FDAが乳癌患者向けの新規の遺伝子検査SPOT-Light HER2 CISHを承認

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FOR IMMEDIATE RELEASE:2008年7月8日
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FDAが乳癌患者向けの新規の遺伝子検査を承認

米国食品医薬品局(FDA)は、乳癌患者に対してハーセプチン(トラスツズマブ)による治療が適しているかどうかを決定するための新しい遺伝子検査を承認した。

 この「SPOT-Light HER2 CISH」キットは、腫瘍組織におけるHER2の遺伝子コピー数を測定する検査であり、この遺伝子は癌細胞の増殖を調節している。

 健康な乳腺細胞は2つのHER2遺伝子コピーを有し、細胞に対して増殖、分裂、修復の時期を伝えるシグナルを送る。一部の乳癌患者では、このHER2遺伝子コピーが多く、そのためHER2タンパク質が過剰に産生され、乳腺細胞に対して多くのシグナルが送られる。その結果、細胞の増殖、分裂が異常な速さで行われることになる。

 「他の臨床情報や臨床検査とともに利用すれば、この検査によって医療専門家は新たに治療方針を見極めることができる」とFDA医療機器・放射線保健センター代表のDaniel Schultz医師は述べている。

 このSPOT-Light検査は、採取された腫瘍の小さなサンプル中にあるHER2の数を測定する。採取片を薬品で染色し、サンプル内のHER2遺伝子を変色させるが、この変色は一般の顕微鏡で観察可能なため、すでに流通している高価で複雑な試料分析用の蛍光顕微鏡を必要としない。現行の検査と異なり、SPOT-Lightは将来の参考資料として検査機関に保管しておくことも可能である。

 HER2が過剰発現している患者は、HER2タンパクの産生をターゲットにしたハーセプチンで治療するのが一般的である。これは、HER2過剰な癌細胞の増殖を阻止する治療薬である。

FDAによるSPOT-Light検査の承認は、米国とフィンランドの乳癌患者の腫瘍サンプルを使った研究をもとにしている。これらの研究では、患者のHER2遺伝子量の確定にこの検査が有効であったことが確認された。

 SPOT-Lightはインビトロジェン社(米国カリフォルニア州カールズバッド)、ハーセプチンはジェネンテック社(米国カリフォルニア州サンフランシスコ)(※日本では中外製薬が販売)が製造している。

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越智律子 訳
平 栄(放射線腫瘍科)監修 

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