血中循環腫瘍細胞(CTC)で転移乳がん患者の治療反応と予後を予測できる可能性

血中循環腫瘍細胞(CTC)で転移乳がん患者の治療反応と予後を予測できる可能性

早期の血中循環腫瘍細胞動態が転移性乳がん患者の全生存期間に関連することを示すメタアナリシス結果が、12月8~11日開催のサンアントニオ乳がんシンポジウム2020で発表された。

「転移性乳がん患者の治療選択肢が増えるなか、迅速に治療反応を予測して観察できることは、治療法決定を支援するうえで非常に重要になってくるでしょう」とWolfgang Janni氏(医学博士。ドイツ、ウルムウルム大学病院教授、女性のためのクリニック所長)は述べる。乳がんでは治療に対する反応は通常、従来の画像診断法で観察する。しかしこの方法は時間がかかり、がんのタイプによっては、変化を特定できるまで約3カ月間も要すると同氏は説明する。「われわれは、簡便な血液検査で治療反応や予後を早期に予測できるかどうかに関心がありました」。

この研究でJanni氏らは、原発腫瘍から血液中に排出される血中循環腫瘍細胞(CTC)をもとに全生存期間を予測できるかを調べるため、査読後に公表された転移性乳がん患者4,079人分の研究に基づいて世界各地で蓄積されたデータセットを解析した。対象患者は全員、治療開始前および追跡調査時にCellSearch(セルサーチ)システムを用いたCTC測定を受けていた。治療開始前から追跡調査までの期間中央値は29日であった。開始前から追跡調査までのCTCレベルの変化を解析して全生存期間と関連があるかどうかを評価した。

治療開始前にCTC陽性であった患者2,961人のうち、治療開始後もCTC陽性であった患者(陽性/陽性)は1,855人、CTC陰性になっていた患者(陽性/陰性)は1,106人であった。治療開始前にCTC陰性であった患者1,118人のうち、治療開始後もCTC陰性であった患者(陰性/陰性)は813人、CTC陽性になっていた患者(陰性/陽性)は305人であった。

全生存期間中央値は陰性/陰性の患者が最も長く(47カ月)、次いで陽性/陰性(32.2カ月)、陰性/陽性陽性(29.67カ月)、陽性/陽性(17.87カ月)であった。陰性/陰性の患者と比較した死亡リスクは、陽性/陽性の患者で215%増加、陰性/陽性の患者で74%増加、陽性/陰性の患者で52%上昇した。治療前にCTC陽性であった患者において、追跡調査時点もCTC陽性であった患者の死亡リスクはCTC陰性になっていた患者より51%高かった。

ホルモン受容体陽性、HER2陽性、トリプルネガティブ乳がんなどの乳がん分類別のCTC動態解析においても同様の傾向が認められた。CTC動態はすべての乳がん分類別の全生存期間と関連していた。

「これらのデータから、治療開始後4週間程度の疾患の経過をCTC動態から予測できると考えられます」とJanni氏は述べる。「この方法は従来の画像診断法に比べて優れており、医師が治療を継続すべきかどうかを非常に早い段階で判断するのに有用です。また、CTC動態があらゆる乳がんサブタイプの転帰を予測したことは非常に頼もしく思います」。

本研究の限界は、過去に受けた治療の種類に関するデータが得られない患者が数多くいた点である。「世界中から患者の個別データを集めたことがわれわれの研究の強みですが、同時に限界でもあります。なぜなら、さまざまな情報源から、詳細レベルが一様でない治療関連情報が提供されたためです」とJanni氏は説明した。これらデータの欠落が、治療法によってCTC動態の予測値が異なるかを判断するうえで妨げになっている。

この研究は、Menarini Silicon Biosystemsの支援を受けている。Janni氏はMenarini Silicon Biosystemsから研究助成金を受けている。

翻訳担当者 佐藤美奈子

監修 尾崎由記範(腫瘍内科・乳腺/がん研究会有明病院 乳腺センター 乳腺内科)

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