タモキシフェン長期使用で悪性度が高く難治性の二次乳癌リスクが上昇

ER陰性二次癌リスクの4倍以上の上昇が研究で明らかになる

フレッドハッチンソンがん研究センター

乳癌サバイバーのタモキシフェン長期使用は、最も頻度は高いが悪性度の低い二次乳癌発症のリスクを低下させるが、最初の腫瘍とは反対側、すなわち対側乳房で悪性度の高い治療の難しい癌発症のリスクを4倍以上上昇させる。フレッドハッチンソンがん研究センターのLi医学博士と共同研究者らによるこれらの知見が、Cancer Research誌8月25日電子版に発表された。

タモキシフェンのような薬によるホルモン療法は、乳癌による死亡リスクを低下させることが示されているため、その最も一般的な治療法の1つではあるが、本研究が示唆するようにリスクを有している。 抗エストロゲン薬タモキシフェン投与を受けた患者と受けなかった患者で乳癌患者を比較すると、タモキシフェンによりエストロゲン受容体(ER)陽性二次乳癌(抗エストロゲン療法に反応する、頻度の高いタイプ)は60%低下したが、ER陰性二次癌リスクが440%上昇したことも明らかになった。

「ER陰性腫瘍の予後が悪く、治療が難しいことを考えると、この結果は懸念されます」と、ハッチンソンセンターの公衆健康科学部門メンバーであるLi氏は述べた。 Li氏らは2001年に、タモキシフェンの長期使用とER陰性二次癌のリスク増加との関連性を初めて示唆した予備研究を発表したが、今回の知見はこれを裏付けるものである。「先行研究には多くの限界がありました。たとえば、女性が受けたタモキシフェン治療の期間については情報がなかったのです」とLi氏は述べた。

「今回の研究はより大規模で、はるかに詳細なデータに基づいており、乳癌サバイバーへのタモキシフェン使用が、異なるタイプの二次乳癌のリスク上昇に影響するかどうかを判断するため、特に計画された最初の研究なのです。」 この最新の研究ではSeattle-Puget Sound地域で、初期診断時にER陽性乳癌であった40~79才の癌サバイバー1103人のタモキシフェン使用歴が調査された。このうち369人の女性で二次乳癌が発症した。

具体的にいうと、研究ではほとんど全員の女性がタモキシフェン使用による術後ホルモン療法を受けていた。タモキシフェン使用の詳細な情報は電話インタビューおよび診療記録の再調査により確認された。

「本研究では、長期タモキシフェン療法とER陰性二次癌のリスク上昇との強い関連性が確認されましたが、これは乳癌サバイバーが二次癌予防のためのホルモン療法を中止しなければならないと示唆するものではありません」と、Li氏は述べた。

「タモキシフェンのような抗エストロゲン薬には重要な臨床的有益性があり、乳癌の生存率を著しい改善へ導いたことは明らかです。しかし、これらの治療法にはリスクがあり、ER陰性二次癌はそのリスクの1つでしょう。依然としてホルモン療法の有益性は確立されており、医師はこの治療から恩恵を受けられる乳癌患者のために、引き続きホルモン治療を推奨しなければなりません」と、Li氏は述べた。

この試験はNational Cancer Instituteにより支援された。

※サイト関連記事:PubMed論文抄録「乳癌の補助ホルモン療法と対側乳癌の受容体特異的な亜型のリスク

翻訳担当者 下村郁子

監修 金田澄子(薬学)監修 

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