アスピリン定期的服用が膵臓がんのリスク低下に関連

 中国の住民での試験など最近の試験で、リスクが約50%低下する結果

米国がん学会(AACR)の機関誌Cancer Epidemiology, Biomarkers & Preventionに掲載されたデータから、中国・上海の住民によるアスピリンの定期的服用が、膵臓がん発症のリスク低下と関係していることがわかった。

新規研究データおよび他の18件の研究データのメタアナリシスから、過去20年にわたって一般人のアスピリン服用が増加したことに伴い、アスピリンの膵臓がんリスク低下効果がより顕著になったことが示唆される。

「膵臓がんは最も致命的ながん種の一つ(診断後5年以上生存する患者は8%未満)であるため、膵臓がんを予防する方法を見つけることは重要です」と、コネティカット州ニューヘブンのイェール大学公衆衛生学部およびイェールがんセンターの慢性疾患疫学部の疫学教授であるHarvey A. Risch医学博士は述べた。「上海の大人数によるアスピリンの定期的服用により、膵臓がんのリスクが約半分に低下することがわかりました」。

「これらの新しいデータは、世界中の他集団でみられたデータと一致します」とRisch博士は続けた。「膵臓がんは比較的まれで(米国の成人が生涯で膵臓がんと診断される割合はわずか1.5%)、アスピリンの定期的服用は、人によっては特記すべき合併症を引き起こす可能性があります。したがって、アスピリンの服用については医師に相談するべきです。そうは言うものの、心血管疾患または大腸がんのリスクを下げるためにアスピリンを服用する人は、その服用により膵臓がんのリスクも低下する可能性があると肯定的に考えてよいことが科学的根拠から示されます」。

Risch博士らは、2006年12月から2011年1月までに上海の37病院で新たに膵臓がんと診断された患者を集めた。また、Risch博士らは上海の住民台帳から無作為に対照群を抽出した。膵臓がん患者761人および対照者794人に直接面接し、他の質問と合わせて、アスピリンの服用開始時期、アスピリンの服用年数およびアスピリンの服用中止時期を確認した。ほぼすべてのアスピリン服用者は、アスピリンを毎日服用していた。

膵臓がん患者の11%がアスピリンを定期的に服用していると答えた。対照群ではアスピリン定期的服用と回答した割合は18%であった。肥満度指数、喫煙歴および糖尿病歴を含む多くの因子について調整した結果、定期的なアスピリン服用歴が膵臓がんリスクの46%低下と関係のあることがわかった。アスピリン服用1年ごとにリスクは8%低下した。

文献の調査で、Risch博士らはアスピリンの服用および膵臓がんのリスクを検討した他の18件の研究を見出した。これらの研究のメタアナリシスから、アスピリン服用が確認された時期の中間点となる年で研究を評価した場合、アスピリンの定期服用によって、膵臓がんリスクに関するオッズ比は 現在まで年に2.3%という有意な値で低下した。

Risch博士によると、上海の研究の主な制約は、参加者が過去のアスピリン服用を正確に報告していることを前提とする症例対照研究である点である。

本試験は米国国立がん研究所、上海市の科学技術委員会、ならびに上海がん研究所から資金提供を受けた。Risch博士は利益相反行為がないことを宣言している。

翻訳担当者 木下秀文

監修 東海林洋子(薬学博士)

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