胃がんの主要リスク要因となるピロリ菌の菌株を特定

PLOS ONE誌掲載のパイロット研究は、医師がハイリスク患者をより良く識別し、予防し、治療するのに役立つ可能性がある

フレッドハッチンソンがん研究センターの研究者は、ヘリコバクター・ピロリ菌の特定の菌株が胃がんと強く関係することを発見した。PLOS ONE誌に掲載された本研究は、最終的には患者の治療戦略やスクリーニング戦略を立てるために用いられる可能性がある。

鄭州大学の研究者と共同で、フレッドハッチンソンがん研究センターチームは49人の患者の胃内視鏡検査と便検査を行い、EPIYA Dと呼ばれるcagA 遺伝子の変異を持つヘリコバクター・ピロリ菌を検索した。EPIYA D株を有する患者の91%に、がんも認められることを発見した。

「ヘリコバクター・ピロリ菌は、胃がんと強い相関関係があることがわかっています。しかしなぜ特定の患者、特に北東アジア地域の患者ががんに罹患しやすいのか正確に指摘することは困難です」とフレッドハッチンソンがん研究センターヒト生物学および公衆衛生部門のメンバーで、本研究の統括筆者であるNina Salama博士は述べた。「実際のところは暫定的なものですが、これらの結果は最も高いリスク群を特定し、スクリーニングや治療計画を改善する第一歩になります」。

ヘリコバクター・ピロリ菌は、ヒトの胃の内部を覆う粘液層で育つらせん型の菌であり、潰瘍の原因になる。世界の人口の50%を超える人々が感染していると考えられ、それが胃がんの主要な原因になっている。世界保健機関によれば、胃がんは2015年のがんによる死因の第4位であり、全世界で75万人を超える人々が死亡している。

「残念なことに、ヘリコバクター・ピロリのような感染症は直接的または間接的に世界のがんの原因の20%にのぼります。しかし原因を知ることで、感染予防のワクチンやリスクをより良く理解するためのツールの開発のターゲットが明らかになります」Salama博士は続けた。

研究チームは、研究に参加した患者が少人数であることを認めており、限定的な結論にとどめている。フレッドハッチンソンがん研究センターと鄭州大学の研究チームは、引き続き共同でより大規模な研究を進めることを希望している。

翻訳担当者 白鳥理枝

監修 畑啓明(消化器外科/京都医療センター)

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