非浸潤性乳管がん(DCIS)の監視療法

MDアンダーソン OncoLog 2018年1月号(Volume 63 / Issue 1)

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COMET試験:高頻度マンモグラフィー検査による監視療法と手術を行う標準治療との比較

非浸潤性乳管がん(DCIS)の疾患管理は、乳がん専門医の間で意見が分かれることの多いテーマである。浸潤前の病変を常に切除すべきかどうかについて、依然として議論が続いている。しかし、進行中の多施設臨床試験によりこの疑問が解決される可能性があり、DCISの診療ガイドラインも改訂されることになりそうだ。

テキサス大学MDアンダーセンがんセンターの乳腺腫瘍外科教授で、低リスクDCISの手術を経過観察やホルモン療法と比較するCOMET試験において共同代表を務めるAlastair Thompson医師は次のように話している。「本臨床試験では、DCISと診断されたが浸潤や転移を生じるリスクが非常に低い患者のグループ、つまり、監視療法で不必要な手術を回避できる患者グループが存在するかどうかの疑問に取り組んでいます」。

Thompson医師は、「英国、欧州、日本でも同様の臨床試験は行われていますが、本試験はDCISを対象にアメリカが先陣を切って行う試験であり、ガイドライン準拠治療と監視療法を比較します」と述べた。

試験デザイン

COMET試験(No.ALLIANCEAFT-25)では現在、新たに低リスク(グレード1または2)DCISと診断された40~99歳の女性の登録を行っている。患者は、手術に加えて放射線療法やホルモン療法を行うことがあるガイドライン準拠治療(全米総合癌センターネットワークのガイドラインで推奨)と、医師が推奨し患者が希望した場合に高頻度マンモグラフィー検査とホルモン療法を実施する監視療法のいずれかにランダムに割り付けられる。患者が割り付けられた治療を望まない場合は、第3の治療群に割り付けられる。この場合、本人が選択した治療を受けることになるが、試験の主要解析からは除外される。Thompson医師らは患者900例を解析に含める計画である。

ガイドライン準拠治療群は12カ月おきに、監視療法群は6カ月おきにマンモグラフィー診断を受ける。両群とも、浸潤がんを発症した場合には標準治療を受ける。

評価項目

本臨床試験の主要評価項目は、2年以内に同側に浸潤性乳がんを発症した患者の割合である。また、同側浸潤性乳がんの5年診断率も検証される。Thompson医師らは、ガイドライン準拠治療も監視療法も、これらの率は同程度になるとの仮説を立てている。

研究者らは、同側浸潤性乳がんを発症した患者とそうでない患者の背景比較も行い、最終的には、手術で効果が得られる可能性が高い患者と、監視療法を安全に実施できる患者を特定するための基準を策定したい考えだ。

Thompson医師は、「毎年6万人を超える女性がDCISと診断されています。私たちは、本臨床試験を通して、このような女性たちへの診療方法を変えようとしているのです」と話した。

For more information, contact Dr. Alastair Thompson at 713-745-2792 or athompson1@mdanderson.org. To learn more about the COMET trial, visit www.clinicaltrials.org and search for study No. ALLIANCEAFT-25.

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翻訳担当者 宮武 洋子

監修 原 文堅(乳がん/四国がんセンター)

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