乳がん、肺がん、メラノーマの高齢サバイバーでは脳転移リスクが持続

高齢の乳がん、肺がんおよび黒色腫(メラノーマ)サバイバーはその後の人生で脳転移リスクに直面し、原発性がん治療から数年間は監視を必要とする可能性があるとの研究結果が、米国がん学会(AACR)のCancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention誌で発表された。

「がん治療の向上によって、原発性がんの診断後も生存し続ける人が増えていることから、脳転移を含めた二次がんの研究が重要です。米国人口の高齢化に伴い、脳転移がみられる人の数が増加していますが、脳転移は原発性がんの診断から何年も経ってから発症する場合もあります」と、本研究の上級著者であるJill S. Barnholoz-Sloan博士(クリーブランドのケースウエスタンリザーブ大学医学校、クリーブランド計算生物学研究所および人口・量的健康科学学部、脳腫瘍研究Sally S.Morley特任教授)は述べた。

「原発性がんの診断後に長く生存するほど転移の‘時間的リスク’は上昇します。さらに、原発性がんの診断の大部分では標準治療に脳転移のスクリーニングが含まれていません」と、本研究の筆頭著者であり、ケースウエスタン大学医学校、人口・量的健康科学学部、臨床研究センターの博士号取得候補者であるMustafa S. Ascha氏(理学修士)は述べた。  

本研究では、原発性がんに関する病期診断精密検査中に診断される同時性脳転移(SMB)、後に診断される生涯脳転移(LBM)それぞれの発症率を解析した。本研究で扱った原発性がんは、他の多くの種類のがんよりも脳転移しやすい肺がん、乳がんおよびメラノーマである。

研究者らは米国国立がん研究所のSEER(Surveillance, Epidemiology, and End Results)データべースから得たデータを、脳転移に関するメディケア(米国の高齢者および一部障害者向け公的医療保険制度)保険請求データにリンクし、高齢患者における脳転移率を調査した。メディケアは65歳以上の患者の大半が加入する主な公的保険であることから、SEERーメディケア研究の結果は高齢者集団に一般化可能であると、Barnholtz-Sloan氏は説明した。最終データには2010年~2012年に診断された肺がん患者70,974人、乳がん患者67,362人、メラノーマ患者21,860人が含まれる。

研究者らは、各原発性がんについて発症率(全症例数に対する脳転移発症数の割合)を計算した。

原発性肺がんでは、同時性脳転移(SMB)の発症率は9.6%、生涯脳転移(LBM)は13.5%であった。肺がんの中でも頻度の高い腺がんと比較して小細胞肺がんおよび非小細胞肺がんで脳転移率が最も高かった。

原発性乳がんでは、同時性脳転移の発症率は0.3%、生涯脳転移は1.8%であった。脳転移率は限局性乳がん患者で最も低く、身体の他の部位に転移している患者で最も高かった。脳転移率は分子サブタイプによっても異なり、トリプルネガティブ乳がんで最も高かった。

メラノーマでは、同時性脳転移の発症率は1.1%、生涯脳転移は3.6%であった。診断時にすでにメラノーマが別の部位に転移していた患者において発症率は劇的に高く、後に脳転移を発症する可能性は、診断時に遠隔転移があった患者で30.4%、領域転移およびリンパ節転移のある患者で15.2%、リンパ節転移のみの患者で13.2%、領域組織転移のある患者で7.8%、限局性がん患者で2.5%であった。

本研究結果は、臨床医が患者の脳転移リスクについて理解するのに役立ち、スクリーニングと監視の実践に影響を与える可能性があると、Barnholtz-Sloan氏とAscha氏は述べた。

「脳転移はMRIで検出できますが、非常に費用がかかります。どんな人が脳転移を発症する可能性があるかについて理解が進めば、MRIを受けるべき人の特定に役立ちます」と、Barnholtz-Sloan氏は語った。

標的を定めた監視を行えば、医師が初期の段階で転移を検出できるようになる可能性があると、Ascha氏は付け加えた。「脳転移を早期の段階で検出できれば、患者に対して早期治療を提供することができ、転帰が向上します」と、同氏は述べた。

本研究の主な制限として、メディケアのデータは高齢者集団に関する包括的な様相を表す一方、必ずしも若年患者に一般化できるわけではないと著者らは述べた。また、本研究は4~5年にわたり追跡調査をしているが、乳がんなど一部のがんは、脳転移が原発性がんから数十年後に発症することがあると、Barnholtz-Sloan氏は語った。

本研究は、Central Brain Tumor Registry of the United States(米国中央脳腫瘍登録)への支援を介して一部支援を受けた。米国中央脳腫瘍登録は、米国脳腫瘍協会、Sontag財団、Novocure社、AbbVie社、Musella財団および米国疾病管理予防センターから資金援助を受けている。著者らは、利益相反はないと宣言している。

翻訳担当者 有田香名美

監修 西川 亮(脳腫瘍/埼玉医科大学国際医療センター)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

【ASCO2024年次総会】T-DXd(エンハーツ)がホルモン療法歴のある乳がん患者の無増悪生存期間を有意に改善の画像

【ASCO2024年次総会】T-DXd(エンハーツ)がホルモン療法歴のある乳がん患者の無増悪生存期間を有意に改善

ASCOの見解(引用)「抗体薬物複合体(ADC)は、乳がん治療において有望で有益な分野であり、治療パラダイムにおける役割はますます大きくなっています。トラスツズマブ デルクステ...
【ASCO2024年次総会】若年乳がん患者のほとんどが治療後に妊娠・出産可能の画像

【ASCO2024年次総会】若年乳がん患者のほとんどが治療後に妊娠・出産可能

ASCOの見解(引用)「乳がんの治療後も、妊娠や出産が可能であるだけでなく安全でもあることが、データが進化するにつれて次々と証明されてきています。この研究では、妊娠を試みた乳が...
欧州臨床腫瘍学会(ESMO)乳がん会議2024の画像

欧州臨床腫瘍学会(ESMO)乳がん会議2024

ESMO 乳がんBreast Cancer 2024が5月15日から17日にかけてドイツのベルリンで開催され、乳がんの最新研究が発表される。世界中からベルリンに集まった参加者は、著名な...
次世代PARP阻害薬サルパリブ、相同組換え修復不全乳がんで臨床的有用性を示すの画像

次世代PARP阻害薬サルパリブ、相同組換え修復不全乳がんで臨床的有用性を示す

ポリADP-リボースポリメラーゼ(PARP1)の選択的阻害薬であるsaruparib[サルパリブ]が、特定の相同組換え修復(HRR)欠損を有する乳がん患者に対して有望な客観的奏効率と無増悪生存期間を示した。この結果は第1/2相PETRA試験によるもので、4月5日から10日まで開催された米国癌学会(AACR)2024年年次総会で発表された。