鍼治療がアロマターゼ阻害薬に伴う関節痛を軽減

アロマターゼ阻害薬の投与を受けた早期乳がんを有する閉経後女性患者の関節痛が、偽鍼治療を受けたか鍼治療を受けなかった患者と比べ、鍼治療を受けた患者では顕著に軽減したことが、12月5~9日に開催された2017年サンアントニオ乳がんシンポジウムで発表された第3相ランダム化試験(SWOG S1200試験)からのデータにより明らかとなった。

「アロマターゼ阻害薬は、ホルモン受容体陽性乳がんと診断された閉経後女性患者に最も多く用いられ、最も有効な治療法の一つです。しかし、その副作用のために治療の休止や完全な中止を余儀なくされる患者が多数います」とニューヨーク長老派教会ハーバート・アーヴィング総合がんセンター/コロンビア大学メディカルセンターの乳がんプログラムのリーダーであるDawn L. Hershman医師は述べた。「消耗性の関節痛やこわばりをはじめとするこれらの副作用を抑制する戦略を特定する必要があります」。

「第3相ランダム化試験データから、医療従事者はアロマターゼ阻害薬に伴う関節痛やこわばりを患う患者と鍼治療の可能性について話し合うべきであると言えます。なぜなら、鍼治療は患者の生活の質を改善する可能性があるからです」とHershman医師は続けた。彼女は米国国立がん研究所(NCI)の助成を受ける国際共同がん臨床試験ネットワークであるSWOGの副会長でもある。「鍼治療がアロマターゼ阻害薬療法の消耗性の副作用を軽減することで、治療のアドヒアランスや転帰が改善することを期待しています。しかし、これが実際の症例で有効であるか確定するためにさらなる試験を実施する必要があります」。

Hershman医師は、多くの患者がアロマターゼ阻害薬により生じた症状を軽減するためにさらに追加して薬を服用したいとは思っていないと説明した。鍼治療は、特定の位置(ツボ)に使い捨ての細い滅菌針を挿入する、中国の伝統的治療法である。多数の小規模な単施設試験は、鍼治療がアロマターゼ阻害薬に関連する関節痛やこわばりを軽減する代替的アプローチを提供する可能性をすでに示している。

そのため、Hershman医師らは、早期のホルモン受容体陽性乳がんと診断された閉経後女性患者において、鍼治療がアロマターゼ阻害薬に関連する関節の症状を軽減できるかどうかを評価する多施設ランダム化盲検試験を計画し実施した。

研究者らは患者226人を臨床試験に登録した。110人は鍼治療群に無作為割り付けされた。偽鍼治療群に無作為割り付けされた59人には、ツボ以外の部位に針を表面的に刺した。57人は待機リスト群(鍼治療を受けない群)に無作為割り付けされた。鍼治療群または偽鍼治療群の患者は、週2回の治療を6週間受けた後、週1回の治療を6週間受けた。患者は、簡易疼痛質問表(BPI)などさまざまな方法を用いて治療前、治療中、治療後の疼痛を報告した。BPIは0~10の尺度で患者の疼痛の重症度を評価するための自己記入質問票(14項目)であり、スコアが高いほど疼痛がより強く、患者の日常の機能に対するこの疼痛の影響が大きいことを示す。

6週間後、鍼治療群の患者の報告では、偽鍼治療群や待機リスト群の患者と比べBPI最悪疼痛スコアが有意に低かった。鍼治療群におけるBPI最悪疼痛の平均値は、偽鍼治療群におけるBPI最悪疼痛の平均値より0.92ポイント低く、待機リスト群におけるBPI最悪疼痛平均値より0.96ポイント低かった。さらに、BPI最悪疼痛が2ポイント以上軽減した患者の割合は、鍼治療群(58%)が偽鍼治療群(33%)や待機リスト群(31%)と比べ有意に高かった。治療介入が12週間であったにもかかわらず、上述の差を24週間経過時点で評価したところ、依然として統計学的に有意であった。
鍼治療群および偽鍼治療群で最も多く報告された有害事象は、あざであった。

「鍼治療が厳密な大規模試験で顕著な副作用がなく、持続的で有益な効果がみられたのは非常に喜ばしいことでした」とHershman医師は述べた。「これらのデータが、アロマターゼ阻害薬の投与を受けた患者の補完療法としての鍼治療を検討するよう医療従事者を促すのみならず、保険によるこれらの患者への鍼治療の補償が進むことも望んでいます」。

本試験は、米国国立衛生研究所(NIH)の国立補完統合衛生センターおよび女性健康研究局からの助成金(R01AT006376)、NIH/NCI/がん予防部門からの助成金(UG1CA189974)およびレガシーグラント(U10CA37429)を受けた。Hershman医師は、いかなる利益相反もないと宣言している。

翻訳担当者 太田奈津美

監修 小杉和博(緩和医療科/国立研究開発法人 国立がん研究センター東病院)

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