乳がん再発時、HER2低発現状態への転化が治療選択肢を広げる可能性

[ESMOプレスリリース]

乳房腫瘍はHER2低発現に転化し得るという研究結果が示された。これにより、HER2低発現腫瘍を対象に、現在、臨床試験が行われている新たな薬剤(主に新規の抗体薬物複合体治療薬)が有効な患者が増える可能性がある。

乳がんが原発腫瘍から再発腫瘍へどのように変化するのかを調べた初の研究で、乳がん患者の約30%において、ヒト上皮成長因子受容体(HER)2低発現状態から転化するか、またはHER2低発現状態へ転化することが明らかになった。具体的には、原発腫瘍がHER2陰性(HER2-0とも呼ばれる)であったトリプルネガティブ乳がんの14%が、再発腫瘍でHER2低発現に転化し、治療困難ながんに選択肢を提供できる可能性のあることが明らかになった。

従来、乳がんは、ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(ルミナル様とも呼ばれる)、HER2陽性、トリプルネガティブ(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、過剰なHER2タンパク質が陰性)に分類されてきた。HER2低発現は、HER2バイオマーカー低発現を伴うHER2陰性腫瘍を指す。HER2陰性に分類される乳がんの約半数は、HER2低発現を示す。

イタリア・パドバ大学腫瘍科のFederica Miglietta博士は、今年の欧州臨床腫瘍学会(ESMO)乳がんバーチャル会議でこの研究結果を発表した。「この結果は、乳がん分類の観点から、HER2低発現腫瘍をどのように扱うべきかについて全く新しい知見を提供しており、HER2陽性乳がんとHER2陰性乳がんという現在の二分法に疑問を投げかけるものです」と述べている。 「私たちの発見は、腫瘍再発時にHER2発現を再検査することの重要性を強調しています。なぜなら、現在試験中で近い将来に臨床使用が期待される新たな治療の選択肢を利用できるかもしれないからです」。現在、HER2低発現乳がんを対象とした複数の臨床試験が行われている。

再発乳がん生検の合計29%が、HER2低発現からの転化またはHER2低発現への転化を示した。原発腫瘍と再発腫瘍のそれぞれ34%と38%でHER2低発現がみられた。HER2陰性腫瘍では合計15%がHER2低発現腫瘍に、HER2低発現腫瘍では14%がHER2陰性腫瘍に転化していた。

また、HR+/HER2陰性腫瘍は、トリプルネガティブ腫瘍と比較して、HER2低発現の頻度が高いことも確認された(原発腫瘍サンプルでは47%対36%、再発腫瘍サンプルでは54%対36%)。さらに、HER2陰性の原発腫瘍からHER2低発現の再発腫瘍への転化は、ルミナル様腫瘍とトリプルネガティブ腫瘍でそれぞれ21%対14%であった。

この研究結果について、スペイン・バルセロナ大学病院の腫瘍内科長であるAleix Prat教授は次のように述べている。「このようなHER2低発現レベルの変化は重要です。これには生物学的な理由があるのかもしれませんし、あるいは技術的な理由かもしれません。というのも、皮膚、肝臓、骨から採取される可能性のある転移腫瘍生検において、HER2バイオマーカーのレベルを測定する方法は現時点で標準化されておらず、異なる結果が示されているからです」。

「HER2状態が治療反応性をどのように決定するのかを解明する必要があります。重要なのは、原発腫瘍のHER2状態なのか、それとも転移腫瘍生検でのHER2状態なのか。転移腫瘍がHER2低発現で、以前は治療に反応しなかったのに今は反応するという患者がいるかもしれませんし、時間の経過とともにその状態が再び変化し、また再発するという可能性も考えられます」。

「このことは、転移腫瘍生検の必要性が一段と高まっていることを示しています。重要なのは、HER2低発現に対する治療が有効な患者を見極めることです。なぜなら、試験結果が良好だった場合、患者からすぐに問い合わせがあるでしょうから」とPrat氏は言う。

翻訳担当者 工藤章子

監修 勝俣範之(腫瘍内科/日本医科大学 武蔵小杉病院)

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