KRAS G12C変異大腸がんにアダグラシブ+セツキシマブが臨床的有用性を示す

KRAS G12C阻害薬アダグラシブ [adagrasib](販売名:Krazati)と抗上皮成長因子受容体(EGFR)抗体セツキシマブ(販売名:アービタックス)の併用療法は、遠隔転移があり治療歴の多いKRAS G12C遺伝子変異大腸がん患者集団において臨床的有効性を示し、有望な生存転帰を示した。この第1・2相KRYSTAL-1試験の結果が、4月5日から10日まで開催された米国癌学会(AACR)2024年年次総会で発表された。

本研究は同時にCancer Discovery誌に掲載された。

KRAS G12C変異は大腸がんの約4%にみられ、予後不良と関連している。アダグラシブなどのKRAS G12Cを標的とする薬剤が近年登場しているが、現在、米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けているのは非小細胞肺がん治療用のみである。

「治療歴のあるKRAS G12C変異大腸がん患者にとって、治療選択肢は限られてきます」と、Scott Kopetz医師(テキサス大学MDアンダーソンがんセンター、消化器腫瘍内科学教授、トランスレーショナル・インテグレーション担当副代表補佐)は述べた。「KRAS G12C変異大腸がんにおけるアダグラシブの単剤での活性は有望ではありますが、耐性を弱める方法を継続して探すことが重要です」。

前臨床試験では、がん細胞はEGFR活性を亢進することによってKRAS G12C阻害に対する耐性を獲得することが示されているとKopetz氏は説明する。EGFRは、KRASと同じ分子経路を通じて腫瘍の増殖を促進する。

「KRAS G12C阻害薬とEGFR阻害薬を組み合わせた前臨床試験で、獲得耐性を緩和できることがわかりました」とKopetz氏は言う。「KRYSTAL-1試験では、これを患者において評価しようとしました」。

KRYSTAL-1は、KRAS G12C変異を有する進行固形がん患者を対象にアダグラシブ単独または他の抗がん剤との併用の安全性と有効性を検証する多施設共同第1・2相試験である。Kopetz氏らは、本試験のいずれかの相に登録された、遠隔転移のあるKRAS G12C変異大腸がん患者94人を対象に、アダグラシブとEGFR阻害薬セツキシマブの併用を検討した。

客観的奏効率(主要評価項目)は34%、病勢制御率は85.1%で、奏効期間は中央値で5.8カ月であった。無増悪生存期間中央値は6.9カ月、全生存期間中央値は15.9カ月であった。

本試験は、アダグラシブ+セツキシマブ併用療法を受けた患者の転帰をアダグラシブ単剤療法を受けた患者の転帰と比較するようにはデザインされていないが、Kopetz氏によれば、併用療法は過去のデータと比較して良好な成績であった。例えば、アダグラシブ単剤療法の奏効率は同様の患者集団において20%前後であったのに対し、今回観察された奏効率は34%であったとのことである。

併用療法の忍容性は良好であり、グレード3以上の治療関連有害事象は27.7%の患者に認められたとKopetz氏は指摘した。有害事象によりアダグラシブ用量が減量された患者は29.8%であった。

Kopetz氏によると、この併用療法は現在、この適応でFDAの優先審査を受けている。Kopetz氏らは、遠隔転移のあるKRAS G12C変異大腸がんの2次治療としてアダグラシブ+セツキシマブ併用療法を標準治療の化学療法と比較する第3相KRYSTAL-10試験において、この治療法の有効性をさらに検討している。

「アダグラシブ+セツキシマブ併用療法は、治療歴のあるKRAS G12C変異大腸がん患者の新たな標準治療となる可能性があります」とKopetz氏は述べた。「本研究は、KRAS G12C阻害薬による進歩を足がかりとして、大腸がん患者の治療選択肢を絞り込み、展開するために進められている研究の重要性を強調するものです」。

本試験の限界は、単群、非盲検デザインであることである。

  • 監訳 中村能章(消化管悪性腫瘍/国立がん研究センター東病院)
  • 翻訳担当者 山田登志子
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  • 原文掲載日 2024/04/08

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