トリフルリジン-チピラシルへのベバシズマブ上乗せで進行性大腸がんの生存率が向上

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ

新しい治療法が、一部の進行性大腸がんの一部の人々の生存率を改善するのに役立つ可能性があるという結果が国際的な臨床試験からわかった。

新しいレジメンは、ベバシズマブ(アバスチン)とトリフルリジンおよびチピラシル(ロンサーフ)の併用療法から成り立っており、いずれの薬剤も、一部の大腸がん患者の治療法として、食品医薬品局(FDA)に承認されていた。

SUNLIGHTと呼ばれるこの試験には、2つ以上の治療レジメンで悪化した進行性大腸がん患者約500人が参加した。参加者は、トリフルリジン-チピラシルの単独療法またはベバシズマブとの併用療法に無作為に割り付けられた。

中央値14カ月の追跡調査後、併用療法群の生存期間中央値は10.8カ月間であったのに対し、トリフルリジン-チピラシル単独療法群では7.5カ月間であった。

がんが悪化せずに生存する期間(無増悪生存期間)も、併用療法により数カ月延長した(中央値5.6カ月対2.4カ月)。

本試験の臨床試験責任医師であるJosep Tabernero医学博士(スペイン・バルセロナのVall d’Hebron大学病院)らは、5月4日にNew England Journal of Medicine誌でこの知見を報告した。

Tabernero氏は今年の初め、米国臨床腫瘍学会(ASCO)消化器がんシンポジウムでこの研究の予備結果を発表した際に、この結果から、治療歴のある転移性大腸がん患者にとって「トリフルリジン・チピラシルとベバシズマブの併用が有効な治療選択肢であることが確認できました」と述べた。

SUNLIGHT試験は、治療抵抗性の転移性大腸がん患者を対象として、既存の治療法と比較して全生存期間の延長を示した最初の第3相試験であると同氏は付け加えた。

「この試験は、他の治療法に奏効しなくなった転移性大腸がん患者のケアに新しい基準を設けるものです」Carmen Allegra医師は述べた。米国国立がん研究所(NCI)のCancer Therapy Evaluation Programに所属する同医師は、本試験には関与していない。

この新たな知見は、これらの患者にとって、トリフルリジン-チピラシルよりも併用療法がより有益であることを示しているとAllegra医師は付け加えた。

トリフルリジン-チピラシルを製造する大鵬オンコロジー社が本試験に資金を提供した。同社によると、治療歴のある転移性大腸がんに対するトリフルリジン-チピラシルとベバシズマブの併用の申請をFDAが審査中である。

 SUNLIGHT試験の併用療法

いくつかの小規模な試験から、トリフルリジン-チピラシルへのベバシズマブ追加は、治療歴のある転移性大腸がん患者に有益である可能性が示唆されていた。Tabernero氏らは、これらの結果を確認するためにSUNLIGHT試験を開発した。

トリフルリジン‐チピラシルとベバシズマブは投与方法が異なり(錠剤の経口投与と静脈内投与)、異なるメカニズムでがん細胞を攻撃する。

トリフルリジンはDNAに損傷を与え、がん細胞を死滅させる可能性があり、チピラシルはトリフルリジンを分解する酵素を阻害することで、トリフルリジンの血中濃度を維持する。

ベバシズマブは、VEGFと呼ばれるタンパク質の活性を阻害する。これにより、血管新生として知られる新たな血管の成長を阻害し、腫瘍から酸素と栄養を奪う。

併用療法はベバシズマブによる治療歴がある患者に利益をもたらす

本試験の参加者は、フルオロピリミジン、イリノテカン、オキサリプラチン、ベバシズマブ、もしくはVEGFを阻害する別の薬剤、または腫瘍の成長に関与する別のタンパク質であるEGFRを阻害する薬剤などによる治療歴があった。

両群の試験参加者の約70%が、KRASなどのRAS遺伝子に変異のある腫瘍を有していた。これらの変異は、進行性大腸がん患者の約半数にみられ、患者の治療選択肢を制限する可能性がある。

しかし、SUNLIGHT試験では、腫瘍のRAS変異の有無にかかわらず、併用療法は有効であるようであった。

ベバシズマブによる治療歴のある試験参加者でも、トリフルリジン-チピラシルへのベバシズマブ追加に有益性がみられた。この知見は、これらの薬剤を含むレジメンでがんが進行した後も、血管新生阻害剤の使用を継続する役割を支持するエビデンスになると研究者らは記述している。

両群の患者に最もよくみられた副作用は、好中球減少症(白血球の一種である好中球が少ない状態)、悪心、貧血(赤血球数の減少)であった。

好中球減少症と高血圧は併用療法群でより多くみられた。高血圧は、ベバシズマブを含む薬剤クラスと関連する。

「併用療法には他の副作用もありましたが、ほとんどの患者はこの治療に対して十分な忍容性があったと考えられます」とAllegra医師は述べた。

また、併用療法の使用については、「付随する副作用や追加的な(経済的な)コストを考慮し、患者ごとに検討する必要があります」と付け加えた。

Tabernero氏らは、このレジメンが一部の進行性大腸がん患者にもたらす全生存期間のベネフィットを実証して重要な疑問に答えたと、Oladapo Yeku医学博士とDan L. Longo医師(マサチューセッツ総合病院)は付随論説で述べている。この併用療法の第2相試験で示された無増悪生存期間の改善は、「必ずしも全生存期間への影響と一致しない」とも記述している。

また、この第3相試験は、「この患者集団での生存期間において、この併用療法の意義を厳密に検証したものである」と記述されている。

  • 監訳 中村能章(消化管悪性腫瘍/国立がん研究センター東病院)
  • 翻訳担当者 吉田加奈子
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  • 原文掲載日 2023年5月24日

【この翻訳は、米国国立がん研究所 (NCI) が正式に認めたものではなく、またNCI は翻訳に対していかなる承認も行いません。“The National Cancer Institute (NCI) does not endorse this translation and no endorsement by NCI should be inferred.”】

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