FDAがESR1遺伝子変異陽性の進行/転移乳がんにエラセストラントを承認

FDAがESR1遺伝子変異陽性の進行/転移乳がんにエラセストラントを承認

米国食品医薬品局(FDA)

2023年1月27日、米国食品医薬品局 (FDA) は、1ライン以上のホルモン療法後に疾患が進行したER陽性HER2陰性でESR1変異がある進行または転移乳がんを有する閉経後女性または成人男性に対して、エラセストラント [elacestrant] (販売名:Orserdu、Stemline Therapeutics社)を承認した。

また、FDAはGuardant360 CDxがん遺伝子パネルを、エラセストラントによる治療の対象となる乳がん患者を特定するためのコンパニオン診断検査として承認した。

有効性はEMERALD試験(NCT03778931)で評価された。EMERALD試験は、ER陽性HER2陰性の進行または転移乳がんを有する閉経後女性および成人男性の478人(うち228人がESR1変異を有する)を登録したランダム化非盲検実薬対照多施設共同試験である。本試験では、CDK4/6阻害薬による治療1ラインを含む、ホルモン療法による1~2ラインの治療の後に病勢進行が認められた患者が対象である。適格患者は、進行または転移乳がんに対する前治療として化学療法を最大1ライン受けていてもよい。患者は、エラセストラント345 mgを1日1回の経口投与群(n=239)、または医師が選択したホルモン内分泌療法群(n=239)に無作為に割り付けられた(1:1)。ホルモン療法にはフルベストラント(n=166)またはアロマターゼ阻害薬(n=73)が含まれる。無作為化はESR1変異の有無、フルベストラントによる治療歴の有無および内臓転移の有無によって層別化された。ESR1変異の状態は、Guardant360 CDx検査を用いた血中循環腫瘍デオキシリボ核酸(ctDNA)により決定し、リガンド結合ドメインにおけるESR1ミスセンス変異に限定された。

主な有効性評価項目は無増悪生存期間(PFS)で、盲検下独立画像評価委員会により評価された。ITT解析(治療企図に基づく解析)の対象集団とESR1変異を有する患者集団との間で、PFSに統計的有意差が認められた。

ESR1変異を有する患者228人(48%)のPFSの中央値は、エラセストラント群で3.8カ月(95% CI: 2.2, 7.3)、フルベストラントまたはアロマターゼ阻害薬群で1.9カ月(95% CI: 1.9, 2.1)であった[ハザート比(HR)0.55(95% CI: 0.39, 0.77)、両側p値=0.0005]。

ESR1変異のない250人(52%)の患者におけるPFSの探索的解析では、HR 0.86(95% CI: 0.63, 1.19)が得られ、ITT解析対象集団における改善は主にESR1変異集団で認められた結果に起因することが示された。

主な有害事象 (10%以上) は、臨床検査値異常を含め、筋骨格痛、悪心、コレステロール増加、AST増加、トリグリセリド増加、疲労、貧血、嘔吐、ALT増加、ナトリウム減少、クレアチニン増加、食欲減退、下痢、頭痛、便秘、腹痛、ほてり、消化不良であった。

エラセストラントの推奨用量は、345 mgを1日1回、病勢進行または許容できない毒性が発現するまで食物とともに経口摂取する。

Orserduの全処方情報はこちらを参照。


  • 監訳 下村 昭彦(乳腺・腫瘍内科/国立国際医療研究センター乳腺腫瘍内科)
  • 翻訳担当者 三宅 久美子
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  • 原文掲載日 2023/01/27

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