リンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸癌)の小腸癌リスクを評価した試験
キャンサーコンサルタンツ
2007年9月
リンチ症候群患者が小腸癌を発症する生涯リスクはほぼ4%であるとオランダの研究者らが報告している。この試験の詳細は2007年9月号のGut 誌に掲載された。
遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)としても知られるリンチ症候群は、DNAミスマッチ修復に関与する遺伝子の遺伝的変異により起こる。[1] HNPCCは常染色体優性疾患で、結腸直腸癌、および子宮内膜、小腸、卵巣、肝胆道系、腎臓、尿管癌の若年齢での発症を特徴とする。HNPCCに関わる遺伝子が発見されたことで保因者の特定が容易になり、スクリーニングや予防的治療が推奨されるようになった。
小腸は消化管の一部で、胃と大腸の間にある。一般集団では小腸に癌が発生することは比較的まれである。アメリカでは2007年に5,640人が新たに発症すると推定されている。[2]
オランダの研究者らは、リンチ症候群患者が小腸癌に罹患する生涯リスクを評価するために、ミスマッチ修復遺伝子変異の保因者1,496人を対象に試験を実施した。[3] 参加者は189のさまざまな家系に属していた。
28人に小腸癌が発見された。小腸癌診断時の年齢は23~69歳で、その中央値は52歳であった。
小腸癌を発症する生涯リスクは4.2%であった。男女間でリスクに差はなく、大腸癌の病歴や小腸癌の家族歴の有無による有意差も認められなかった。
小腸癌が発見された28人の患者のうち16人で受診時の主訴について情報が得られた。このうち9人は説明のつかない貧血を訴えていた。6人が小腸閉塞、および5人が腹痛を訴えた。黄疸、消化管出血、体重減少を訴えた患者がそれぞれ一人ずつであった。
リンチ症候群患者のほぼ25人に1人の割合で、生涯のうちに小腸癌を発症することがこの試験から示唆される。研究者らはダブルバルーン消化管内視鏡のような小腸癌に対する侵襲的なスクリーニング検査を定期的に実施することを正当化するには、小腸癌の生涯リスクが低すぎると結論付けている。
研究者らは、リンチ症候群患者が説明のつかない腹部の症状を訴えたり、説明のつかない鉄欠乏性貧血を呈したりした場合は小腸癌を考慮に入れることが必要であるとしている。
コメント:
この論文はリンチ症候群患者を治療する医師にとって有用である。
参考文献:
[1] National Cancer Institute. Genetics of Colorectal Cancer (PDQR). Health Professional Version.
[2] American Cancer Society. Cancer Fact & Figures 2007. Available at: http://www.cancer.org/docroot/stt/stt_0.asp (Accessed September 19, 2007).
[3] Kate GL, Kleibeuker JH, Nagengast FM et al. Is surveillance of the small bowel indicated for Lynch Syndrome families. Gut. 2007;56:1198-1201.
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参考:大阪中央病院 遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)・家族性腺腫症(FAP)
がん情報サービス「遺伝性腫瘍・家族性腫瘍」
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