長期間にわたる肥満が膵癌の生存率の低さと関連

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新しくJournal of Clinical Oncology誌に発表された前向き研究の結果によると、肥満度指数(BMI)が肥満域にある患者は、健康体重の患者より膵臓癌と診断を受けた後の生存が平均2~3カ月短いことが判明した。この結果は膵臓癌患者の生存予測因子とされている年齢や病期などについて補正しても変わらなかった。またこの関係は統計学的に、癌診断を受けるまでの過去20年間体重過多であった患者で最もはっきりとした傾向があった。

膵臓癌は米国において、癌関連死因の第4位である。新規に診断を受けた患者の約90%以上にあたる膵臓腺癌患者の大多数の生存期間は診断後1年未満である。

肥満は米国およびその他多くの国において公衆衛生上の深刻な問題である。肥満が心疾患や糖尿病のリスク因子であることはよく知られているが、それはまた癌リスクと転帰にも関係していることが一層明白になってきている。実際、研究者らは、近い将来、肥満は、典型的な予防可能な癌の原因となるだろうと予測している。

今までのいくつかの研究からBMIが高値であると膵癌発症のリスクが高くなることが証明されているが、これまでのところBMIは膵癌が高悪性度であることに影響するのか、または診断後の生存に影響するのかについての研究はほとんど行われていない。

「癌患者の転帰改善における体重管理の果たす役割について、増えつつある知見のひとつとしてこの研究データが加わりました。また本研究で生涯を通じた健康体重の維持の重要さがより確固としたものになりましたが、健康体重を維持することは癌診断後のよりよい転帰に通じる、膵癌発症防止に貢献することになるでしょう」とマサチューセッツ州、ボストンにあるダナファーバー癌研究所とハーバード大学医学部の内科助教であり公衆衛生学専門職修士でもある研究統括著者Brian M. Wolpin医師は語った。また「この研究結果が今すぐ現在の治療方法に変化をもたらすわけではないでしょう。が、肥満患者と健康体重の患者間の生存差の原因を担うと思われる分子経路を、究明する新しい手がかりを与えてくれています。うまくいけば将来その研究によって膵臓癌の治療法に新たな前進がもたらされることでしょう」と述べた。

研究者らは2つの大規模な前向きコホート研究Nurses’ Health StudyとHealth Professionals Follow-Up Studyの参加者の中から膵臓癌患者の1986年のBMIと膵癌診断後の生存のデータを選び出し、その関係について評価した。選ばれた患者の既往症や健康を維持するための行動、好みのライフスタイルなどについて査定評価が行われた。この研究では、24年間に膵臓腺癌の診断を受けた902人の患者について評価している。

全般的にみて、参加者の癌診断後の生存期間中央値は5カ月であった。Wolpin医師によれば、平均すると健康体重の患者(BMIが25kg/m2未満)は肥満患者(BMIが35kg/m2以上)より2~3カ月長生きしていた。患者の年齢や性別、人種・民族、喫煙に関する状況、そして病期の違いについて統計学的に補正を行っても診断前のBMI高値と生存の短さは関連があった。肥満患者はまた癌が進行したステージで診断される傾向がより強くあり、診断時に癌の転移がみられたのは、健康体重の患者では59%であったのに対して、肥満患者では72%であった。

BMIと生存との関係は、診断を受ける18~20年前にBMIが高かった202人の患者でより強く認められた。ほとんどの人は一旦体重が増えると体重過多のままなのだと仮定すれば、Wolpin医師によると、この結果は長期にわたる体重過多は、より悪い転帰につながることを示唆していることになる。この研究はまた肥満と癌との関連性を究明するさらに進んだ取り組み方法を示唆している。たとえば、肥満患者において腫瘍発症を促進する変異が腫瘍の高悪性度にも同じく影響を及ぼすのかどうかはまだわかっていない。いくつかの現在進行中の研究ではすでに肥満と癌に関連して代謝経路(エネルギーと栄養素の代謝過程)やゲノム変化について探査している。その研究で、肥満した人に発症する腫瘍は、健康体重の人に発症する腫瘍とは異なる治療に感受性があるのかどうか明らかになるかもしれない。

本研究は一部Brian Wolpin氏への2009 Conquer Cancer Foundation of ASCO Career Development Awardの資金援助によって行われた。

翻訳担当者 楳田典子

監修 林正樹(血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)

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