FDA承認により、一部の進行大腸がんの初回治療が変わる可能性

FDA承認により、一部の進行大腸がんの初回治療が変わる可能性

米国食品医薬品局(FDA)は、一部の進行大腸がん患者に対する初回治療として、2種類の免疫療法薬の併用を承認した。この承認は、腫瘍がMSI-HまたはdMMRに分類される患者に対するニボルマブ(販売名:オプジーボ)とイピリムマブ(販売名:ヤーボイ)の使用に対するものである。

進行大腸がん患者の約5%は、MSI-H(高頻度マイクロサテライト不安定性)またはdMMR(ミスマッチ修復機能欠損)の腫瘍であり、つまり細胞分裂中に起こりうる特定の種類のDNA損傷を適切に修復することができない。今回の承認により、この併用療法はMSI-HまたはdMMR進行大腸がん患者に対する優先的な初回(一次)治療となるはずだと複数の大腸がん専門家は述べる。

この承認は、参加者全員がMSI-HまたはdMMR腫瘍を有する進行大腸がん患者を対象とした大規模臨床試験CheckMate-8HWの最新の知見に基づいている。ニボルマブとイピリムマブの併用療法を受けた試験参加患者は、ニボルマブ単独療法を受けた患者と比較して、がんが悪化することなく生存する期間(無増悪生存期間)が大幅に延長した。

治療開始から3年後、併用療法群の患者の約68%ががんが悪化することなく生存していたのに対し、ニボルマブ単独療法群では51%であった。

ニボルマブは、MSI-HまたはdMMR腫瘍の患者に対する単独の初回治療としてすでに承認されているが、「イピリムマブとの併用にはメリットがあることが明らかになりました」と、Carmen Allegra医師(NCIがん治療・診断部門、消化器治療学特別顧問)は言う。

治癒の可能性、副作用の増加

がん細胞は常に細胞分裂と増殖を続けている。MSI-HまたはdMMR腫瘍のがん細胞はDNA修復欠陥があり、異常なタンパク質を産生する傾向があり、これらの異常なタンパク質は免疫系による認識・攻撃を受けやすい。

しかし、腫瘍にはこうした攻撃から身を守る防御方法がある。免疫チェックポイント阻害薬と呼ばれるニボルマブやイピリムマブなどの薬剤は、免疫細胞がこの防御を突破できるようにする。

免疫チェックポイント阻害薬であるペムブロリズマブ(キイトルーダ)も、MSI-HまたはdMMRの進行大腸がん患者に対する初回治療薬として承認済みである。しかし、いくつかの研究で、ニボルマブまたはペムブロリズマブを単独で使用した場合、長期的な腫瘍反応を示す患者は半数に満たないことが示されている。

上記薬剤のメーカーであるBristol Myers Squibb社が資金提供したCheckMate-8HWでは、800人以上の参加者を3つの治療群、すなわち、ニボルマブ+イピリムマブ併用群、ニボルマブ単独群、化学療法群(場合によっては分子標的療法との併用)のいずれかに無作為に割り付けた。

試験の初期結果では、免疫療法薬併用群の患者は化学療法群の患者(分子標的療法の併用の有無に関わらず)と比べて無増悪生存期間が良好であることが示された。

しかし、腫瘍専門医たちは、ニボルマブとイピリムマブの併用療法が、ニボルマブ単独療法と比較して、重篤な副作用に関して大きな違いがあるかどうかを含めて、どのような結果を示すかを待ち望んでいた。

ニボルマブ+イピリムマブ併用療法群に無作為に割り付けられた参加者は、4カ月間両剤を投与された後、がんが進行し始めるまでニボルマブのみ(初回投与量よりも高用量)を投与された。ニボルマブ単独療法群に割り付けられた参加者には、低用量の初期投与量でニボルマブを4カ月間投与した後、高用量で投与した。

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのScott Kopetz医学博士とS. Daniel Haldar医師は、最新結果に付随する論説の中で、両免疫療法薬の投与を受けた患者の無増悪生存期間の改善は目覚ましく、臨床的に重要であると記している。

試験に参加した多くの患者にとって、がんの進行が抑えられている期間の長さは、「治癒の可能性を意味する」ものである。

併用療法群の患者の全生存期間が大幅に改善されるかどうかを研究者が判断するには、まだ十分な時間が経過していない。しかし、無増悪生存期間の結果から考えて、治癒となる可能性はあると、Christopher Lieu医師は言う。コロラド大学がんセンターで大腸がん治療を専門とする同医師は、本試験には関与していない。

Lieu医師は、「より効果的な治療レジメンが一次治療で使われた場合、全生存期間の改善が期待できます」と述べる。

併用療法を受けた患者では、ニボルマブ単独療法を受けた患者と比較して、重篤な副作用がより多く発生し(22%対14%)、副作用のために治療を中止した患者の割合も高かった(14%対6%)。また、治療関連死亡は併用療法群で2例、ニボルマブ単独療法群で1例あった。

「だからこそ、併用療法のリスクと有益性について患者と十分に話し合うことが非常に重要なのです」と、Lieu医師は言う。

MSI-H/dMMRを調べる適切な腫瘍検査の必要性

Kopetz医師とHaldar医師は、MSI-H/dMMRの状態を調べるための適切な腫瘍検査の重要性も強調している。

CheckMate-8HW試験では、地元の病院で診断時に実施された検査結果に基づいて参加者が登録された。これらの結果は、単一の「中央検査室」で専門家によって確認が行われた。

参加者の地元の病院で実施された検査結果はしばしば不正確であったため、試験に登録されるべきではなかった患者が登録されていた。(FDA承認の根拠となった試験結果には、中央検査室で検査結果が確認された患者のみが含まれていた。)

Kopetz医師とHaldar医師は、臨床医に対し、MSI-H/dMMR検査に関する最新の国際ガイドラインに従うよう勧める。両医師の記述によれば、ガイドラインは、「2つの検査方法を用い、不確実な場合には専門の診断センターに紹介する」ことを求めている。

MSI-H/dMMR腫瘍の患者に対する治療の改善は喜ばしいことだと、Lieu医師は述べる。次の重要なステップは、腫瘍にこれらの欠陥がない多くの患者に対して、免疫療法をより効果的にする方法を見つけることである。

その点については、「まだやるべきことがたくさんあります」。

  • 監修 中村能章(消化管悪性腫瘍/国立がん研究センター東病院)
  • 記事担当者 山田登志子
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  • 原文掲載日 2025/05/02

この記事は、米国国立がん研究所 (NCI)の了承を得て翻訳を掲載していますが、NCIが翻訳の内容を保証するものではありません。NCI はいかなる翻訳をもサポートしていません。“The National Cancer Institute (NCI) does not endorse this translation and no endorsement by NCI should be inferred.”】

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