ベバシズマブとオキサリプラチンベース化学療法の併用は既治療の進行大腸癌患者の生存を延長

米国国立がん研究所(NCI) 臨床試験結果

http://cancer.gov/newscenter/pressreleases/BevacizumabOxaliplatin(2004/11/29)

先に治療を受けた進行結腸直腸癌患者の大規模、無作為試験の予備結果によると、bevacizumab (アバスチン)とFOLFOX4 として知られるオキサリプラチン (Eloxatin)レジメンとの併用患者は、FOLFOX4のみの患者より長く生存した。

既治療の進行直腸結腸癌患者を対象とした大規模な無作為割り付け臨床試験の予備的結果から、ベバシズマブ(アバスチンTM)をオキサリプラチン(エロキサチンTM)療法(FOLFOX4療法)と併用することにより、FOLFOX4療法のみを受けた患者に比べ生存期間が延長することが示された。

この試験(E3200試験*)では主要エンドポイントである全生存期間の延長がすでに明らかになっていることから、同試験を監督するデータ監視委員会は最近の中間解析の結果を公表するように勧めている。同試験に登録されFOLFOX4(オキサリプラチン、5-フルオロウラシル、ロイコボリン)療法と併用してベバシズマブの投与を受けた患者では全生存期間の中央値が12.5ヵ月であったのに対し、FOLFOX4療法のみを受けた患者の全生存期間の中央値は10.7ヵ月であった。この差は統計的に有意であり、全生存期間の中央値が17%改善されたことになる。同試験でFOLFOX療法とベバシズマブを併用した患者では、FOLFOX4療法のみを受けた患者に比べ死亡のリスクが26%低下した(ハザード比0.74)。

この臨床試験は国立癌研究所(NCI)(国立医療研究所の部分機関)を依頼者とし、Eastern Cooperative Oncology Groupをリーダーとする研究者ネットワークにより実施された。研究開発協力協定(CRADA)に従って、ベバシズマブを製造したGenentech社が同薬の臨床開発を目的としてこの試験に使用するベバシズマブをNCIに提供した。また、Sanofi-Aventisグループの一員でありオキサリプラチンのメーカーであるSanifi-SynthelaboがCRADAに従ってNCIにオキサリプラチンを提供した。

試験委員長であるペンシルバニア大学、Abramson癌センター(フィラデルフィア)のBruce J. Giantonio医学博士は次のように述べている。「この結果は結腸直腸癌患者にとってまさに朗報である。ベバシズマブは第2選択化学療法としてのFOLFOX4と併用することで生存期間を延長することが明らかになった。これらの所見が得られたことで、進行癌患者よりも2倍以上の期間生存が期待できると、いっそうの確信をもって言えるようになった。」同博士によれば、E3200試験の予備的結果は2005年1月27~29日にフロリダ州Hollywoodで開催されるASCO消化器癌シンポジウムで発表されるということである。

NCIの癌治療診断部門の責任者であり、NCIの臨床試験ワーキンググループの長でもあるJames H. Doroshow医学博士は次にように述べている。「この試験で、数年前からNCIが陣頭指揮を執っている官民協力の利点が明らかになった。バイオテクノロジー企業、製薬企業と協力することにより、NCIはこの2つの医薬品(ベバシズマブおよびオキサリプラチン)を合わせた開発をコーディネートできるようになり、試験に参加した患者・医師各位の熱意と献身により、患者の方々にとって重要な進展が得られた。」

2001年10月から2003年4月までの期間に計829例の患者がこの試験に登録された。進行癌の治療としてフルオロウラシルベースの療法とイリノテカン(カンプトサールTM)による治療(単独療法または同時併用療法)を以前に受けた患者、またはこれらの化学療法薬による補助(術後)治療終了から6ヵ月以内に癌が再発した患者が試験に登録された。患者は3つの治療群のいずれかに無作為に割り付けられた。1群に対しては標準FOLFOX4療法に加えベバシズマブを投与した。他の1群に対しては標準FOLFOX4療法のみを実施し、3群目に対してはベバシズマブを単独投与した。早期の結果から第3群(ベバシズマブ単独投与群)の患者の全生存期間が他の2群よりも短くなる可能性が示唆されたことから、これを審査したデータ監視委員会の勧告に従って2003年3月にこの群に対する割り付けが中断された。

この試験で認められた治療の毒性は、ベバシズマブが化学療法と併用された他の臨床試験で見られた副作用と同等であった。副作用としては、FOLFOX4による神経障害(神経機能の問題)、ベバシズマブによる血圧上昇ならびに出血が認められた。

ベバシズマブは腫瘍血管新生(腫瘍に血液を供給する新血管の形成)において重要な役割を果たすタンパク質である血管内皮増殖因子(VEGF)と結合してその作用を阻害するようにデザインされている。オキサリプラチンは癌細胞を破壊する新しい白金ベースの抗癌薬である。

NCI所長のAndrew C, von Eschenbach医学博士は次のように述べている。「この試験の結果は、すべての進行結腸直腸癌患者にとってきわめて重要である。このような結果が得られたことで、腫瘍への血液供給を標的にした生物学的製剤を化学療法と組み合わせて使用すれば、進行癌に対する治療をすでに受けた患者でも生存期間が延長し得ることがいっそう確実になった。」

2004年には米国で推定196,370人が結腸癌と診断され、推定40,570人が直腸がんと診断されると予測される。米国で診断される癌のうち、結腸直腸癌は男女とも3番目に多い。米国では2004年に推定56,730人が結腸直腸癌で死亡すると予測されており、この数字は米国の全癌死例の10%を占める。

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癌に関する詳細な情報については、NCIのウェブサイト(http://www.cancer.gov)にアクセスするか、NCI癌情報サービス、1-800-4 CANCER(1-800-422-6237)に電話でお問い合わせください。

*注)E3200試験:既治療進行結腸直腸癌患者を対象としてベバシズマブ・オキサリプラチン・フルオロウラシル・ロイコボリン療法、オキサリプラチン・フルオロウラシル・ロイコボリン療法およびベバシズマブ単独療法の比較を行う第III相臨床試験。

(豆子 訳・林 正樹(血液・腫瘍科) 監修 )

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