乳腺濃度は、がん治療後リンパ浮腫リスクを予測

腋窩リンパ節郭清を受ける乳がん患者において、マンモグラフィ乳腺濃度はリンパ浮腫のリスクと関連する要因の一つであることが新たな研究でわかった。

プリンセスマーガレットがんセンター(カナダ、トロント)のFei-Fei Liu医師は、「現在、患者の約3分の1はリンパ浮腫の後期段階で診断されており、有効な治療法はほとんどありません」とロイター・ヘルスへの電子メールで述べている。「われわれはリンパ浮腫の罹患率を予測する数学的モデルを開発しました。乳腺濃度の低い患者は、重度のリンパ浮腫を発症するリスクが高いことがわかりました」。

Liu医師らはJAMA Network Open誌に掲載された論文の中で、リンパ浮腫が腋窩リンパ節郭清を受ける乳がん患者の約20%に発症する外科的合併症であることを指摘している。このリスクは、放射線治療や化学療法を併用した外科的治療では2倍近くになる。

さらに、線維化が進むために、時間の経過とともに治療はますます難しい状態になる。

「ほとんどのリンパ浮腫のリスクモデルは、がんと治療の危険因子に基づいていますが、これらでリンパ浮腫リスクが十分に説明されるわけではありません」とLiu医師らは述べる。

Liu医師らは、さらに調査するために、平均年齢52.3歳の女性373人のデータを分析した。その全員が乳がんの初回診断に対して根治的治療を受けていた。患者は、247人の訓練コホートと126人の検証コホートに分けられた。

多変量線形回帰分析によって、年齢、BMIおよびマンモグラフィ乳腺濃度がそれぞれリンパ浮腫と関連する独立した予後因子であることがわかった。病理学的リンパ節の数と腋窩リンパ節郭清についても同様であった。

 検証試験では、リンパ浮腫体積の測定値と予測値の間には、中程度ではあるが統計学的に有意な相関が認められた。曲線下面積は、軽度のリンパ浮腫予測で0.72、重度のリンパ浮腫で0.83であった。

「この研究で、脂肪性乳房は不良なリンパ浮腫を伴うこと、そして多変量解析の結果により乳腺濃度はBMI(肥満度指数)以上に独立した予後的重要性をもたらすことが明らかになりました」とLiu医師らはまとめている。

Liu医師は、「このモデルを用いてリスクが特に高い患者をピンポイントで特定することで、高リスク患者のために、現在の治療が最も効果的な時点でリンパ浮腫を早期に特定して治療できる可能性があります」と付け加える。

この研究の付随論説を執筆したカリフォルニア大学ロサンゼルス校のMaggie Lee DiNome医師は、ロイター・ヘルスへの電子メールで次のように述べる。「マンモグラフィ乳腺濃度はどのマンモグラフィ検査結果報告書でも一様に報告され、評価しやすい尺度です。この研究の最も重要な知見は、マンモグラフィ乳腺濃度は、乳がん治療中の患者のリンパ浮腫リスクを予測する上で有用な因子である可能性があるということです」。

「障害を引き起こす可能性のある、この副作用を完全に防ぐことができるようになるまでは、リンパ浮腫のリスクについて患者に対してより正確に忠告する必要があります 」と同医師は結論付けている。

引用:JAMA Network Open誌2020年11月11日オンライン版

翻訳担当者 外山ゆみ子

監修 原 文堅(乳がん/がん研究会有明病院 乳腺センター 乳腺内科)

原文掲載日 

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