小児がんサバイバーに発症する大腸ポリープの病態

ダナファーバーがん研究所の研究者たちは、遺伝的な関連が無いにもかかわらずポリープと呼ばれる多数の大腸腫瘍が小児がんサバイバーに発症するという最近発見された病態について、新たな詳細を本日オンラインの論文で発表する。

この治療関連ポリポーシスと呼ばれる病態(TAP:therapy-associated polyposis)は5人の患者グループをもとにダナファーバーがん研究所が2014年に初めて報告したものである。最新の研究で、治療関連ポリポーシスを全米の8カ所のがんセンターで患者34人から得たデータに基づきさらに深く調査している。

大腸ポリープ(異常なこぶ状の組織の増殖)は大腸がんの危険因子である。ポリポーシスという多数のポリープが消化管にできる状態は、大腸がんおよびその他悪性腫瘍にかかりやすい徴候であることが多い。できる限り早期の段階で異常な腫瘍を検出するために、ポリポーシスと診断された人に加え、その親族も検診の回数を増やしたり、その他侵襲的な処置を受けたりするよう指示を受けるのが一般的である。治療関連ポリポーシス特有の徴候を知り、さらにこの病態が家族性症候群でないことを知ることにより、医師たちは家族を検診対象から除外したり、患者に適切な治療を確実に実施したりすることが可能になる。

「小児または若年期のがんサバイバーは、治療を受けた数年後に大腸がんやポリープなどさまざまながんやがん以外の病態に陥るリスクが高くなる」とダナファーバーがん研究所の医師兼研究者で、Cancer Prevention Research誌が本日掲載した本試験の筆頭著者のLeah Biller医師は語った。「がんサバイバーがポリポーシスを発症した際、私たちはその原因が遺伝によるものであることを懸念し、ポリポーシスに対し遺伝的な関連があるのかを確認する検査を推奨する場合が多い。しかし、治療関連ポリポーシス患者は既知の遺伝的感受性がないにもかかわらずポリポーシスを発症する。これは、治療関連ポリポーシス症状が遺伝によるポリポーシス症候群の症状に類似しているが、別の現象であることを示唆している」。

治療関連ポリポーシス(TAP)の特徴を突き止めるため(そして可能であればTAPと遺伝によるポリポーシスを区別するため)、同病態の患者多数から得たデータが必要とされた。ダナファーバーがん研究所、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院、その他7カ所の治療センターの同僚たちの支援により、ポリポーシスが遺伝的または既知の遺伝子的関連はないが、小児がんに対して過去に化学療法や放射線療法を受けたことがあるTAP患者34人のデータを収集した。

治療関連ポリポーシス(TAP)患者はがん治療後中央値27年でポリポーシスを発症した。研究者たちは、患者の35%に大腸ポリープが50個以上あり、94%に腺腫、鋸歯状ポリープ、過形成性ポリープおよび過誤腫など複数の種類のポリープが混在することも明らかにした。これは、一般的にすべてのポリープが同一の種類からなる遺伝性ポリポーシスの症状と対照を成す。

また、患者の74%ががん治療関連のその他合併症にかかり、50%が結腸外にがんを発症し、47%ががん治療を以前受けたことを示唆する非がん疾患と診断されていることが明らかにされた。この研究結果は、治療関連ポリポーシス患者が一般に治療関連の病態に特にかかりやすい可能性があることを示唆していると本研究の著者は語る。

「治療関連ポリポーシス(TAP)はさまざまな家族性の大腸がん症候群を模倣するように見えるが生物学的には異なる後天的な疾患である」と消化管がん専門のダナファーバーがん研究所の腫瘍学者および同研究所、リンチ症候群センターのディレクターのMatthew Yurgelun医師は語る。治療関連ポリポーシスがさまざまな形態を呈し、また異なる種類のポリープが生じるという事実は、同病態の発症に関連する生物学的経路が複数あることを示唆している。治療関連ポリポーシスおよびその他治療に関連する疾患の治療を改善するために、私たちはどうしてこのような疾患が生じるのかということについてより理解できるよう取り組んでいる」。

本研究の共著者は次のとおりである:Chinedu Ukaegbu, MBBS, MPH, Tara G. Dhingra, and Anuradha Chittenden, MS, of Dana-Farber; Ramona M. Lim, MD, and Sapna Syngal, MD, of Dana-Farber and BWH; Carol A. Burke, MD, Brandie H. Leach, MS, James M. Church, MD, and Matthew F. Kalady, MD, of the Cleveland Clinic; Yana Chertock, MA, and Michael J. Hall, MD, MS, of Fox Chase Cancer Center; Erika S. Koeppe, MS, and Elena Stoffel, MD, of the University of Michigan; Elana Levinson, MS, MPH, and Fay Kastrinos, MD, of New York Presbyterian Hospital; Megan Lutz, MD, and Jennifer M. Weiss, MD, of the University of Wisconsin School of Medicine; Erin Salo-Mullen, MS, Rania Sheikh, MS, and Zsofia K. Stadler, MD, of Memorial Sloan Kettering Cancer Center; and Gregory Idos, MD, of the University of Southern California

本研究は次の助成を受けている:The National Institutes of Health(grants K24CA113433, R01CA132829, and K07CA151769); The Pussycat Foundation Helen Gurley Brown Presidential Initiative; and an American Cancer Society Mentored Research Scholar Grant(MRSG-13-144-01-CPHPS)

翻訳担当者 松長愛美

監修 中村能章(消化管悪性腫瘍/国立がん研究センター東病院 消化管内科)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

大腸がんに関連する記事

TP53変異陽性がんにトリフルリジン・チピラシルとタラゾパリブの併用は有望の画像

TP53変異陽性がんにトリフルリジン・チピラシルとタラゾパリブの併用は有望

研究者らは、TP53遺伝子に変異があるがん細胞を選択的に殺す薬剤組み合わせを特定した。その遺伝子変異は、大半の大腸がんや膵臓がんなど、あらゆるがん種の半数以上にみられる。

NCIが一部資...
大腸がんの増殖にFusobacterium nucleatum亜型が最大50%関連の画像

大腸がんの増殖にFusobacterium nucleatum亜型が最大50%関連

フレッドハッチンソンがん研究センターNature誌に発表された研究によると、Fusobacterium nucleatumの亜型がヒトの大腸がん増殖の根底にあり、スクリーニングや治療に...
大腸がんに術後化学療法が必要かをctDNA検査で予測できる可能性の画像

大腸がんに術後化学療法が必要かをctDNA検査で予測できる可能性

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ転移が始まった大腸がんに対する手術の後、多くの人はそのまま化学療法を受ける。この術後(アジュバント)治療の背景にある考え方は、がんが体内の他...
認識されていない大腸がんの危険因子:アルコール、高脂肪加工食品、運動不足の画像

認識されていない大腸がんの危険因子:アルコール、高脂肪加工食品、運動不足

オハイオ州立大学総合がんセンター仕事中にあまり身体を動かさず肥満率が上昇している現代アメリカでは、何を飲食し、どのくらい身体を動かすかによって大腸がん(30〜50代の罹患者が増...