ゾルベツキシマブ併用により特定の胃がんの生存期間が延長

ゾルベツキシマブ併用により特定の胃がんの生存期間が延長

米国臨床腫瘍学会(ASCO)

ASCOの見解

「GLOW試験およびSPOTLIGHT試験の結果から、CLDN18.2陽性/HER2陰性の進行性胃がん/胃食道接合部がんの患者の治療体系は変化する準備が整いました。米国において進行性食道胃腺がんは、プラチナ製剤/フッ化ピリミジン系薬剤とニボルマブの併用治療が現在の標準の一次治療です。つまり、本試験がもたらした最大の疑問は、ゾルベツキシマブとチェックポイント阻害薬をどのように比較し、また併用するかということです」。
― Pamela L. Kunz医師、ASCO消化器がん専門医

Claudin (CLDN)18.2陽性/HER2陰性局所進行性または転移性の胃腺がんや胃食道接合部(GEJ)腺がんの一次治療においては、ゾルベツキシマブ+化学療法を併用することで患者の生存期間が延長した。本結果は、米国臨床腫瘍学会(ASCO)プレナリーシリーズの2023年3月のセッションで発表される。

CLDN18.2は、胃および胃食道接合部の細胞上に認められるタンパク質である。ゾルベツキシマブは、がん細胞上のCLDN18.2に結合してがん細胞を死滅させる。CLDN18.2の状態については、切除可能局所進行性または転移性の胃腺がんや胃食道接合部(GEJ)腺がん患者を対象とした評価はいつも決まっては行われておらず、現在、承認済みの治療法は存在しない。

GLOW試験では、化学療法であるカペシタビン(capecitabine)+オキサリプラチン(oxaliplatin)(以下、2種の併用をCAPOXとする)+ゾルベツキシマブ投与群と、CAPOX+プラセボ投与群とに507人の患者を1対1で無作為に割り付けた。8サイクル後、患者は病態進行または中止基準に至るまで、ゾルベツキシマブまたはプラセボとカペシタビンの併用療法を継続した。無増悪生存期間(PFS)は、ゾルベツキシマブ群で中央値8.2カ月であったのに対し、プラセボ群では中央値6.8カ月であった。全生存期間(OS)は、ゾルベツキシマブ群では14.39カ月(中央値)であったのに対し、プラセボ群では12.1カ月(中央値)であった。

著者らは、2023年米国臨床腫瘍学会(ASCO)消化器がんシンポジウムでSPOTLIGHT試験の結果を発表した。本試験では、CLDN18.2陽性/HER2陰性の局所進行性または転移性の胃腺がんや胃食道接合部腺がん患者に対し、ゾルベツキシマブ+フォリン酸+フルオロウラシル(5-FU)+オキサリプラチン(mFOLFOX6)の併用は、プラセボ+mFOLFOX6の併用に比べて無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が良好であることが認められた。

著者らによると、プラチナ製剤/フッ化ピリミジン系薬剤の化学療法は、HER2陰性の切除不可能局所進行性または転移性の胃腺がんや胃食道接合部腺がん患者に対する標準的な一次療法の1つであるが、臨床現場で使用すべき特定のレジメンについて、利用可能なガイドライン間でコンセンサスが得られていない。これを解決するため、SPOTLIGHT試験では世界的に用いられている標準的な化学療法であるゾルベツキシマブ+mFOLFOXの併用、GLOW試験ではゾルベツキシマブ+CAPOXの併用を用いた。

GLOW試験の筆頭著者である、中国広州のSun Yat-sen University Cancer CenterのRui-hua Xu 医学博士は次のように語った。「GLOW試験およびSPOTLIGHT試験の結果から、ゾルベツキシマブ+化学療法の併用は、CLDN18.2陽性、HER2陰性、切除不能局所進行性または転移性の胃腺がんや胃食道接合部腺がん患者にとっては、革新的な治療選択肢かつ新たな標準治療となることが示されました」。

  • 監訳 野長瀬祥兼 (腫瘍内科/市立岸和田市民病院)
  • 翻訳担当者 平 千鶴
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  • 原文掲載日 2023年3月11日

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