ビタミンB6の摂取量が少ないと結腸直腸癌のリスクが高まる

キャンサーコンサルタンツ
2010年3月

スウェーデンの研究者らが、「メタ解析を行った結果、ビタミンB6摂取および血中PLP(リン酸ピリドキサール、ビタミンB6の活性型)濃度と結腸直腸癌リスクとの間に、負の相関が認められた」と報告した。本研究の詳細は、2010年3月17日発行のJournal of the American Medical Association誌に掲載された[1]。

ビタミンB6は、水溶性のビタミンである。リン酸ピリドキサールはその活性型で、アミノ酸代謝における補助因子(補酵素)である。グリコーゲンからのグルコース放出を調節する酵素反応、神経伝達物質の合成、ヘモグロビン合成、遺伝子発現にはリン酸ピリドキサールが必要不可欠である。ビタミンB6は肝臓で代謝される。

ビタミンB6は肉、全粒穀物、野菜、ナッツ類などの食物に多く含まれている。調理することにより、ビタミンB6は最大50%破壊される。B6欠乏による典型的な疾病は皮膚疾患で、潰瘍性皮膚炎、口唇炎、結膜炎、中枢神経症状などがある。B6の絶対的欠乏は稀で、その多くは他のBビタミン群の欠乏と関連して認められる。欠乏症は、高齢者やアルコール依存患者に最も顕著である。欠乏症の指標として最も適しているのは、血漿PLP濃度である。

本研究では、結腸直腸癌発症のリスクに対するビタミンB6の摂取とPLP濃度の効果について評価した9つの前向き試験を調査した。ビタミンB6の摂取に研究により著しいばらつきが認められたが、PLP濃度の研究ではばらつきは認められなかった。ビタミンB6を最も多く摂取した群では、最も少なかった群と比較して結腸直腸癌発症のリスクが10%低かったことが報告された。PLP濃度が最も高い群では、最も低い群と比較して結腸直腸癌の発生率が48%減少したことが観察された。「血中PLP濃度が100pmol/ml上昇するごとに、結腸直腸癌のリスクは49%減少した(およそ2SDs)(RR, 0.51; 95% CI, 0.38-0.69)。」と述べられている。

コメント:本研究は刺激的なもので、果物や野菜を多く取る「健康的な」食事を継続すれば、PLP濃度が最大となるだろうと示唆している。ビタミン補給に関する研究(ビタミンDを除く)が癌予防に対し否定的であるため、平均的な人々に補給が必要であるかどうかは疑問である。

参考文献:[1] Larsson SC, Orsini N, and Wolk A. Vitamin B6 and risk of colorectal cancer. Journal of the American Medical Association. 2010;303:1077-1083.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 山下 裕子

監修 林 正樹(血液・腫瘍科)

原文を見る

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

大腸がんに関連する記事

TP53変異陽性がんにトリフルリジン・チピラシルとタラゾパリブの併用は有望の画像

TP53変異陽性がんにトリフルリジン・チピラシルとタラゾパリブの併用は有望

研究者らは、TP53遺伝子に変異があるがん細胞を選択的に殺す薬剤組み合わせを特定した。その遺伝子変異は、大半の大腸がんや膵臓がんなど、あらゆるがん種の半数以上にみられる。

NCIが一部資...
大腸がんの増殖にFusobacterium nucleatum亜型が最大50%関連の画像

大腸がんの増殖にFusobacterium nucleatum亜型が最大50%関連

フレッドハッチンソンがん研究センターNature誌に発表された研究によると、Fusobacterium nucleatumの亜型がヒトの大腸がん増殖の根底にあり、スクリーニングや治療に...
大腸がんに術後化学療法が必要かをctDNA検査で予測できる可能性の画像

大腸がんに術後化学療法が必要かをctDNA検査で予測できる可能性

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ転移が始まった大腸がんに対する手術の後、多くの人はそのまま化学療法を受ける。この術後(アジュバント)治療の背景にある考え方は、がんが体内の他...
認識されていない大腸がんの危険因子:アルコール、高脂肪加工食品、運動不足の画像

認識されていない大腸がんの危険因子:アルコール、高脂肪加工食品、運動不足

オハイオ州立大学総合がんセンター仕事中にあまり身体を動かさず肥満率が上昇している現代アメリカでは、何を飲食し、どのくらい身体を動かすかによって大腸がん(30〜50代の罹患者が増...