FDAがHER2陽性胃腺がんにトラスツズマブ デルクステカンを承認

2021年1月15日、米国食品医薬品局(FDA)は、トラスツズマブを含む治療歴のあるHER2陽性の局所進行/転移のみられる胃腺がんまたは食道胃接合部(GEJ)腺がん患者にトラスツズマブ デルクステカン(販売名:エンハーツ、第一三共株式会社)を承認した。

有効性は、多施設共同非盲検ランダム化試験(DESTINY-Gastric01、NCT03329690)によって評価され、トラスツズマブ、フルオロピリミジン系薬剤およびプラチナ系薬剤による化学療法を含む2つ以上の前治療を受けたHER2陽性の局所進行または転移のみられる胃腺がんまたは食道胃接合部(GEJ)腺がん患者が試験の対象となった。188人の患者が、トラスツズマブ デルクステカン6.4mg/kgを3週ごとに点滴静注する群と、医師の選択によりイリノテカンまたはパクリタキセル単剤療法を行う群に2:1の割合で無作為に割り付けられた。

主要有効性評価項目は、ITT解析対象集団における全生存期間(OS)および独立した中央判定(RECIST 1.1)に基づく客観的奏効率(ORR)であった。副次的有効性評価項目は、無増悪生存期間(PFS)と奏効期間(DOR)であった。

全生存期間はトラスツズマブ デルクステカン群で12.5カ月(95%信頼区間[CI]:9.6~14.3)であったのに対し、イリノテカンまたはパクリタキセル群では8.4カ月(95%CI:6.9~10.7)であった(ハザード比[HR] 0.59;95% CI:0.39~0.88、p=0.0097)。確定された客観的奏効率はトラスツズマブ デルクステカン群で40.5%(95%CI:31.8~49.6)であったのに対し、イリノテカンまたはパクリタキセル群では11.3%(95%CI:4.7~21.9)であった。無増悪生存期間の中央値はトラスツズマブ デルクステカン群で5.6カ月(95% CI:4.3~6.9)であったのに対し、イリノテカンまたはパクリタキセル群では3.5カ月(95% CI:2.0~4.3)であった。奏効期間の中央値はトラスツズマブ デルクステカン群で11.3カ月(95% CI:5.6~未到達)であったのに対し、イリノテカンまたはパクリタキセル群では3.9カ月(95% CI:3.0~4.9)であった。

臨床検査値の異常を含め最もよくみられた副作用(20%以上)は、貧血、白血球減少症、好中球減少症、リンパ球減少症、血小板減少症、悪心、食欲減退、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加、疲労、血中アルカリホスファターゼ増加、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加、下痢、低カリウム血症、嘔吐、便秘、血中ビリルビン増加、発熱、脱毛症であった。間質性肺疾患と胚・胎児毒性の危険性について医療従事者に通知するため、処方情報には枠組み警告が含まれている。

胃がんに対するトラスツズマブ デルクステカンの推奨用量は、3週間毎(1サイクル21日)の6.4mg/kgを点滴静注で、疾患進行もしくは忍容できない毒性が認められるまで継続する。

エンハーツの全処方情報はこちらを参照。

本審査には、FDAによる評価を円滑に進めるために申請者が自発的に申請を行うAssessment Aidが使用された。FDAは本申請を目標期日の6週間前に承認した。

本申請は優先審査の指定を受け、本剤は胃がんに対する画期的治療薬およびオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)の指定を受けた。FDA迅速承認プログラムに関する情報は、「企業向けガイダンス:重篤疾患のための迅速承認プログラム-医薬品およびバイオ医薬品」(the Guidance for Industry: Expedited Programs for Serious Conditions-Drugs and Biologics)に記載されている。

翻訳担当者 中島 節

監修 中村能章(消化管悪性腫瘍/国立がん研究センター東病院 消化管内科)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

胃がんに関連する記事

HER2陽性胃食道腺がんにベバシズマブ併用が有効の画像

HER2陽性胃食道腺がんにベバシズマブ併用が有効

ダナファーバーがん研究所

研究概要

HER2陽性転移性胃食道腺がんに対して、分子標的薬および化学療法に加えてベバシズマブ(販売名:アバスチン)を用いることで顕著な活性が生じることが、臨床試...
ゾルベツキシマブ併用により特定の胃がんの生存期間が延長の画像

ゾルベツキシマブ併用により特定の胃がんの生存期間が延長

米国臨床腫瘍学会(ASCO)ASCOの見解「GLOW試験およびSPOTLIGHT試験の結果から、CLDN18.2陽性/HER2陰性の進行性胃がん/胃食道接合部がんの患者の治療体...
局所進行胃がんの病期判定にはPETではなく腹腔鏡検査が有用の画像

局所進行胃がんの病期判定にはPETではなく腹腔鏡検査が有用

局所進行前立腺がん患者の病期判定には、腹腔鏡検査が有益であると思われるが、PET/CT検査(18Fフルオロデキシグルコース陽電子放射断層/コンピュータ―断層複合撮影)は有益ではない、と研究者らは述べている。 「進行がん患者全員に診療でのPE
東アジア人の進行胃がんへのラムシルマブ併用、生存延長に達せずもPFSを改善の画像

東アジア人の進行胃がんへのラムシルマブ併用、生存延長に達せずもPFSを改善

東アジア人の進行胃がん患者に対する二次治療としてパクリタキセルにラムシルマブを追加投与することにより、無増悪生存期間(PFS)が延長されることがRAINBOW-Asia試験で示された。 しかし、ラムシルマブ(販売名:Cyramza[サイラム