低用量タモキシフェンが非浸潤性乳管がん/小葉がんの再発と発症を減少させる

低用量タモキシフェン(1日5 mg)投与はプラセボ投与と比較して、乳房上皮内腫瘍の診断後に手術を受けた女性の再発および新規疾患リスクを半減させ、重篤な有害事象は増加しなかったとのランダム化第3相臨床試験(TAM-01)の結果が、12月4日〜8日に開催された2018年サンアントニオ乳がんシンポジウムで発表された。

「乳房上皮内腫瘍とは、非浸潤性乳管がん(DCIS)、非浸潤性小葉がん(LCIS)、および非定型乳管過形成(ADH)など乳房に異常細胞が認められる非浸潤性疾患を意味します」とAndrea De Censi医師(the National Hospital E.O. Ospedali Galliera‐S.C. Oncologia Medica腫瘍内科部長、イタリア、ジェノバ)は述べた。「これらの上皮内疾患は、女性の浸潤性乳がんリスクを有意に上昇させます。浸潤性乳がんはエストロゲン(女性ホルモン)の影響で増殖することが多いため、一般的な治療では手術および必要に応じた放射線療法に続いてタモキシフェンを1日20 mg、5年間投与します」。

「残念ながら、タモキシフェンは子宮内膜がんまたは静脈血栓塞栓症リスク上昇に関連しており、更年期症状を引き起こして治療が中断してしまう可能性もあります」とDe Censi氏は続けた。「ランダム化比較試験におけるわれわれのデータでは、低用量タモキシフェンはDCIS、LCIS、およびADH女性の乳がん発症および再発のリスク低下に有効であり、重篤な有害事象の有意な増加や更年期症状の悪化を引き起こさなかったことが示されています。したがって本臨床試験の結果は臨床治療を変えるものであると確信しています」。

De Censi氏らは、過去に手術と、必要に応じて放射線治療を受けたDCIS、LCIS、およびADHの女性500人を低用量タモキシフェン群またはプラセボ群に無作為に割り付けた。治療は3年間継続し、患者は6カ月ごとに研究チームによる診察を受け、また1年に1回マンモグラフィを受けた。

追跡期間の中央値で5.1年後に低用量タモキシフェン群患者では253人中14人(5.5%)が、プラセボ群患者では247人中28人(11.3%)が疾患再発または新規疾患を有していた。これら結果から低用量タモキシフェンは再発または新規疾患リスクを52%減少させたと研究者らは結論付けた。

対側乳房で再発または新規疾患を有した患者のうち、低用量タモキシフェン群では14人中浸潤性乳がんが3人、および乳房上皮内腫瘍が11人であった。プラセボ群では、浸潤性乳がんは10人、乳房上皮内腫瘍は18人であった。

重篤な有害事象の発症は低用量タモキシフェン群で12人、プラセボ群で16人にみられた。子宮内膜がんは低用量タモキシフェン群患者でのみ1人にみられ、プラセボ群患者ではみられなかった。静脈血栓塞栓症はタモキシフェン群で1人、肺塞栓症はプラセボ群で1人にみられた。

ほてり、膣の乾燥、性交時の痛みなどの更年期症状の報告において、両群間に有意差はなかった。

「低用量タモキシフェン試験の結果を、タモキシフェンを1日20 mg投与した NSABP B-24およびNSABP-P1の2試験の結果と比較した場合、両試験からのリスク減少は同程度であり、重篤な有害事象は有意に減少しました」とDe Censi氏は述べた。「タモキシフェンを2用量で投与して比較する臨床試験を実施したかったのですが、非営利団体や政府から得たわれわれの研究資金は限られており、そのための臨床試験費用はあまりに高額で叶いませんでした」。

De Censi氏によると、タモキシフェン群とプラセボ群の治療遵守割合は、それぞれ64.8%および60.7%に過ぎず、これが本試験の最大の弱点となっていた。もし治療遵守の割合がもっと高ければ、タモキシフェンの有用性を示す数値はさらに高かったであろう。現在タモキシフェンは10 mg錠までしか市販されていないが、研究者らが実施した先行研究では、1日おきに10 mgを服用した場合と1日5 mgの服用では再発率の低下における有効性は等しいことが示されているとDe Censi氏は述べた。

本研究は、イタリア保健省、イタリアがん研究協会、およびイタリアがん連盟の支援を受けた。De Censi氏はIndena SpA社、Roche社、 Pfizer社、Janssen社、Novartis社、Sanofi Aventis社、Quintiles社、Gilead社、MacroGenics社からの研究助成金の提供を受けたと申告している。

翻訳担当者 佐藤美奈子

監修 辻村信一(獣医学・農学博士、メディカルライター) 

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