アービタックスは大腸癌肝転移に対する化学療法の奏効率を改善する

キャンサーコンサルタンツ
2009年11月

大腸癌肝転移患者において、FOLFOX6またはFOLFIRIにアービタックス(セツキシマブ)を追加投与すると奏効率が改善し、外科的切除がさらに効果的となることが、ドイツとオーストリアの研究者らにより報告された。本試験の詳細は、Lancet Oncology誌の2009年11月25日付電子速報版に掲載された[1]。

大腸癌から肝転移した患者は、手術で治療が可能である。患者のおよそ25%が全腫瘍の完全切除から5年間生存しており、一部の患者は10年以上生存することもある。しかし、ほとんどの患者において癌はさらに進行し、手術の適応がなくなる、もしくは手術で治癒または緩和できなくなる。ネオアジュバント(術前に行う化学療法あるいは放射線照射)もしくはアジュバント療法(術後に行う化学療法など)によりある程度は、患者らに手術が施行できるようになる。

アービタックスは、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)の細胞外ドメインと結合するキメラ型モノクローナル抗体で、現在大腸癌の治療に承認されている。アービタックスの単独投与は、KRAS遺伝子変異を有していない局所進行大腸癌あるいは転移大腸癌患者の治療に有効であることが認められている。大腸癌患者の30〜40%がKRAS遺伝子変異を有していると推定されており、そのためこのような患者は、結局のところEGFR標的治療の対象外となる。アービタックスをFOLFOX6(エロキサチン [オキサリプラチン]+フルオロウラシル+フォリン酸)またはFOLFIRI(カンプト [イリノテカン]+フルオロウラシル+フォリン酸)に追加投与することで、転移大腸癌の治療に効果が認められている。

本試験には、切除不能な大腸癌肝転移患者114人が参加した。この患者らを、アービタックスを追加したFOLFOX6もしくはFOLFIRIのどちらかに無作為に割り当てた。奏効率は、アービタックスとFOLFOX6の投与群に割り付けた55人で68%、アービタックスとFOLFIRIの投与群に割り付けた53人で57%であった。腫瘍全てを完全に外科的に切除できたケースは、アービタックスとFOLFOX6による治療を受けた患者の38%、アービタックスとFOLFIRIによる治療を受けた患者の30%に上った。効果はKRAS遺伝子変異を有しない患者の70%、KRAS遺伝子変異を有する患者では41%に認められた。アービタックスと化学療法の併用治療により、切除可能率が推定基準値と比べ倍増すると推測された。

コメント:「セツキシマブ(アービタックス)を化学療法と併用すると、過去対照値より高い奏効率が得られ、切除可能性が有意に上昇することとなる。」と、著者らは結論づけている。

参考文献:
[1] Folprecht G, Gruenberger T, Bechstein WO, et al. Tumour response and secondary resectability of colorectal liver metastases following neoadjuvant chemotherapy with cetuximab : the CELIM randomised phase 2 trial. Lancet Oncology [early online publication]. November 25, 2009.


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翻訳担当者 山下 裕子

監修 太田 耕士(精神科)

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