放射線治療中の乳がん患者の多くで症状が過小認識されている可能性
若年患者および黒人患者では、症状の過小認識がより多くみられる可能性
放射線治療を受けた乳がん患者における症状の過小認識は、乳房痛、皮膚のかゆみ、浮腫、および疲労の報告で多くみられ、若年患者および黒人患者における症状の過小認識のオッズが有意に高かった。この結果は、12月8~11日に開催された2020年サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)で発表されたデータで明らかになった。
「副作用を認識することは、患者が症状をコントロールしやすいように医師が支持療法を実施する上で不可欠です」と、ミシガン大学のNewman Family Professor、放射線腫瘍学部門部門長代理、医学における生命倫理・社会科学のセンター(Center for Bioethics and Social Sciences in Medicine)所長であるReshma Jagsi医師(医学博士)は述べる。
Jagsi氏はさらに、「医師が患者の症状の重症度を読み違うことがあり、それが生活の質の低下につながる可能性があります。私たちの研究から、特に患者が若年や黒人である場合には、医師が症状の重症度を読み違える可能性がより高いことが明らかになりました」と述べている。
本研究では、Michigan Radiation Oncology Quality Consortium(ミシガン州放射線腫瘍学品質コンソーシアム:MROQC)に登録されている、ミシガン州全域の29の医療機関で乳房温存手術後に放射線治療を受けた乳がん患者9,868人を対象に、患者報告アウトカム(PRO)を用いた評価と、医師による有害事象共通用語規準(CTCAE)を用いた評価を比較した。乳房痛、皮膚のかゆみ、浮腫(腫れ)、疲労の4つの症状について、患者と医師の評価を個別に収集し、比較した。
CTCAEのグレードは0から5まであり、グレード0は無症状を、5は症状に関連した死亡を指す。「中等度もしくは重度の乳房痛がある」、「頻繁にもしくは常時かゆみや浮腫による煩わしさがある」、または「頻繁にもしくは常時著しい疲労がある」と報告した患者は、有意な症状があるとみなした。
患者が中等度と報告した痛みを医師がグレード0と記録している場合、あるいは、患者が重度の痛みと報告した痛みを医師がグレード0または1と記録している場合、医師に過小認識があるとみなした。同様に、患者が頻繁にもしくは常時かゆみや浮腫による煩わしさがあると報告し、医師がグレード0と記録している場合、医師のかゆみや浮腫に対する過小認識とみなした。最後に、患者が頻繁にもしくは常時顕著な疲労があると報告し、医師がこの症状をグレード0として記録している場合、医師の疲労に対する過小認識とみなした。
乳房痛、かゆみ、浮腫、および疲労の過小認識は、有意な症状のある患者からの報告のそれぞれ30.9%、36.7%、51.4%、および18.8%で過小認識が認められた。
放射線治療中に少なくとも1つの有意な症状を報告した5,510人の患者のうち、53.2%でこの4つの症状のうち少なくとも1つの症状の過小認識があった。
本研究では症状の過小認識の予測因子を評価するため、多変量ロジスティック回帰分析を行った。その結果、年齢、人種、および治療法など、いくつかの因子が症状の過小認識と関連していることが明らかとなった。
60~69歳の患者と比較して、50歳未満の患者では35%、50~59歳の患者では21%、症状の過小認識のオッズが増加した。
白人患者と比較して、黒人患者では症状の過小認識のオッズが92%増加し、黒人やアジア人以外の人種の患者では82%増加した。
症状の過小認識と関連する他の因子としては、鎖骨上領域に照射(リンパ排液領域への放射線照射)を受けていない患者や、通常分割照射(寡分割照射との比較)を受けた患者があげられた。
「年齢や人種に基づく患者の痛みに対する耐性について、医療従事者が誤って認識している可能性があります」とJagsi氏は指摘し、以下のように続けた。「私たちの研究から、今後の研究で評価すべきいくつかの懸案パターンや、がんに対する医療ケアの品質および公平性を向上させる介入の機会が明らかになっています。症状検出の改善は、少なくとも乳房放射線療法では、がん治療の経験および転帰の格差を縮める方法の一つとなる可能性があります」。
本研究の制限としては観察研究の特性があげられる。
本研究およびMROQCの依頼者は、Blue Cross Blue Shield of Michigan (BCBSM)と、BCBSMののValue Partnershipプログラムの一環であるBlue Care Networkであった。Jagsi氏はSusan G. Komen Fundationおよび米国国立衛生研究所(NIH)より資金援助を受けている。
原文掲載日
【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。
乳がんに関連する記事
ER陽性HER2陰性転移乳がんで、giredestrant併用療法が無増悪生存期間を改善
2025年11月5日
サシツズマブ ゴビテカンは免疫療法薬が使えない進行トリプルネガティブ乳がんの転帰改善
2025年11月6日
検診で見つけにくい乳がん’小葉がん’をAI利用で予測しやすく
2025年11月4日
ポリジェニック リスクスコアが非浸潤性乳がんの浸潤性乳がん発症を予測する可能性
2025年10月16日
血液検査から得...



