EndoTAG-1が膵臓癌治療薬として有望

キャンサーコンサルタンツ
2008年9月

第2相臨床試験の結果から、ジェムザール(ゲムシタビン)を用いた化学療法に研究中の薬剤EndoTAG-1®を追加することによって、手術不可能な膵臓癌患者の生存率を改善できる可能性がある。この結果は第33回欧州癌治療学会(European Society for Medical Oncology(ESMO))の最新抄録に発表された。

膵臓癌はすべての癌の中で死亡率が最も高い癌のひとつで、米国で毎年新たに診断される癌の約2%にすぎないが、癌による全死亡者数の5%を占める疾患である。膵臓癌はしばしば「サイレントキラー」と呼ばれる。これは通常、癌が進行して膵臓の外に広がるまで症状が表れないためである。その結果、ほとんどの場合、膵臓癌は治療不可能な段階に進行するまで発見されることがない。

化学療法が進行膵臓癌の通常の治療である。しかし化学療法単独では長期生存率が低いため、研究者らは効果を改善する新たな方法を評価している。ジェムザールは進行性膵臓癌または転移性膵臓癌の初期治療の選択肢のひとつとされている薬剤である。

EndoTAG-1は特許取得済みの製剤であり、プラス電荷を帯びた脂質複合体が、溶解した細胞増殖抑制剤パクリタキセルを輸送し、腫瘍の新生血管にあるマイナス電荷を帯びた上皮細胞に送達する。到達したパクリタキセルは腫瘍血管を破壊し血管新生を阻止することで、腫瘍組織への栄養供給を減らして増殖を止めると考えられる。

膵臓癌に対するEndoTAG-1の有効性を評価するために、研究者らは手術不可能で、局所進行性または転移性膵臓癌患者200人を対象とした第2相臨床試験を実施した。患者らはジェムザール(ゲムシタビン)を用いた化学療法に加えて、3用量のEndoTAG-1群かプラセボ群に割り付けられた。

●ジェムザール単独投与治療群では12ヵ月生存率は17%であった。ジェムザールとEndoTAG-1併用群では、低用量EndoTAG-1群の12ヵ月生存率は22%、中用量EndoTAG-1群では36%、高用量EndoTAG-1群では33%であった。

● EndoTAG-1投与による奏効がみられた患者には、試験後半の治療期間を延長してEndoTAG-1の投与を継続した。これらの患者では低用量EndoTAG-1投与の場合12ヵ月生存率は25%、中用量EndoTAG-1群では52%、高用量EndoTAG-1群では40%であった。

この試験から、EndoTAG-1が手術不可能な膵臓癌患者の生存率を延長するかもしれないことが示唆された。試験実施責任者のDr. Mathias Löhrは、「今回の試験データから、現在膵臓癌患者に用いている薬剤よりもEndoTAG-1を用いる方が顕著に高い有効性が示された」と述べた。今回の試験結果はさらに試験を行い確認する必要があると考えられる。

コメント:
EndoTAG-1に関するこれらは有望な結果であるがジェムザールとの併用でEndoTAG-1の方がタキソールまたはアブラキサンより有効性が高いかどうかは明らかではない。

参考文献:
[Lohr M, et al. 12-month survival data of a phase II trial: first line treatment of inoperable pancreatic adenocarcinoma with cationic complexed paclitaxel nanoparticles (Endotag-1®) plus gemcitabine compared to gemcitabine monotherapy. 33rd Congress of the European Society for Medical Oncology. Abstract LBA7.


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翻訳担当者 内村美里人 

監修 関屋 昇(薬学)

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