センチネルリンパ節生検は一部乳がんでは有用でない―再発スコアとの比較

センチネルリンパ節生検は一部乳がんでは有用でない―再発スコアとの比較

センチネルリンパ節生検は、一部の高齢の乳がん患者が術後化学療法を受ける判断基準として有用でない可能性があるという結果が、米国乳腺外科学会(American Society of Breast Surgeons)年次総会で特集研究として発表された。

シカゴ大学のKatharine Yao臨床研究責任医師はニュースリリースで、「センチネルリンパ節生検は、合併症をともなうことに加えて手術を必要とする生検であるが、術後化学療法を行うかどうかの判断基準としては信頼性に欠ける可能性がある」と、コメントしている。

「一部の高齢乳がん患者では、リンパ節転移よりも他の臨床病理学的因子、特にオンコタイプDX(Oncotype DX)スコアなどが判断材料としておそらく有用性が高いだろう」とYao医師は述べた。

Yao医師と共同研究者らは、個々の腫瘍の生物学的特徴を示し術後化学療法を行う判断材料として広く使用されているオンコタイプDX再発スコア(21種類の遺伝子を調べて算出される値)とリンパ節転移との相関を評価した。

解析は全米がんデータベース(National Cancer Database)を用いて、2010年から2018年の間にHR陽性、HER2陰性、AJCC病期分類 T1またはT2の乳がんの治療を受けた70歳以上の患者28,338人のデータをもとに行われた。

合計で5,640人(19.9%)にリンパ節転移があり、22,698人(80.1%)にはリンパ節転移がなかった。

全体として、再発スコアが26以上(通常、化学療法でベネフィットが得られることを示す)の患者の割合は、リンパ節転移がある患者とない患者で同程度だった(それぞれ13.1%と14.7%)。

リンパ節転移陽性と陰性の両患者群において、再発スコアが高い患者にもっとも多くみられたのが、グレード3の腫瘍で、次いで多かったのがプロゲステロン受容体陰性だった。

さらに、腫瘍径が2cmより大きい患者やメディケイド(米国の公的医療保険の1つで、低所得者層を対象とする)適用の患者も、再発スコアが26以上の確率が高かった。

ヒスパニック系患者は、黒人やアジア系患者に比べ再発スコアが低く、化学療法の対象となる可能性が低いことが分かった。

「メディアなどの情報から、リンパ節転移陽性は予後不良とほぼイコールであるとの認識が強くなっているため、患者はセンチネルリンパ節生検を選ぶ傾向にあるかもしれない」とYao医師は述べている。

「しかしリンパ節転移を見るだけでなく、腫瘍組織自体から多くの情報を得られることがわかってきている。70歳以上のホルモン受容体陽性の乳がん患者に対するセンチネルリンパ節生検は、術後化学療法を行う判断基準としてそれほど有用ではない。センチネルリンパ節生検を選択肢から外すことは、一般的な認識から外れるので患者の中には驚く人もいるかもしれないが、転帰に大きな影響を与える可能性は低い」とYao医師はコメントしている。

この研究は商業的資金提供を受けておらず、著者は関連情報を開示していない。

出典:https://bit.ly/3E8sQ9W 米国乳腺外科学会年次総会(2022年4月6日~10日開催)

翻訳担当者 田代両平

監修 小坂泰二郎(乳腺外科・化学療法/医療社会法人石川記念会 HITO病院)

原文掲載日 

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