トラスツズマブ デルクステカンは切除不能な大腸がんに有望

トラスツズマブ デルクステカンは切除不能な大腸がんに有望

抗体薬物複合体であるトラスツズマブ デルクステカンが、標準治療抵抗性のHER2陽性の切除不能な大腸がんを対象とした非盲検第2相試験において、「有望かつ持続的な効果」を示した。

HER2増幅は大腸がんの2~3%に認められるが、現在までのところ、大腸がんに対して承認された抗HER2薬は存在しない。

DESTINY-CRC01試験では、トラスツズマブ デルクステカンが評価された。対象者は、2〜3回の前治療を受けた後に進行がみられた切除不能なHER2陽性大腸がん患者78人である。前治療にはトラスツズマブ デルクステカン以外の抗HER2薬が含まれる。

患者をHER2発現レベルによってコホートA(HER2陽性、すなわち免疫組織化学(IHC)3+ またはIHC2+ かつin-situ hybridization(ISH)陽性の53人)、コホートB(IHC2+ かつISH陰性の7人)、コホートC(IHC1+の18人)に分けた。

患者は、疾患進行、許容できない副作用の発現、同意撤回、または死亡まで、トラスツズマブ デルクステカン6.4 mg/kgを3週間ごとに静脈内投与を受けた。

中央値27週間の追跡調査後、コホートAの客観的奏効率(主要評価項目)は45.3%(53人中24人)であった。完全奏効は1人(2%)、部分奏効は23人(43%)に認められたと、イタリア・ミラノ大学のSalvatore Siena医師らがLancet Oncology誌で報告した。

コホートAでは、HER2高発現(IHC3+)患者の方が、IHC2+かつISH陽性腫瘍を有する患者よりも客観的腫瘍縮小効果を得た割合が高かった(57.5%対7.7%)。「ただし、IHC2+かつISH陽性腫瘍を有する患者の登録は少数だったため、さらに試験を行うことが必要である」と研究者らは述べている。

「トラスツズマブ デルクステカンはHER2低発現の乳がんでは抗腫瘍効果を示したが、HER2低発現の切除不能大腸がん患者(コホートBのIHC2+かつISH陰性、コホートCのIHC1+)では、奏効がみられなかった」と報告している。

HER2陽性腫瘍を有する大半の患者において、標的病変の退縮と持続的な奏効が認められ、無増悪生存期間と全生存期間が向上した。HER2陽性のコホートにおいては、追跡調査が比較的短かったため、無増悪生存期間も全生存期間も中央値には達しなかった。

トラスツズマブ デルクステカンの安全性プロファイルは、これまでの試験と一致しており、新たな安全性シグナルは認められなかった。すべての患者が治療開始後に生じた有害事象を報告したが、その大半はグレードが低く、重篤には至らなかった。

「注目すべき有害事象」は間質性肺疾患または肺臓炎であり、5人(6%)が発症し、2人が薬剤と関連のある死亡に数えられた。

Siena医師らは、「治療抵抗性、HER2陽性の切除不能大腸がんの潜在的な治療選択肢として、トラスツズマブ デルクステカンに関するさらなる臨床検査を行う道を本試験が切り開いた」との結論を下した。

この論文に対する論評の著者は、トラスツズマブ デルクステカンの奏効には、「持続性が示されており、抗HER2薬治療歴とは無関係であると認められることから、ある程度の非重複耐性*が考えられる」と述べている。

*監修 者注:非重複耐性とは,複数のHER2阻害薬に対する耐性ではないことを意味します。つまり、この変異がみられても、他のHER2阻害薬が効かないわけではないということになります。

英国サリー州のRoyal Marsden HospitalのIan Chau医師は、「しかし、遺伝子増幅を伴わないHER2中等度発現の切除不能な大腸がんやHER2低発現の切除不能な大腸がんでは、トラスツズマブ デルクステカンによる奏効は認められず、これらの患者では奏効や病勢コントロールが十分ではないと考えられる」と記載している。

さらに、「これらの結果は、トラスツズマブとラパチニブ、ペルツズマブ、ツカチニブとの併用、あるいはペルツズマブとトラスツズマブ エムタンシンとの併用に関する最近の他の試験の結果と類似しており、それらを上回る可能性もあるが、総じて、切除不能な大腸がんにおいてはHER2が臨床的に意味のある標的であることを告げている」と報告している。

「トラスツズマブ デルクステカンの利益は、肺臓炎など、生命を脅かす毒性のリスクと慎重にバランスをとる必要がある」とChau医師は綴っている。

本試験は、第一三共とアストラゼネカ社の後援により実施された。複数の著者は、これらの企業との経済的関係を表明している。

原典:https://bit.ly/3uMjawwhttps://bit.ly/3hpBBDl  2021年5月4日付けLancet Oncology誌オンライン版

翻訳担当者  平 千鶴

監修 泉谷昌志(消化器がん、がん生物学/東京大学医学部附属病院消化器内科)

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