FDAが転移HER2陽性乳がんにマルゲツキシマブを承認

2020年12月16日、米国食品医薬品局(FDA)はヒト上皮増殖因子受容体2型(HER2)陽性転移乳がんを有する成人患者の治療を適応として、抗HER2抗体薬による2レジメン以上の治療歴のうち少なくとも1レジメンが転移がんに実施されている場合に、化学療法との併用療法としてmargetuximab[マルゲツキシマブ](販売名:MARGENZA、MacroGenics社)を承認した。

有効性の評価は、免疫組織化学染色(IHC)で3+であるかin situハイブリダイゼーション(ISH)で増幅が認められたHER2陽性の転移乳がんを有し、マルゲツキシマブ以外の抗HER2抗体薬による治療歴のある患者536人を対象とした無作為化、多施設共同、非盲検試験であるSOPHIA(NCT02492711)試験において行われた。患者はマルゲツキシマブ+化学療法群またはトラスツズマブ+化学療法群のいずれかに1:1に無作為に割り付けられた。選択された化学療法薬(カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビン、またはビノレルビン)、転移に対して行った治療ライン数(2ライン以下、2ライン超)、および転移部位数(2カ所以下、2カ所超)による層別無作為化が行われた。

主要有効性評価項目は、盲検独立中央判定(BICR)によって判断した無増悪生存期間(PFS)、ならびに全生存期間(OS)であった。副次的有効性評価項目は、BICRによって判断した客観的奏効率(ORR)および奏効期間(DOR)であった。

無増悪生存期間(PFS)中央値は、マルゲツキシマブ群で5.8カ月(95%信頼区間[ CI]: 5.5~7.0)、対照群で4.9カ月(95% CI: 4.2~5.6)であった(ハザード比[HR] 0.76; 95% CI: 0.59~0.98; p=0.033)。確定客観的奏効率(ORR)は、マルゲツキシマブ群で22%(95% CI: 17~27)、対照群で16%(95% CI: 12~20)であり、奏効期間(DOR)中央値はマルゲツキシマブ群で6.1カ月(95% CI: 4.1~9.1)、対照群で6.0カ月(95%CI: 4.0~6.9)であった。

マルゲツキシマブと化学療法の併用療法において、最もよくみられた(10%超)副作用は、疲労/無力症、悪心、下痢、嘔吐、便秘、頭痛、発熱、脱毛症、腹痛、末梢神経障害、関節痛/筋肉痛、咳、食欲減退、呼吸困難、輸注関連反応、手掌足底発赤知覚不全、および四肢痛であった。処方情報には枠組み警告が記載されており、医療従事者に対して左室機能不全および胚・胎児毒性の危険性を通知している。

マルゲツキシマブの推奨用量としては、初回投与時には15 mg/kgを120分かけて、2回目以降は30分以上かけて3週間毎に静注投与する。マルゲツキシマブおよび化学療法の併用投与予定日には、化学療法終了後直ちにマルゲツキシマブを投与することができる。マルゲツキシマブとの併用療法に用いた各剤の推奨投与量に関する情報は、適宜各剤の処方情報を参照すること。

MARGENZAの全処方情報はこちらを参照。

本審査には、FDAによる評価を円滑に進めるために 申請者が自発的に申請を行うAssessment Aidが使用された。

この申請は、ファストトラックのの指定を受けた。FDA迅速承認プログラムに関する情報は、「企業向けガイダンス:重篤疾患のための迅速承認プログラム-医薬品およびバイオ医薬品」(the Guidance for Industry: Expedited Programs for Serious Conditions-Drugs and Biologics)に記載されている。

翻訳担当者 前田愛美

監修 下村昭彦(乳腺・腫瘍内科/国立国際医療研究センター乳腺腫瘍内科)

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