肝転移大腸がん手術前後の生存期間予測を改善する「スコアシステム」

ジョンズホプキンス大学医学部腫瘍外科フェローであるGeorgios Margonis医学博士とジョンズホプキンス肝・膵臓がん外来外科医であるMatthew Weiss医師は、肝臓に転移した大腸がんの治療と予後予測を改善しようとする取り組みに前進があったことを報告した。

以下は最近の研究結果の要約である。
1.大腸がん術前スコアリングシステムの改善
2.肝転移切除ガイドライン
3.術後予後予測の正確度向上

1.大腸がん術前スコアリングシステムの改善

ジョンズホプキンス大学医学部腫瘍外科研究チームは、肝臓に転移した大腸がん(CRLM)患者の生存期間予測スコアリングシステムを改善したと報告した。より確実に治療成績を予測できれば、患者が現実的な余命に対する期待を持つための、また、医師が生存期間を最長にする治療計画を調整するための一助になるであろうと、研究チームは語った。

Weiss医師は「われわれは過去には『ゴールドスタンダード』である1999年開発のFongシステムを使用して患者のスコアリングを行っていたが、多くの患者の治療成績がFongシステムによる予後予測と一致していなかった」と述べた。そこで、チームは2000年から2015年までにジョンズホプキンス病院で肝腫瘍手術を受けたCRLM患者502人のデータに基づいて新しいアプローチを試みた。

統計解析により、予後が悪いことを予測する6個の異なる因子が同定され、それぞれに患者の生存期間を予測する能力に基づいたポイントが割り当てられた。

「遺伝子および形態学的評価(GAME)と呼ばれるこの新しいシステムには、リンパ節転移の有無などの従来のFongシステムの予後因子が含まれているが、新しく、KRAS遺伝子の変異(がん細胞の増殖を制御するとして長く知られている)の有無などの2つの因子が追加されている」。

「比較したところ、ジョンズホプキンス病院のデータとニューヨークのスローンケタリング記念がんセンターのデータの両方において、GAMEシステムは、控えめではあるが統計的に有意にFongシステムを上回っていた」とMargonis医学博士は述べている。

新しいスコアシステムの詳細は、2018年4月25日付British Journal of Surgery誌で発表された。

研究資金は、Bodossaki Foundation、Keith and Valda Kaye Research Fund、Carolyn Pastorini Research Fundによって提供された。

2.肝転移切除ガイドライン

手術で大腸がん患者の肝転移を切除する場合、可能であれば、腫瘍辺縁から健常な組織を1cm以上切除するようにすべきである。これはジョンズホプキンス大学医学部腫瘍外科医によって,多くの研究情報が系統的にレビューされた結果による。

「いわゆる腫瘍周辺の切除マージンの理想的な幅は広く議論されてきた。『クリーンマージン』という呼び方さえも一貫して適用されていない」とWeiss医師は述べた。

この研究では、より明確な基準を得るため、11,147回の肝臓手術を含む34件の研究のデータを集めた。そして、報告された切除マージンに基づいて患者の治療成績を比較し、死亡またはがん再発の相対リスクを計算した。結果、CRLM患者では、手術で切除する腫瘍辺縁の健常な組織を1cm以上取り除いた場合に5年後の治療成績が最良であるとの結果を得た。相対リスクは、切除マージンが1㎝以下の場合と比べて0.91であった(相対リスクが1以下であれば、リスクの減少を意味する)。

Weiss医師は「例えば腫瘍が血管に近接・接触している場合など、必ずしもこれだけのマージンを取れるとは限らないが、我々のデータでは、1mmのマージンでも全くないよりも良いことが示唆されている」と述べている。

この研究結果は、2017年11月16日付Annals of Surgery誌オンライン版に掲載された。

資金はBodossaki Foundationによって提供された。

3.術後予後予測の正確度向上

ジョンズホプキンス大学医学部の研究者による患者1,099人の多施設分析によると、肝腫瘍切除手術後CRLM患者の治療成績予測にもっとも強く影響する要因は経時的に変化する。具体的には、1年目ではがんの遺伝子の構成が最も影響するが、その後は手術法が重要になる。

「私たちの研究からは、病気のさまざまな時点でその都度最新の予後情報を患者に提供していく必要があることが示唆される」とMargonis医学博士は述べた。

本チームの分析では、条件別生存率、つまり、それまでの生存期間を考慮して患者がその後生存する可能性を予測する値に焦点を当てた(標準化差異は因子の予測力を表し、1.0が最も予測力が強い)。

患者が今後3年以上生存する可能性を計算すると、原発腫瘍のBRAF遺伝子突然変異の有無は、手術直後には患者の生存率を0.48の最も高い値で予測したが、患者が術後1年生存した場合、値が0.06に急激に低下した。

一方、切除マージン幅は、手術時には0.28の値で中程度の予測力であったが、術後2年および3年生存した場合には、値がそれぞれ0.47および0.92に増加した。

この研究の詳細は、2018年1月18日付Annals of Surgery誌オンライン版に掲載された。

研究資金は、Bodossaki Foundation、Keith and Valda Kaye Research Fund、Carolyn Pastorini Research Fundによって提供された。

翻訳担当者 山岸美恵野

監修 畑 啓昭(消化器外科/京都医療センター)

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原文掲載日 

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