遺伝性前立腺がんは、乳がん・卵巣がんの家族歴とも関連

男性は主治医に女性血縁者も含めたがんの家族歴を伝えるべきである

前立腺がんの家族歴があると前立腺がんになるリスクが高まるため、ことさら注意しなければならないことを大半の男性およびその主治医らは知っている。

しかし、男性の女性血縁者についてはしばしば見過ごされる。もしBRCA1/2などの遺伝子の変異に由来している可能性のある乳がんおよび卵巣がんの病歴が母親、姉妹や娘にあるなら、男性が前立腺がんになるリスクもかなり高いため、こうした情報を家族歴に含め、スクリーニング/スクリーニング 検査、診断検査および治療の指針とするべきである。

デューク大学医学部の教授・内科部長 であるKathleen Cooney医師により主導された研究の結果が、3月24日付けのJournal of Clinical Oncology誌で発表された。

以前の試験から、乳房、卵巣、膵臓および前立腺を含む特定のがんは、BRCA1およびBRCA2遺伝子の遺伝性変異と関連があることが示されている。Cooney医師が率いるチームは、ユタ州人口データベースを用いた既存情報を基にして、40歳以上の約620,000人の男性の健康および家族歴の記録を調査した。また、遺伝性の非ポリポーシス大腸がんとしても知られているリンチ症候群と一致する家族歴がある男性の前立腺がんのリスクも調査した。

研究者らは、前立腺がんのリスクはがんの家族歴により異なるが、56歳未満の男性における前立腺がん診断例として定義される若年発症型前立腺がんのリスクと最も強く関連することを見出し、高リスク家族ほど早い年齢でスクリーニング検査を受けることの重要性を強調している。

遺伝性前立腺がんの家族歴があると、全タイプの前立腺がんの合計の相対リスクが最も高くなり、続いて遺伝性乳がんおよび卵巣がん、リンチ症候群のリスクが高かった。家族歴があれば、どのタイプの前立腺がんにおいても若年(56歳未満)発症型前立腺がんのリスクが最も高くなり、このことは遺伝的要因が疾患発症に及ぼす影響と一致する。

「家族歴は患者治療の指針となるツールとしてはしばしば軽視されています」とCooney医師は述べた。「私たちは自分の血縁者の病歴を知らないことが多く、また情報は動的で年々変化しますので、継続して見直す必要があります。もし患者にがんの強い家族歴があるなら、私たちは注意を払う必要があります」。

前立腺がんは、2020年には推定192,000人の新規発症があるとされる、米国男性で最も多く診断される浸潤性がんである。全米総合がんセンターネットワークでは、男性のBRCA2変異保有者は前立腺特異抗原(PSA)検査およびデジタル直腸内診による前立腺がんスクリーニングを40歳までに始めること、およびBRCA1変異保有者もこの年齢で検査を考えることを推奨している。

論文の他の共著者は以下のとおりである。Jennifer L. Beebe-Dimmer, Ashley Kapron, Alison M. FraserおよびKen R. Smith.

本試験は、ハンツマンがん財団、米国国立衛生研究所(P30 CA2014)、ユタ大学、the University of Utah’s Program in Personalized Health and Center for Clinical and Translational Science、米国国立がん研究所のSEERプログラム(HHSN261201800016I)ならびにthe US Center for Disease Control and Prevention’s National Program of Cancer Registries(NU58DP0063200)の支援を受けた。

翻訳担当者 木下秀文 

監修 斎藤 博(がん検診/青森県立中央病院)

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