若年層における大腸がん罹患率の増加

若年層における大腸がん罹患率の増加

Philip Rosenberg医師とWilliam Anderson医師へのインタビュー

米国がん協会の研究グループが行った最近の研究によると、米国では50歳未満の若者の大腸がん罹患率が増加しているという。

この研究には、この論文の共著者でNCIがん疫学・遺伝学部門のPhilip S. Rosenberg医師とWilliam F. Anderson医師が開発した統計学的手法が用いられた。このインタビューでは、Rosenberg医師とAnderson医師が、解析、知見、および次なるステップについて説明する。

この研究の目的

 Anderson医師:この研究の目的は、米国の若年世代における直腸がん増加という、すでに認識されている傾向をきわめて総合的に解析すること、そして問題を明確にし、その問題を解決するための今後の解析研究で検討すべき疑問点の特定に役立つように解析することでした。

解析の方法

 Rosenberg医師:NCIの監視疫学遠隔成績(SEER)プログラムの最新のがん登録データを用いました。基本的にSEERは特定の地域内のがん症例すべてを計数しており、今回は、米国の全人口の約10%を占めるSEER 9レジストリのデータに注目しました。この地域の人口規模はわかっているので、がんの絶対罹患率を計算することができます。

Anderson医師:大腸がんの全罹患率は、さまざまな年齢群や階層の罹患率の増減が混在したまま平均したものです。どのサブグループの罹患率が増加、減少しているかを明らかにするために、私たちはAPC分析(年齢・時代・コーホート分析) とよばれる手法を用いました。この手法によって、診断時の年齢や誕生年、検診歴、同時に発生しているリスク因子の影響を一つずつ分離することができました。

明らかになったこと

Anderson医師:米国の若年および中年成人に結腸および直腸のがんが増加していることがわかりました。全体的には大腸がんの罹患率は低下していますが、それは、全体の罹患率が高齢群の影響を大きく受けているせいで、若年世代も同様というわけではありません。

増加の歴史的背景

Rosenberg医師:20世紀前半は、大腸がんと診断されるリスクは低下しました。しかし、1950年代生まれの人たちからリスクレベルが上昇し、1800年代後半生まれの人たちのレベルに戻ってしまいました。

Anderson医師:20歳から39歳までの成人では、直腸がんが1970年代から増加しはじめました。結腸がんは1980年代中頃から増加し始めたのですが、直腸がんの方が、長期間増加し続けており、速度も速いのです。1950年ごろに生まれた人たちと比べると、1990年生まれの人たちは、結腸がんのリスクが2倍、直腸がんのリスクは4倍です。

罹患率の増加の理由

 Rosenberg医師:若年層の罹患率がなぜ増加しているのか、まったくわかりません。直腸がんの方が結腸がんよりも罹患率の増加が速い理由もわかりません。しかし、これはこうした研究の性質なのです。このような研究は記述的研究とよばれ、集団におけるパターンを観察し、今後の研究の手がかりを得ます。

記述的研究の限界 

Anderson医師:記述的研究は集団のパターンを探します。個人についての情報は比較的限定されます。たとえば、大腸がんのリスク因子をもっている可能性がある個人を特定することはできません。

Rosenberg医師:記述的研究では、答えを得るよりも疑問が増えることの方が多いのです。しかしその疑問は、病因学的な疑問を解決するための追跡研究につながります。

今後に期待する追跡研究

 Anderson医師:今回の研究対象となったのは米国民の10%でした。この集団の中で特定のサブグループにおけるリスク変化を調べたらおもしろいでしょう。民族差や地域差を調べれば、増加の原因の手がかりを解明し、予防に重点をおくべき研究領域を挙げることができるかもしれません。

Rosenberg医師:そうですね、アフリカ系アメリカ人など、他の人種や民族と比べて平均して大腸がんのリスクが増加している人種グループに注目する研究をすることは重要でしょう。

今回の知見の予防や検診への影響

Anderson医師:今回得られた知見から、疑問がたくさん生まれています。高リスク群の予防や検診のための適切な戦略を明らかにするために、さらに研究が必要です。

 Rosenberg医師:しかし、大腸がんへの意識を高めたり、気になる症状がある人に医師の診察を勧めたりすることによって、この疾患の悪影響を減らす方向に進むことができます。

Anderson医師:現在の検診ガイドラインを周知させる必要もあります。50歳未満の若年世代は検診推奨年齢に近く、検診から得られるメリットは彼らの親世代と同じくらいあるでしょう。

この研究から最も伝えたいこと

 Rosenberg医師:この研究は、最新のSEERのデータを用いて、すでに報告されている傾向を確認したものでした。罹患率増加の理由はまだわかりません。

Anderson医師:この研究自体は、検診年齢を変更すべきだとはいっていません。しかしこの研究結果は、検診調査を行う者に今こそ研究をする時だと一石を投じています。

翻訳担当者 粟木 瑞穂

監修 東海林洋子(薬学博士)

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原文掲載日 

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