術後併用補助化学療法が膵臓がんの生存を延長

ランダム化第3相試験、ESPAC-4の結果

膵管腺がん切除後患者に対する、ゲムシタビン+カペシタビン併用補助化学療法とゲムシタビン単独療法を比較した多施設共同国際非盲検ランダム化対照第3相試験ESPAC-4の結果では、併用療法群の生存期間が2.5カ月延長し、統計的な有意差を示した。この結果は、2016年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会(6月3~7日、米国、シカゴ)の消化器がん(大腸がんを除く)セッションで、John Neoptolemos氏によりその要旨が口頭発表された。

ゲムシタビンは、膵臓がん切除後の標準的な治療薬である。以前行われた、膵臓がん切除後の補助化学療法としての、ゲムシタビン単独と5-フルオロウラシル+folinic acid[フォリン酸](5-FU+FA)療法とを比較したESPAC-3試験では、ゲムシタビン単独群のほうが、生存は同等で毒性が少ないという結果が得られた。ESPAC-4は、ゲムシタビン+カペシタビン併用化学療法が、ゲムシタビン単独と比較し生存期間を延長するかを検証する目的で行われた。

ESPAC-4試験では、膵管腺がん患者を術後12週以内に、ゲムシタビン単独群またはゲムシタビン+カペシタビン併用群に無作為に割り付け、いずれも6サイクル施行した。患者は切除後の断端の状態(R0、R1)や国ごとに階層化された。適格基準は、腹水がないこと、肝臓や腹膜に転移がないこと、腹部あるいは腹部外のいかなる臓器もがんの進展がみられないこと、これまでに重複がんと診断されていないこと、WHOのパフォーマンス・ステータス(PS)が2以下であること、3カ月以上生存が見込まれること、十分なインフォームドコンセントがなされていることであった。

主要評価項目は全生存期間で、副次的評価項目は毒性、無再発生存、2年生存率、5年生存率および生活の質(QOL)であった。

2008年11月~2014年9月までに、732人が無作為に割りつけられ、解析可能であったのは730人(ゲムシタビン366人、ゲムシタビン+カペシタビン364人)であった。年齢の中央値は65才で、57%が男性であった。WHOのPS0が42%、1が55%、2が3%であった。術後のCA19-9の中央値は19kU/Lであった。最大腫瘍径の中央値は30mmで、60%がR1切除、80%がリンパ節陽性、40%が低分化型であった。

2015年12月、独立治験運営委員会(Independent Trial Steering Committee)は、完全な解析をするよう勧めた。データ解析は、2016年3月2日に終了した。

ゲムシタビン+カペシタビン併用群での生存期間の中央値は28.0カ月で、ゲムシタビン単独群では25.5カ月であった。層別ログランク解析では、ハザード比は0.82[95%信頼区間0.68-0.98]、p=0.032であった。

全体では、安全性評価が行われたゲムシタビン投与群366人中196人で、グレード3、4の有害事象が481件、ゲムシタビン+カペシタビン投与群359人中226人で、グレード3、4の有害事象が608件報告されたが、有意な差はみられなかった。グレード3、4の有害事象に関しては、下痢、手足症候群が併用群でより高頻度にみられた。

Neoptolemos氏は、併用療法群の生存期間中央値は、ゲムシタビン単独群より有意に良好であったと結論づけた(28カ月に対し25.5カ月)。推定5年生存率は、ゲムシタビン単独療法に比し併用療法で優れていた(28.8%に対し16.3%)。併用療法群での5年生存率(28.8%)は、以前のESPAC試験(化学療法未施行群の8%、化学放射線療法群の10.8%、5-FU+フォリン酸群の15.9%)に勝るものであった。毒性は、ゲムシタビン+カペシタビン群でわずかに多くみられたが、全体的には管理可能で、有意な差はみられなかった(重篤な有害事象は併用療法で24%、単独療法で26%であった)。

Neoptolemos氏は、進行性膵臓がんに効果を示す薬剤のわずかな利益は、術後に使用することにより、より大きな効果をもたらすことが可能であると結論づけた。すべての膵臓がん患者にランダム化試験へのエントリーが要請され、バイオマーカー(hENT1など)が評価される必要がある。ゲムシタビン+カペシタビン補助化学療法は、膵臓がん切除後に対する新たな標準治療である。

参考文献
Neoptolemos JP, Palmer D, Ghaneh P, et al. ESPAC-4: A multicenter, international, open-label randomized controlled phase III trial of adjuvant combination chemotherapy of gemcitabine (GEM) and capecitabine (CAP) versus monotherapy gemcitabine in patients with resected pancreatic ductal adenocarcinoma. J Clin Oncol 34, 2016 (suppl; abstr LBA4006)

翻訳担当者 橋本奈美

監修 小宮武文(腫瘍内科/カンザス大学医療センター)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

膵臓がんに関連する記事

膵がん転移巣を標的とした放射線治療の追加により無増悪生存期間が延長の画像

膵がん転移巣を標的とした放射線治療の追加により無増悪生存期間が延長

転移膵臓がんの臨床試験で報告された中で最長の無増悪生存期間を達成オリゴ転移(少数の転移巣)のある膵がん患者で、標準治療の化学療法に転移巣を標的とした放射線治療を追加することで無...
膵臓がん早期発見にエクソソームを用いたリキッドバイオプシーが有望の画像

膵臓がん早期発見にエクソソームを用いたリキッドバイオプシーが有望

エクソソームを用いたリキッドバイオプシーは、バイオマーカーCA19-9と併用することで、ステージ1〜2の膵臓がんの97%を正確に検出した。この研究結果は、4月5日から10日まで開催され...
膵臓がんの治験用RNAワクチンに対する免疫応答は、臨床的有用性と相関の画像

膵臓がんの治験用RNAワクチンに対する免疫応答は、臨床的有用性と相関

中央値3年間の追跡調査結果切除可能な膵臓がんの特定の患者において、autogene cevumeran(オートジーン セブメラン:治験中の個別化されたネオアンチゲン特異的mRN...
意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果の画像

意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果

ダナファーバーがん研究所意図せぬ体重減少は、その後1年以内にがんと診断されるリスクの増加と関連するという研究結果が、ダナファーバーがん研究所により発表された。

「運動習慣の改善や食事制限...