ビタミンD値が高いと大腸癌において生存に良い結果をもたらす

キャンサーコンサルタンツ
2008年7月

ダナファーバーがん研究所の報告によると、診断前に血中ビタミンDの値が高い結腸直腸癌患者は低い値の患者に比べ生存期間が延長した。これらの結果は2008年6月20日号のJournal of Clinical Oncology誌に掲載された。


ビタミンDは栄養補助食品、強化ミルクやシリアルのような食品、ある種の魚(サケ、サバ及びマグロなど)及び太陽の光を浴びることで得られる脂溶性ビタミンである。ビタミンDはある種の癌を予防する役割があると考えられる。

以前に行われた試験結果によると、血中ビタミンDの値が高い人では結腸直腸癌を発症するリスクが減少することが示された。しかし既に結腸直腸癌と診断された患者の治療成績についてはビタミンDの効果は不明である。結腸直腸癌は癌による死因の第2位であるので、治療成績における食事や運動習慣の効果を研究することが広範囲の調査のもととなった。

最近の試験では結腸直腸癌の治療成績における血中ビタミンD値とその効果に関連性があるかどうかを調査した。試験は1991年から2002年の間に結腸直腸癌と診断されNurse’ Health StudyとHealth Professionals Follow-Up Study(HPFS)に参加した304人を含んだ。血液サンプルは試験開始時に結腸直腸癌の診断に先立って採取された。

● 結腸直腸癌の診断以前に血中ビタミンD値が高いことと全生存率の有意な増加とは関連性を有した

● 結腸直腸癌の診断以前に血中ビタミンD値が高い患者では結腸直腸癌に起因する死亡も減少した。
研究者らは「結腸直腸癌と癌の進行に関して、ビタミンDの経路とその影響をさらに研究する価値は十分にある」と結論付けた。

コメント:
論争の一つは摂取するビタミンDの1日あたりの推奨用量を明確にすることである。論説の著者らは50歳より若い人では200 IU、50歳から70歳の人は400 IU、71歳以上の場合600 IUを提唱した。2,000 IU以上の投与は安全ではないと考えられているが、他の研究者らは結腸直腸癌の予防に1日あたり1-2,000 IUを推奨した。ビタミンDの投与は北部地域に住む患者において、はるかに必要性が高い。総合的に判断して、北部地方に住む高齢者は1日あたり少なくとも1,000 IUの摂取が妥当と思われる。

参考文献:
Ng K, Meyerhardt J, Wu K, et al. Circulating 25-hydroxyvitamin D levels and survival in patients with colorectal cancer. Journal of Clinical Oncology. 2008;26:2984-2991.


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翻訳担当者 内村美里人

監修 真庭理香(薬学)

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