進行乳がんに対するアベマシクリブ、FDA優先審査に指定

MONARCH 1試験および MONARCH 2試験に基づき新薬承認を申請

2017年7月10日、イーライリリー社は、同社のサイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6阻害剤であるアベマシクリブの新薬承認申請(NDA)が米国食品医薬品局(FDA)により受理・優先審査指定を受けた事を発表した。今回のNDAは、イーライリリー社が行った以下の2つの適用に対する申請を対象とする。すなわち、転移性乳がんに対するホルモン療法と化学療法を受けたことのあるホルモン受容体(HR)陽性、HER2陰性の進行乳がん患者に対するアベマシクリブ単剤療法、およびホルモン療法中あるいはホルモン療法後早期に病勢進行を呈したHR陽性、HER2陰性の進行乳がん患者に対するアベマシクリブ+フルベストラント併用療法である。当該新薬承認申請は、それぞれMONARCH 1試験および MONARCH 2試験に基づく。

2015年、FDAは、第1相試験であるJPBA試験の乳がんコホート拡大により得たデータに基づきアベマシクリブに画期的治療薬指定を認めた。JPBA試験では進行性あるいは転移性乳がん患者を対象としたアベマシクリブの有効性と安全性を検討した。優先審査は、承認を受けた場合に治療が大幅に進歩すると考えられる薬剤の申請審査を迅速化することを目的としているが、画期的治療薬指定を受けた薬剤はその優先審査対象となる。標準的な審査には12カ月かかるのに対し、FDAは、新薬の優先審査により申請受領後8カ月以内に承認申請に対する措置を取ることを目標としている。

イーライリリー社はFDAと密に連携し作業を進めており、2018年第1四半期中に本申請に対する措置をFDAが取ると予測している。さらに、イーライリリー社は、2017年第3四半期にヨーロッパの規制当局に、2017年末までに日本の規制当局にアベマシクリブの申請を行う予定である。

多くのがんでは、CDK4およびCDK6からのシグナル伝達が増大することで細胞周期が調節不能となり、このために細胞増殖が制御不能となる。アベマシクリブ(LY2835219)は、CDK4およびCDK6を選択的に阻害することで癌細胞増殖を阻止するようデザインされた試験段階の経口細胞周期阻害剤であり、無細胞の酵素測定法においてサイクリンD1およびCDK4に対し最も活性を示した。乳がんにおいて、サイクリンD1/CDK4が網膜芽細胞腫タンパク質(Rb)のリン酸化、細胞増殖、および腫瘍増殖を促進させることが認められた。ホルモン受容体陽性乳がん細胞株において、アベマシクリブが持続的に標的を阻害することでRbのリン酸化を低減させ、これにより、細胞周期停止が誘発された。

包括的なMONARCH臨床試験プログラムにおいてアベマシクリブの評価を行った。MONARCH臨床試験プログラムには以下の研究が含まれる。

・MONARCH 1試験:国際共同第2相試験。転移性疾患に対しホルモン療法および化学療法を受けたことのあるHR陽性、HER2陰性の進行乳がん患者を対象とし、アベマシクリブ単剤療法の有効性と安全性を評価する。

・MONARCH 2試験:国際共同第3相試験。ホルモン療法中に病勢進行を呈したHR陽性、 HER2陰性の進行乳がん患者を対象とし、アベマシクリブ+フルベストラント併用療法の有効性と安全性を評価する。

・MONARCH 3試験:国際共同第3相試験。進行性病変に対し全身治療を受けたことがないHR陽性、HER2陰性の閉経後進行乳がんを対象とし、初回内分泌治療としてアベマシクリブ+アロマターゼ阻害剤併用療法の有効性と安全性を評価する。

・monarcHER試験:国際共同第2相試験。HR陽性, HER2陽性進行乳がん患者を対象に(フルベストラント併用・非併用下での)アベマシクリブ+トラスツズマブ併用療法を評価する。

・MONARCH plus試験:第3相試験。中国での登録支援を目的としており、アベマシクリブ+ホルモン療法薬の併用療法に関する有効性と安全性を評価する。

・neoMONARCH試験:第2相試験。未治療の早期HR陽性HER2陰性乳がんを有する閉経後患者を対象とし、術前療法においてアベマシクリブ単独療法あるいはアベマシクリブ+非ステロイド性アロマターゼ阻害薬であるアナストロゾールとの併用療法を評価する。

・monarchE試験:国際共同第3相試験。高リスクの早期乳がん患者を対象に術後補助療法におけるアベマシクリブの有効性と安全性を評価する。

乳がんにおいてアベマシクリブを評価する現行のMONARCH試験以外に、肺がんにおけるアベマシクリブについての第3相試験も進行中である。

イーライリリー社のプレスリリースには乳がん患者に対する治療薬となる可能性があるアベマシクリブについての将来予想に関する記述および同社の現在の信条が記載されている。

翻訳担当者 三浦恵子

監修 田原梨絵(乳腺科/乳腺腫瘍内科)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

【ASCO2024年次総会】若年乳がん患者のほとんどが治療後に妊娠・出産可能の画像

【ASCO2024年次総会】若年乳がん患者のほとんどが治療後に妊娠・出産可能

ASCOの見解(引用)「乳がんの治療後も、妊娠や出産が可能であるだけでなく安全でもあることが、データが進化するにつれて次々と証明されてきています。この研究では、妊娠を試みた乳が...
欧州臨床腫瘍学会(ESMO)乳がん会議2024の画像

欧州臨床腫瘍学会(ESMO)乳がん会議2024

ESMO 乳がんBreast Cancer 2024が5月15日から17日にかけてドイツのベルリンで開催され、乳がんの最新研究が発表される。世界中からベルリンに集まった参加者は、著名な...
次世代PARP阻害薬サルパリブ、相同組換え修復不全乳がんで臨床的有用性を示すの画像

次世代PARP阻害薬サルパリブ、相同組換え修復不全乳がんで臨床的有用性を示す

ポリADP-リボースポリメラーゼ(PARP1)の選択的阻害薬であるsaruparib[サルパリブ]が、特定の相同組換え修復(HRR)欠損を有する乳がん患者に対して有望な客観的奏効率と無増悪生存期間を示した。この結果は第1/2相PETRA試験によるもので、4月5日から10日まで開催された米国癌学会(AACR)2024年年次総会で発表された。
HER2陰性進行乳がんにエンチノスタット+免疫療法薬が有望の画像

HER2陰性進行乳がんにエンチノスタット+免疫療法薬が有望

ジョンズホプキンス大学ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターの研究者らによる新たな研究によると、新規の3剤併用療法がHER2陰性進行乳がん患者において顕著な奏効を示した。この治療で...