FDAが早期乳がんにトラスツズマブ エムタンシンを承認

2019年5月3日、米国食品医薬品局(FDA)は、タキサンとトラスツズマブによる術前療法後に浸潤性疾患が残存するHER2陽性早期乳がん(EBC)患者の術後療法にトラスツズマブ エムタンシン(英語名:ado-trastuzumab emtansine、商品名:カドサイラ、Genentech,Inc.社)を承認した。

患者の選択はFDAの承認するトラスツズマブ エムタンシンのコンパニオン診断に基づくものとされている。そのため、FDAは患者の選択に用いるコンパニオン診断法として、Ventana Medical Systems,Inc.社のPATHWAY anti-HER-2/neu (4B5) Rabbit Monoclonal Primary Antibody法およびINFORM HER2 Dual ISH DNA Probe Cocktail法も承認した。

承認はHER2陽性EBC患者1486人を対象とした無作為化多施設共同非盲検KATHRINE試験(NCT01772472)に基づくものである。乳がん標本は、 Ventana社の PATHWAY anti-HER2-/neu (4B5) Rabbit Monoclonal Primary Antibody法または INFORM HER2 Dual ISH DNA Probe Cocktail法を用いた中央検査室の試験により、IHC法3+またはISH法増幅比≧2.0のHER2過剰発現が実証される必要がある。患者はタキサンとトラスツズマブによる術前療法によっても、乳房内と腋窩リンパ節の両方またはいずれかに浸潤腫瘍が残っていることが必要である。患者は試験治療と同時に、現地ガイドラインごとに放射線治療とホルモン療法の両方またはいずれかを受けた。患者はトラスツズマブ エムタンシン3.6mg/kgまたはトラスツズマブ6mg/kgを21日サイクルの1日目に点滴静注する群に無作為に割り付け(1:1)られ、14サイクルの投与が行われた。

本試験の主要評価項目は無浸潤疾患生存期間( IDFS)であり、無作為割り付け後から最初の同側浸潤性乳房腫瘍の再発、同側局所または局限性浸潤乳がんの再発、遠隔再発、対側浸潤性乳がんまたは全死因死亡発生までの期間と定義された。40カ月(中央値)の経過観察後、トラスツズマブ エムタンシン投与群はトラスツズマブ投与群に比べてIDFSが統計的に有意に改善した(ハザード比[HR] 0.50、95%信頼区間[CI]: 0.39~0.64、p<0.0001)。IDSFを解析した時点では、全生存の評価には達しなかった。

トラスツズマブ エムタンシンで最もよくみられた有害反応(≧25%)は疲労、悪心、トランスアミナーゼ増加、筋骨格痛、出血、血小板減少症、頭痛、末梢神経障害と関節痛であった。

トラスツズマブ エムタンシンの推奨用量は、EBC患者では1回3.6mg/kgを点滴静注し、疾患が再発または認容できない毒性が発生するまで3週間間隔(21日サイクル)で合計14サイクル継続する。

カドサイラの全処方情報はこちらを参照。

本申請にはリアルタイム腫瘍学審査パイロット・プログラム(Real-Time Oncology Review and Assessment Aid pilot programs)を使用した。FDAはこの申請を優先審査に指定した。トラスツズマブ エムタンシンは術前の全身療法後に残存疾患のあるHER2陽性早期乳がん患者の術後療法の画期的治療薬に指定された。FDAの迅速承認プログラムに関する情報は、企業向けガイダンス:重篤疾患のための迅速承認プログラム-医薬品およびバイオ医薬品(Guidance for Industry: Expedited Programs for Serious Conditions-Drugs and Biologics )に記載されている。

翻訳担当者 小縣正幸

監修 小坂泰二郎(乳腺外科・化学療法/医療社会法人石川記念会 HITO病院)

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