ペムブロリズマブが治療歴ある進行再発胃がんに有望

前治療歴のある切除不能進行再発胃がんでペムブロリズマブが有望な奏効率を示した。マドリッドで開催中の欧州臨床腫瘍学会(ESMO)2017で本日発表されたKEYNOTE-059試験の最新結果による。

切除不能進行再発胃がん患者の予想生存期間は1年以下である。過去10年間でこのがんについて承認された新薬はわずかしかない。第2相試験KEYNOTE-059は、再発または転移した胃がんでの免疫治療薬を検証する最大規模の臨床試験の一つである。

この試験には以下3つのコホート(患者群)がある。1)2つ以上の化学療法を受けた後、PD-1(T細胞の細胞死誘導時に発現が増強される遺伝子)抗体であるペムブロリズマブ単剤投与を受けた切除不能進行再発胃がん患者259人 、2)新たに切除不能進行再発胃がんと診断され、ペムブロリズマブと他の化学療法の併用治療を受けた患者25人、3)新たに切除不能進行再発胃がんと診断され、ペムブロリズマブ単剤投与を受けた患者31人。

主要エンドポイントは、安全性(3つの群すべて)と、客観的奏効率(第1群と第3群)であった。

中央値6カ月の追跡調査の後、前治療歴があり、ペムブロリズマブ単剤投与を受けた患者(第1群)は、客観的奏効率が12%であった。さらにPD-L1発現がみられた患者はPD-L1発現がなかった患者より客観的奏効率が高く、それぞれの奏効率は16%、6%であった。そうした奏効の多くは持続的であった。第1群の患者の18%にグレード3から5の治療に関連する有害事象がみられ、3%の患者はそのためにやむを得ず治療を中止した。

「研究データによると、特にPD-L1発現のある患者では、ペムブロリズマブの確実な奏効を示す充分な腫瘍縮小がみられ、また安全性も示 された。複数の前治療を受けた患者の場合、奏効率はゼロに近いと考えられていることから、この結果は非常に有望であると言える」とZev Wainberg医師は述べた。同医師は本研究の筆頭著者であり、米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校の消化器腫瘍プログラムの共同責任者である。

新たに切除不能進行再発胃がんと診断された患者では、化学療法との併用(第2群)とペムブロリズマブ単剤(第3群)の両方の治療が安全かつ有望であると示された。Wainberg医師は「後続の大規模な臨床試験の患者登録がすでに開始されているが、この結果でその試験準備は整ったと言える」とも述べた。

「現在行われている他のランダム化比較試験のエビデンスとこの結果を組み合わせることで、ペムブロリズマブの切除不能進行再発胃がんへの適応承認の根拠となる」と結んだ。

英国サリー州とロンドンのRoyal Marsden病院の顧問腫瘍内科医であるIan Chau医師は、今回ESMOで発表された結果について次のようにコメントした。「現在、切除不能進行再発胃がんにはサードライン以上の標準治療がない。PD-1抗体であるニボルマブのランダム化比較試験であるONO-4538は、東アジア人種患者を対象に実施されたが、KEYNOTE-059の第1群の結果がPD-1抗体の有効性は西洋人種にも適用できることを証明した」。

「将来、ペムブロリズマブが切除不能進行再発胃がんのサードライン以上の標準治療となる可能性がある」とChau医師は付け加えた。

Chau医師は、KEYNOTE-059でのペムブロリズマブの毒性プロファイルは極めて良好であった一方で、副作用が発現するほど長期の治療は行われていなかった可能性もあるという警告も追加した。「化学療法と違い、免疫治療薬の毒性は後になって発現する傾向にある。この薬剤の切除不能進行再発胃がんへの総合的な影響を検討するには、ファーストライン、セカンドラインでの長期投与を行う現在進行中のランダム化比較試験の結果を待つ必要がある」と述べた。

Chau医師は「将来の研究では、PD-L1バイオマーカーの精度を上げ、どんな患者にこれらの免疫治療薬が奏効するかをより明確に表すバイオマーカーを見つける必要がある。また、現在進行している研究によるQOLに関する情報も不可欠である」と結んだ。

翻訳担当者 山岸美恵野

監修 中村能章(消化管悪性腫瘍/国立がん研究センター東病院 消化管内科)

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