トリプルネガティブ乳がんに対する術前化学療法後のプラチナ製剤は有益でない

トリプルネガティブ乳がん(TNBC)で浸潤性残存病変を有する患者において、術前化学療法後にプラチナ製剤を投与しても利益はなく、毒性が増すことが確認されたと研究者らは語る。

ナッシュビルにあるバンダービルト大学のIngrid Mayer医師は、ロイター・ヘルスへのメールで次のように語った。

「トリネガ乳がん(TNBC)basal-typeに対するプラチナ製剤投与を裏付ける前臨床モデルや予備臨床データに基づき、EA1131の研究者らは、TNBC basal-type で1 cm以上残存病変がある患者において、術後プラチナ製剤投与は、無浸潤疾患生存期間(iDFS)に関して、カペシタビンと比較して非劣性で、むしろ優れているという仮説を立てました。

残念ながら、プラチナ製剤はカペシタビンと比較して、intrinsic subtype*分類(*訳注:mRNAの発現による乳がんサブタイプ分類)にかかわらず、術前化学療法後に残存腫瘍を有するトリネガ乳がん患者の転帰を改善させず、重篤な毒性を伴うという結果となりました。

さらに、参加者の3年iDFSは、治療法を問わず予想よりもはるかに低いことが認められたため、この高リスク集団においては、より優れた治療薬が必要であることが明らかになりました。

今回の知見を受けて、術前化学療法後に残存腫瘍を有するトリネガ乳がん患者に対し、臨床試験以外でのプラチナ製剤投与に歯止めがかかるはずであり、臨床現場は直接影響を受けることとなります」。

Journal of Clinical Oncology誌およびASCO(米国臨床腫瘍学会)2021バーチャル会議で報告されたように、Mayer医師らは、術前化学療法後に乳房内に1 cm以上の残存腫瘍を有する臨床病期2/3期のトリネガ乳がん患者を対象に、プラチナ製剤(カルボプラチンまたはシスプラチン)を3週間ごとに1回投与を4サイクル行う群と、カペシタビンを3週間ごとに21日中14日投与を6サイクル行う群に無作為に割り付けた。

本試験は非劣性デザインであり、カペシタビンの4年iDFSを67%と仮定する優越性の対立仮説も検証した。

2015~2021年に、計画時775人の参加者のうち410人をプラチナ製剤投与群またはカペシタビン投与群に無作為に割り付けた。無作為割付時の年齢の中央値は52歳であり、72%が白人であった。手術から無作為割り付けまでの間隔は、中央値で115日であった。

中央値20カ月の追跡期間で、トリネガbasal-type患者の78%(120人。全登録患者の61%)にiDFSイベントが発生し、3年iDFSは、プラチナ製剤投与群で42%、カペシタビン投与群で49%であった。

さらに、グレード3-4の毒性は、プラチナ製剤投与群でより多く認められた。

効果安全性評価委員会は、さらなる追跡調査によってプラチナ製剤の非劣性または優越性が示される可能性は低いとし、この時点で試験を中止するよう勧告した。

Mayer医師は、「今のところ術前化学療法後に腫瘍残存を有するトリネガ乳がんの全患者に術後プラチナ製剤を投与することは試験段階であり、カペシタビンが標準的な治療法であることに変わりはありません」 と述べている。

ピッツバーグ大学医学部の血液/腫瘍科の副部長であり、Magee-Women’s Cancer ProgramのメディカルディレクターであるAdam Brufsky医師は、ロイター・ヘルスの電話取材に対して次のように語った。

「カルボプラチンを投与していた多く医師は、カルボプラチンに関する見解を少し改め、すべての人に投与するのではなく、投与する患者集団を選択していくことになると思います。

現在のガイドラインでは、カルボプラチンの投与は医師の判断による任意であり、おそらく今後もそのような状態が続くでしょう。

術前化学療法でカルボプラチンを投与した場合、高い病理学的完全奏効が示されている研究も存在するため、医師の中にはカルボプラチンを投与し続けることを固持する人もいます。また、遺伝性の乳がん患者には少し有益性があると考える医師もいます。

しかし、今回のデータを知った後では、無造作にカルボプラチンを投与する医師はいないでしょうし、今後は投与する患者について、より選択的かつ慎重になると思います」と、Brufsky医師は結論づけた。

原典:https://bit.ly/35vyvGN Journal of Clinical Oncology誌 オンライン版 2021年6月6日

翻訳担当者 平 千鶴

監修 下村昭彦(乳腺・腫瘍内科/国立国際医療研究センター乳腺腫瘍内科)

原文掲載日 

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