ダイズ摂取は乳がんの原因となる可能性はありますか?
インターネット上では、特定の食品ががんの原因になりうるという主張が後を絶ちません。例えば、「ダイズを食べると乳がんのリスクが高まる」という俗説を読んだり聞いたりしたことがあるかもしれません。しかし、それは実際に正しいのでしょうか。ここでは、このような考え方がどこから来ているのか、ダイズとがんのリスクについて科学的にはどうなのか、そしてダイズを食生活に取り入れる際の注意点について説明します。
ダイズとは?
ダイズは、大豆や枝豆などの豆類に含まれる天然タンパク質です。また、豆腐、豆乳、醤油、味噌、テンペなどにも含まれています。
ダイズには、イソフラボンというエストロゲン様の化学物質が含まれています。イソフラボンは植物由来のため、植物性エストロゲンと呼ばれています。このエストロゲンとの類似性から、ダイズを食べると乳がんになりやすいと誤解されています。しかし、私たち人間の体にあるエストロゲンは、種類が異なります。エストロゲンは、性機能の発達、妊娠、出産、閉経など、体内にあるいくつかの機能に影響を与えるホルモンです。特に女性のエストロゲンレベルは高くなっており、体内にある生殖系や他のシステムを制御するのに役立っています。
ダイズを食べると乳がんのリスクが高まる?
ホルモン受容体陽性の乳がんなど、がんの種類によっては、体内のエストロゲンを利用して増殖・転移するものがあります。そのため、ダイズに含まれる植物性エストロゲンを食べると、体内のエストロゲンが増加し、乳がんの増殖を促すのではないかと心配する人もいます。
しかし、人間を対象とした研究では、ダイズを食べることと乳がんになることの関連性は示されていません。実験室で行われた研究で、ラットではイソフラボンが乳がん細胞の増殖を促し、乳がん腫瘍を促進することがわかっています。しかし、これらの研究は、人間を対象としたものではないため、実験室での研究結果を食生活の推奨に当てはめることはできません。また、ラットのダイズ代謝は人間とは異なることが研究でわかっています。
ダイズが乳がん予防に役立つと示唆する研究もありますが、これを証明するにはさらなる研究が必要です。例えば、雑誌「PLOS ONE」に掲載された2014年の複数研究メタ解析によると、欧米諸国の閉経後の人々において、ダイズはわずかに乳がん予防効果があることがわかりました。一方、2009年に行われた2つの独立した研究でも、ダイズが乳がん予防に役立つことがわかりました。米国医師会雑誌(JAMA)に掲載された研究では、上海乳がん生存研究(Shanghai Breast Cancer Survival Study)に参加した5,000人の乳がんサバイバーはダイズを食べて、死亡とがん再発のリスクが低下しました。さらに、American Journal of Clinical Nutrition誌に掲載された研究では、上海女性健康調査(Shanghai Women’s Health Study)に参加した約73,000人の中国人女性のうち、思春期から成人期にかけて一貫してダイズを多く摂取していたと回答した人は、乳がんのリスクが大幅に低下していました。
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”科学的なデータから、ダイズ食品を他の多くの植物と一緒に食事で摂取することは、乳がんサバイバーが体をケアするのに大変良い方法であることが示唆されています。しかし、ダイズ食品を取り入れることに抵抗があるサバイバーの場合、ダイズ食品を含まなくても完全に健康的な食事をとることはできます。-Julie LG Lanford氏(MPH、RD、CSO、LDN、登録栄養士、栄養士。腫瘍栄養学の分野での勤務経験15年)”
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では、ダイズサプリメントを摂取することで、がんやがんの再発リスクを減らすことができるでしょうか。2013年のJAMAの研究によると、その可能性は低いようです。この研究では、前立腺がんの再発リスクが高い男性が、20 gのダイズサプリメントを毎日の飲料に溶かして摂取しても、前立腺がんの再発リスクを遅らせたり、減らしたりすることはないことがわかりました。なお、著者らは、このサプリメントは安全であり、使用者に多くの副作用はなかったと述べています。
どのくらいの量と種類のダイズを食べればいいの?
ダイズは、野菜、果物、全粒穀物をたっぷり含む健康的な食事の一部として、適度に食べるのが一番です。天然由来のダイズは、枝豆、豆乳、豆腐などの食品に含まれています。米国食品医薬品局は、1日に25 gのダイズを食べると、心臓病のリスクを軽減するなどの健康効果があるとしています。
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”がんと診断された後にライフスタイルを変えようとする人は、野菜や果物の摂取量を増やし、赤肉(*)や加工食品の摂取量を減らし始めることがよくあります。特にホルモン受容体陽性の乳がん患者がダイズを食べてもいいのかという質問をよく受けます。良いニュースは、患者が食事でダイズを避ける必要はないと思われることです。ただし、摂取量は適度に抑えるのが一番です。-Norah Lynn Henry医学博士( FASCO)、ミシガン大学内科血液腫瘍学部准教授、Rogel Cancer Center乳房腫瘍疾患部門リーダー、Cancer.Net乳がん部門編集委員”
(*サイト注:赤肉とは、牛・豚・羊などの肉。鳥肉は含まない。脂肪に対する赤身肉とは異なります。)
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ダイズ・プロテインパウダーは、シェイクに入れたり、お菓子作りに使ったりして、タンパク質の量を増やすことができるので、聞いたことがある方もいるかもしれません。ダイズ・プロテインパウダーの栄養表示を見て、1回分に含まれるダイズ総量を確認し、推奨される25 g以内に収まるようにしましょう。また、ラベルを見て、ナトリウムや添加糖類、添加物の少ない製品を選ぶようにしましょう。
また、イソフラボンのサプリメントは、ナチュラルヘルスストア(健康食品店)やインターネットで購入できます。しかし、これらのサプリメントを購入する際には注意が必要で、新しいサプリメントを始める前には必ず医師に相談してください。ダイズサプリメントは、伝統的なアジアの食事よりも含まれるダイズの量が多く、また一般的にアメリカやヨーロッパの食事よりもダイズの量が多いです。イソフラボンのサプリメントについては、がんの有無に関わらず、もし推奨一日摂取量を設定するとすればどの程度とすべきか、さらに研究が必要です。イソフラボンやその他の栄養補助食品の摂取を検討されている方は、リスクや利点について医師に相談してください。
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