コレステロール低下薬スタチンにより大腸癌患者の生存率が改善する可能性

コレステロール低下薬スタチンにより大腸癌患者の生存率が改善する可能性

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スタチンは広く使用されているコレステロール低下薬だが、英国の新しい研究によると、大腸癌患者の生存率を改善するようだ。この研究により、全体として、アトルバスタチン(リピトール)やシンバスタチン(Zocor、※日本での商品名:リポバス)などのスタチンを服用している大腸癌患者は、服用していない大腸癌患者と比べて、大腸癌による死亡リスクが29%低いことが明らかになった[1]。

アメリカ癌協会による推計値では、2013年に米国で新たに結腸癌と診断されたのは10万2,000症例、直腸癌は4万症例であった[2]。これらの癌により、あわせて5万人を超える患者が死亡した。しかしながら、米国の大腸癌に関しては良いニュースがある。過去15年間、大腸癌に関連する死亡率は低下しており、また、健診、予防、治療は進歩し続けている。

Journal of Clinical Oncology誌の電子版で発表された臨床試験では、新たに大腸癌と診断された7,600人超の患者に関する情報が評価された。研究者らは、1998年から2009年までのデータから、対象となる患者について平均5年分の病歴を評価した。

研究者らにより、スタチンの使用が1年を超える患者では、大腸癌による死亡リスクが36%低下したことが明らかになった。また、スタチン使用が1年に満たない患者では、同リスクは21%低下した。全体として、スタチン使用により、大腸癌による死亡リスクは29%低下した。

研究者らはまた、本研究のスタチン使用患者において、原因を問わない死亡のリスクが25%低下したことも明らかにした。しかしながら、本研究でみられた関連性は、因果関係を証明するものではない。

他のいくつかの研究では、スタチンを服用している大腸癌患者において生存率のわずかな向上が認められているが、これらの研究は小規模であった。

スタチンは、コレステロール値を改善することにより、心臓につながる動脈におけるプラークの形成を遅延させ得る。スタチンがどのようにして大腸癌の死亡率を低下させ得るのか、正確にはわかっていない。これらは予備的な研究結果であり、他の臨床試験にて評価、確認される必要があるということを患者は理解しなければならない。

それまでの間は、スタチンを使用している大腸癌患者は、スタチンが大腸癌に負の影響を与えていないことに安心してよい。スタチンを服用していない患者は、スタチンのリスクと利益について担当の医師に相談するのも良いだろう。

参考文献:

1. Cardwell CR, Hicks BM, Hughes C, Murray L. Statin Use After Colorectal Cancer Diagnosis and Survival: A Population-Based Cohort Study. J Clin Oncol. 2014 Aug 4. pii: JCO.2013.54.4569. [Epub ahead of print]
2. Cancer Facts and Figures http://www.cancer.org/acs/groups/content/@epidemiologysurveilance/documents/document/acspc-036845.pdf Accessed March 2014.


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翻訳担当者 下川智美

監修 北村裕太(内科/東京医科歯科大学医学部付属病院)

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