レトロゾール+パルボシクリブでの術前薬物療法はルミナル乳がんで改善を示さず

ルミナル乳がんにおいてレトロゾールとパルボシクリブによる術前薬物療法の病理学的奏効率は低いが、その臨床結果は有望である。

2017年欧州臨床腫瘍学会年次総会(スペイン、マドリッド開催)で発表されたUNICANCER-NeoPAL試験の結果によると、ルミナル乳がん(LBC)女性患者の術前薬物療法としてレトロゾールとパルボシクリブの併用は、第三世代化学療法を上回る残存腫瘍量(RCB)または乳房温存手術(BCS)割合の改善を示さなかった。

レトロゾールとパルボシクリブの併用は、エストロゲン受容体(ER)陽性、ヒト上皮成長因子受容体2(HER 2)陰性転移性乳がんである閉経後の女性患者に臨床的ベネフィットを示したため、この設定における治療に対して米国食品医薬品局は迅速承認した。

過去には、Institute Curi(フランス、パリ)腫瘍内科Paul Cottu氏が主導する研究チームによるランダム化並行第2相試験において、LBC患者における術前薬物化学療法の限定的効果が示されている。同試験は、LBCに対する術前薬物療法としてレトロゾール+パルボシクリブ併用レジメンを検証するものである。

試験では、乳房温存手術(BCS)の適応ではなかったステージ2または3のER陽性、HER2陰性乳がんの閉経後女性を登録した。患者登録の条件は、PAM50(Predictor Analysis of Microarray 50:50遺伝子によるマイクロアレイ分析予測)分類によるルミナルB型、またはリンパ節転移が判明しているルミナルA型のいずれかであることであった。スクリーニングされた女性184人のうち、ステージ2A、3A、PAM50によりLBCと分類された106人の患者を、

(1)3サイクルのFEC100、3サイクルのドセタキセル100からなる第3世代化学療法6コース、(2)レトロゾール2.5mg/日を19週間およびパルボシリブ125mg/日を3週間4サイクル

のいずれかに1:1の割合で無作為に割り付けた。手術は20週目に行った。

主要評価項目は各施設で評価された残存腫瘍量(RCB)割合であり、副次評価項目は、安全性、奏効率、PAM50再発リスク(ROR)で定義づけられた正と負の予測値、中央施設で審査したRCB、および乳房温存手術(BCS)割合であった。

患者のうち73%がT1-2、27%がT3、26.5%がリンパ節陽性に分類され、89%がルミナルB型腫瘍であった。RORスコアの中央値は68(範囲22〜93)であった。

このプロトコルは、レトロゾール+パルボシクリブ併用群の患者30人において局所RCB 0-I事象5件以下(16.7%)がみとめられた時点で、無益であるとして試験を中止することとして計画した。

レトロゾール+パルボシクリブ併用療法と化学療法とで、同様の臨床的奏効率および乳房温存手術割合がみとめられた。

中間解析では、RCB 0-Iがレトロゾール+パルボシクリブ併用群患者1人でみとめられ、試験登録を中止した。

最終解析において、局所RCB 0、I、IIおよびIIIが確認された割合は、レトロゾール+パルボシクリブ併用群ではそれぞれ3.8%、3.8%、52%、40.4%、化学療法群では5.9%、9.8%、37.3%、47.1%であった。中央および各施設でのRCB評価結果は同一であった。

RORスコアではRCB 0 / Iを予測できなかった。

術前薬物療法としてのレトロゾール+パルボシクリブ併用療法群および化学療法群における割合は、同様であった。すなわち、臨床上の客観的奏効率は74.5%対76%、BCS割合は69.2%対68.6%であった。

最終的なKi67値の中央値は、レトロゾール+パルボシクリブ併用群において有意に低かった。すなわち、Ki67値は化学療法群の8%(範囲2〜15)に対してレトロゾール+パルボシクリブ併用群では3%(範囲1〜40)であった(p = 0.017)。

化学療法群で重度の有害事象が17人にみとめられたのに対し、レトロゾール+パルボシクリブ併用群では2人でしかみとめられず、化学療法群よりも良好な忍容性を示した(p < 0.001)。

結論

レトロゾール+パルボシリブ併用による術前薬物療法は化学療法よりもわずかに低いpCR / RCB 0-I割合を示したが、臨床的奏効率およびBCS割合は両群で同等であった。

しかし、レトロゾール+パルボシクリブ併用群の安全性プロファイルはより良好であった。

研究者はこれらのデータの詳細分析を継続している。

開示

本試験はPfizer社、 Nanostring社から資金提供された。

参考文献

LBA9 – Cottu P, et al. Letrozole and palbociclib versus 3rd generation chemotherapy as neoadjuvant treatment of luminal breast cancer. Results of the UNICANCER-NeoPAL study.

翻訳担当者 有田香名美

監修 下村昭彦(乳腺・腫瘍内科/国立がん研究センター中央病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

乳がんリスク評価ツールの仕組みの画像

乳がんリスク評価ツールの仕組み

2024年3月、女優のオリヴィア・マン(Olivia Munn)が乳がんと診断されたことを発表した。Munnさんはまた、がんリスク評価ツールが彼女の診断に至る過程で果たした役割を強調し...
ハイリスク遺伝子を有する若年乳がんサバイバーの生殖補助医療は安全の画像

ハイリスク遺伝子を有する若年乳がんサバイバーの生殖補助医療は安全

ハイリスク遺伝子があり、乳がん後に妊娠した若い女性を対象とした初の世界的研究によれば、生殖補助医療(ART)は安全であり、乳がん再発リスクは上昇しないハイリスク遺伝子があり、乳...
【ASCO2024年次総会】T-DXd(エンハーツ)がホルモン療法歴のある乳がん患者の無増悪生存期間を有意に改善の画像

【ASCO2024年次総会】T-DXd(エンハーツ)がホルモン療法歴のある乳がん患者の無増悪生存期間を有意に改善

ASCOの見解(引用)「抗体薬物複合体(ADC)は、乳がん治療において有望で有益な分野であり、治療パラダイムにおける役割はますます大きくなっています。トラスツズマブ デルクステ...
【ASCO2024年次総会】若年乳がん患者のほとんどが治療後に妊娠・出産可能の画像

【ASCO2024年次総会】若年乳がん患者のほとんどが治療後に妊娠・出産可能

ASCOの見解(引用)「乳がんの治療後も、妊娠や出産が可能であるだけでなく安全でもあることが、データが進化するにつれて次々と証明されてきています。この研究では、妊娠を試みた乳が...