法を見極めたいとしている。

FOLFIRINOXによる化学療法、またはFOLFIRINOXと体幹部定位放射線治療(SBRT:腫瘍周囲組織を損傷させずに、高線量の放射線を正確に腫瘍に照射できる治療)の併用療法は、他の試験結果によると期待ができるものであり、術前のゲムシタビン(ジェムザール)と放射線治療の併用療法を対照としたランダム化比較試験を実施すべきと考えている。

本試験はオランダがん学会(KWF)より資金提供を受けた。

試験の概要

疾患名

膵臓がん

試験相/種類

第3相、ランダム化比較試験

患者数

246人

治療内容

術前化学放射線療法と即時手術の比較

主要知見

全生存期間中央値は即時手術群13.7カ月、術前の化学放射線療法群17.1カ月(解析に必要な176イベントのうち146イベントでの中間集計結果)

副次的知見

手術による腫瘍の完全除去(顕微鏡下で確認)ができた患者の割合は術前の化学放射線療法群で63%、即時手術群で31%

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翻訳担当者 瀧井希純

監修 野長瀬祥兼(腫瘍内科/近畿大学医学部附属病院)

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原文掲載日 

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