転移乳がんの治療選択に血中循環腫瘍細胞(CTC)測定が役立つ可能性

サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)2018

エストロゲン受容体陽性(ER+)、HER2陰性(HER2-)転移乳がんの一次治療としてホルモン療法か化学療法を選択する際、血中循環腫瘍細胞(CTC)数が参考になるかもしれない。このSTIC CTC第3相臨床試験データは、12月4日~8 日開催の2018年サンアントニオ乳がんシンポジウムで発表された。血中循環腫瘍細胞数に基づく治療選択と医師判断による治療選択が合致しなかった場合、一次治療を化学療法にすると全生存期間が有意に延長していた。

「新たに乳がんと診断された患者のうち、転移があってER 陽性・HER2陰性の場合、主な治療はホルモン療法か化学療法(その後にホルモン療法)の2つになります。残念ながら、その選択の道標となる予測的バイオマーカーですでに検証されたものは存在しません」と、Institut Curie(フランス、Saint Cloud)の医学腫瘍学教授でベルサイユ大学のFrancois-Clement Bidard医学博士は話す。

Bidard氏の説明によると、一次治療には副作用が限定的なホルモン療法が好ましいものの、予後不良因子を持つ患者には化学療法を提案している。とはいえ、その予後因子とは何であるか、現在の文献には明確な定義がない。そのため、担当医が予測するところの患者の予後によってホルモン療法か化学療法の選択がなされており、つまり、同じ患者であっても医師が異なれば治療の提案も異なる可能性がある、という。

「これまで10年間、世界中の何千もの乳がん患者で血中循環腫瘍細胞数の調査が行われてきました。多くの分析によって、ER陽性・HER2陰性ステージ4乳がん患者の予後マーカーとしては、全身状態を除くと血中循環腫瘍細胞数が最も強いものであることが明らかになりました」と、Bidard氏は言う。同氏のチームは、患者の予後を評価したり、ホルモン療法と化学療法の選択を個別化するために血中循環腫瘍細胞数が活用できないかを調べた。

「われわれの研究では、血中循環腫瘍細胞数だけを判断基準にすることが試験参加者全体にとって有害でないことを示せたばかりでなく(主要目標)、小集団の分析を通じて、(臨床医予測と血中循環腫瘍細胞数では)推奨する治療法が異なった292人の患者において、一次治療を化学療法にすると死亡リスクが35%も下がったことがわかりました」とBidard氏は話した。

この試験では、778人の患者が1対1の割合で臨床的決定により治療する群(臨床的要因に基づいて医師がホルモン療法か化学療法を決定)と血中循環腫瘍細胞数により治療する群(7.5 mlの血液に血中循環腫瘍細胞を5未満有する場合にホルモン療法、5以上の場合は化学療法)に無作為に割り付けられた。

無作為化後、臨床的決定により治療する群では72.6%の患者がホルモン療法を受け、27.4%が化学療法を受けた。血中循環腫瘍細胞数により治療する群では:

• 臨床的決定によればホルモン治療を受けることになるであろう患者のうち、66.7%は血中循環腫瘍細胞数が低いことによってホルモン療法を受けることが確定したが、残りの33.3%は同細胞数が高かったため、化学療法に変更された。

• 臨床的決定によれば化学療法を受けることになるであろう患者のうち、48.1%は血中循環腫瘍細胞数の高さによって化学療法を受けることが確定したが、残りの52.9%は同細胞数が低かったため、ホルモン療法に変更された。

血中循環腫瘍細胞数により治療した群の無増悪生存期間(PFS)は、臨床的決定により治療した群の無増悪生存期間より短くなかったため、本臨床試験の主要評価項目は(778人の患者で評価)満たされた。

血中循環腫瘍細胞数に基づいて治療を化学療法とすることになった患者は、無増悪生存期間が有意に延長した(臨床的決定により治療した群の患者で血中循環腫瘍細胞数が高かったがホルモン療法を受けた人の無増悪生存期間が中央値で10.5カ月だったのに対し、血中循環腫瘍細胞数により治療した群で化学療法を受けた患者の無増悪生存期間は中央値で15.5カ月)。さらに、全生存期間もより長い傾向にあった(37.1カ月に対し42.0カ月)。対照的に、血中循環腫瘍細胞数に基づいて治療をホルモン療法に下げることになった患者は、臨床的な決定によって治療した群の患者で血中循環細胞数が低かったが化学療法を受けた人と比較して、無増悪生存期間と全生存期間が、有意な差はないが、短かった。

探索的分析において、推奨される治療が合致しなかった2つの小集団(292人)を合わせると、一次治療で化学療法を受けた患者の方が無増悪生存期間(病勢進行の可能性34%減)と全生存期間(死亡リスクが35%減)が有意に長かった。24カ月経過時点の全生存率は、化学療法を受けた患者(その後支持的ホルモン療法を受けた)では82.9%で、一次治療でホルモン療法を受けた患者では74.7%だった。

「90年代以来、一次治療の疑問点を評価した試験はありません。われわれの試験結果は、血中循環腫瘍細胞数をはじめとする現代の予後バイオマーカーが患者の生存を延長してくれる可能性を示唆しています」とBidard氏は付け加えた。

この試験の主な制約は、STIC CTC試験の追跡調査期間中にCDK4 / 6阻害剤(パルボシクリブ[イブランス]、リボシクリブ[キスカリ]、アベマシクリブ[ベージニオ])が一次治療として広く使用されるようになったことによって、医師が化学療法よりもホルモン療法とCDK4 / 6阻害剤の併用治療を推奨するようになったことだとBidard氏は述べた。

本臨床試験はフランスの保健省、Menarini Silicon BiosystemsとInstitut Curieによって資金提供された。Bidard氏の利益相反申告で本臨床試験に関連するものは以下のとおり:Menarini Silicon Biosystems(研究資金、渡航助成金)。本臨床試験と無関係のものは以下のとおり:Amgen(講演料、渡航助成金)、Astra-Zeneca(コンサルティング料、講演料)、Lilly(コンサルティング料)、Novaritis(研究助成金)、Pfizer(講演料、コンサルティング料、渡航助成金)、Roche(コンサルティング料、渡航助成金)、Sanofi(コンサルティング料、渡航助成金)。

翻訳担当者 関口百合

監修 原文堅(乳がん/四国がんセンター)

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