特定の腸内細菌が大腸がんの増殖と関連する可能性

キャンサー・リサーチUK

特定の大腸がんの中にいる細菌が、身体の別の部位に転移した少数の腫瘍の中にもいることを最新の研究が示した。

その細菌は、マウスで大腸がん細胞の成長を助けていた。

この知見は、大腸がんの成長と腸内の微生物の種類との関係をさらに裏付けるものであると研究者らは述べている。

ダナファーバーがん研究所のチームは、大腸がんが転移している101人の患者からの腫瘍試料を分析した。これらの試料は、腫瘍が生じた腸内の位置と、腫瘍が肝臓内に転移した位置から採取した。

43人の患者には、大腸がん細胞内にフソバクテリウム(Fusobacteria)と呼ばれる細菌種が多量に存在した。また、20人の患者には、肝臓に転移している大腸がん細胞内にも同じ細菌が存在した。

「この研究は、細菌が腸内のがんに侵入できるだけでなく、身体の他の部位にがんが転移するときにがん内に留まることもできることを示している」と、Cancer Research UKが資金援助している細菌叢の専門家Alastair Watson教授は述べた。

Watson教授が言うには、Science誌で公開されたこの研究の最も興味深い観点は、大腸がんにフソバクテリウムが存在するマウスでの抗生物質の効果である。

フソバクテリウムがいる大腸がん細胞はマウス内で成長したが、この細菌がいない大腸がん細胞は成長しなかった。腫瘍細胞が生き延びて成長するのをフソバクテリウムが助長している可能性があると研究者らは考えている。

フソバクテリウムを死滅させる抗生物質は、マウスの腫瘍内に存在する細菌の量を減少させた。また、この治療は、腫瘍の成長を遅らせた。

「一般に、抗生物質は効果的ながん治療手段ではありませんが、さらに研究を続けることで、他のがん治療と抗生物質の併用が有用となるような特定の状況が明らかになるかもしれません」とWatson教授は述べた。

本研究に携わった研究者らによれば、これらの細菌およびがんの成長に対する抗生物質の効果を十分に理解するにはさらなる研究が必要であるとのことだ。

参考文献
Bullman, S. et al. (2017) Analysis of Fusobacterium persistence in and antibiotic response in colorectal cancer. Science. DOI: 10.1126/science.aal5240

翻訳担当者 福原真吾

監修 花岡秀樹(遺伝子解析/サーモフィッシャーサイエンティフィック)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

大腸がんに関連する記事

特定の遺伝子変化を有する大腸がん治療が免疫療法のみへと変わる?の画像

特定の遺伝子変化を有する大腸がん治療が免疫療法のみへと変わる?

一部のがん患者にとっては、6カ月の免疫療法だけですむかもしれない、あるいは4週間の免疫療法薬の後に小さな手術をするだけで治療が終わるといった可能性はあるのだろうか。

局所進行がんを有する一部の患...
FDAがツカチニブ+トラスツズマブ併用を進行性結腸直腸がんに承認の画像

FDAがツカチニブ+トラスツズマブ併用を進行性結腸直腸がんに承認

大腸がんのうち、外科的切除不能あるいは体の他の部分に転移のある患者の一部に対する新たな治療選択肢が登場した。米国食品医薬品局(FDA)は1月19日、HER2というタンパクを過剰に発現する進行し...
次世代の免疫療法薬2剤(botensilimab、balstilimab)は大腸がんに有効の画像

次世代の免疫療法薬2剤(botensilimab、balstilimab)は大腸がんに有効

次世代免疫療法薬2剤の併用は、これまで免疫療法薬があまり効かなかった難治性転移大腸がん患者の治療に有望な臨床効果を示すことがダナファーバーがん研究所の研究で明らかになった。

サンフランシスコで1...
FDAが大腸がんにツカチニブ+トラスツズマブ併用療法を迅速承認の画像

FDAが大腸がんにツカチニブ+トラスツズマブ併用療法を迅速承認

2023年1月19日、米国食品医薬品局(FDA)は、フルオロピリミジン、オキサリプラチン、イリノテカンベースの化学療法後に進行したRAS遺伝子野生型かつHER2陽性の切除不能または転移性の大腸...