アベマシクリブは、高リスクでホルモン陽性HER2陰性の早期乳がんに有望

標準的な術後内分泌療法とサイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害薬であるアベマシクリブ(販売名:ベージニオ)の併用で、ハイリスク、リンパ節転移陽性、ホルモン受容体陽性HER2陰性の早期乳がん患者の無浸潤疾患生存期間(IDFS)が継続的に改善することが、第3相monarchE試験の長期追跡調査データから判明した。この結果は、12月8日~11日に開催された2020年サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)で発表された。

「内分泌療法を単独で受けたホルモン受容体陽性の早期乳がん患者の多くに再発を認めるわけではありません。しかしながら、約20%の患者に最初の10年間で再発がみられる可能性があり、多くの場合は治癒の見込みのない転移性乳がんという形で再発します」と、ピッツバーグ大学医学部の准教授で、UPMCヒルマンがんセンターの腫瘍内科医であり、全米乳房・消化器がん術後補助療法プロジェクト(NSABP)財団のメディカルディレクターであるPriya Rastogi医学博士は述べた。

「転移リンパ節数が多い、腫瘍径が大きい、または腫瘍の悪性度やバイオマーカーで測定される細胞増殖が高度など、一定の臨床的・病理学的なリスク因子のあるがん患者では、再発リスクが一層高くなります」とRastogi氏は続けた。「このような患者集団に特化した治療法が期待されており、早期乳がんの再発予防を目的とした新たな治療選択肢を発見するために研究を進めなければなりません」。

MonarchE試験ではハイリスク、リンパ節転移陽性、早期、ホルモン受容体陽性、HER2陰性の乳がん患者5,637人を対象に、アベマシクリブ+術後内分泌療法併用と内分泌療法単独とを比較しており、この試験の中間解析から得られた初期の結果が過去に報告されている。追跡調査の中央値15.5カ月で323例の無浸潤疾患イベント発生の後、内分泌療法にアベマシクリブを追加することでで、浸潤性疾患リスクが25%低下することが明らかになった。2年時点の無浸潤疾患生存率(IDFS)は、併用群で92.2%、内分泌療法単独群で88.7%であった。

今回の研究では、この試験の追跡期間が延長し、追跡期間中央値19カ月で395例の無浸潤疾患イベントの結果が得られたとしている。

適応に従って手術および放射線治療や化学療法を受けた患者は、標準治療の術後内分泌療法に加えてアベマシクリブ投与(150mgを1日2回、2年間)を受ける群と受けない群に無作為に割り付けられた。適格基準には、4個以上の転移リンパ節を有すること、もしくは、グレード3の腫瘍、5cm以上の腫瘍、または中央判定による高Ki-67状態(腫瘍細胞内で20%以上の陽性率を「高」と定義)のいずれかの条件を満たすとともに1個から3個の転移リンパ節を有することが含まれた。Ki-67タンパク高値は、増殖が速い浸潤性腫瘍であり、再発の可能性が高いことを示している。

今回の解析時点で、1,437人の患者(25.5%)が2年の治療期間を終了しており、3,281人の患者(58.2%)が2年の治療期間中であった。アベマシクリブ併用療法を受けた患者は内分泌療法を単独で受けた患者と比較して、浸潤性疾患のリスクが28.7%減少した。2年時点の無浸潤疾患生存率(IDFS)は併用群で92.3%、内分泌療法単独群で89.3%であった。さらに併用療法群は、内分泌療法単独群と比較して、2年時点の無遠隔転移生存率(DRFS)の改善が認められた(それぞれ93.8%、90.8%)。

研究者らはまた、中央判定でKi-67が高いとされた患者2,498人の転帰も評価した。このコホートのうち併用療法を受けた患者では、内分泌療法のみを受けた患者と比較して浸潤性疾患リスクが30.9%減少していた。2年時点の無浸潤疾患生存率は、併用群で91.6%、内分泌療法単独群で87.1%であった。

「アベマシクリブのさまざまなデータを見ると、すべてのサブグループで一貫した有用性が認められました」とRastogi氏は述べた。本試験の安全性データはアベマシクリブの既知の安全性プロファイルと一致しており、新たな安全性シグナルは確認されなかった。

「これらの結果はハイリスク、リンパ節転移、ホルモン受容体陽性、HER2陰性の早期乳がん患者にとって、過去20年間で治療法が大きく前進したことを示していると考えられます」とRastogi氏は続けた。「これらの臨床的に有意義な結果は、ハイリスク、ホルモン受容体陽性HER2陰性の早期乳がんの治療方法を変える可能性を秘めています」。

Rastogi氏は、全生存期間のデータは現時点では未完成であり、さらなる追跡調査が必要であると述べた。

この研究の治験依頼者はイーライリリー社である。

Rastogi氏は、アストラゼネカ社、ジェネンテック社、ロシュ社、イーライリリー社から旅費と宿泊費の支払いを受けた。

翻訳担当者 藤永まり 

監修 田原梨絵(乳腺科、乳腺腫瘍内科)

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